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ヘリオス幕張17

 百合娃メサの話④


 それからフジやんは事あるごとにB組内の人間関係について話した。太田まりあのこととその取り巻きについて。どうやらフジやんはいじられキャラらしく、私の思いとは裏腹にB組内では可愛がられているようだ。最高に気に入らない。正直そう思う。


 だから私はB組内で飼っているハトにもう少し仕事をさせることにした。ハトの名前は桜井蓮奈。大人の男から金をせびって遊び回るクソビッチだ。


【おはよう桜井蓮奈。また仕事を頼みたい】


 私はそんな味も素っ気も無いメッセージを彼女に送った。もちろん羽田千歳としてでも百合娃メサとしてでもない。別名義の脅迫者『自裁の魔女』として。


【はい】


 彼女はそれだけ返信してきた。必要以上に会話なんかしたくない。その短い文面からはそれが読み取れる。


【ありがとう。まず太田まりあの最近の動向を送って貰いたい。週末までに頼む】


【はい】


 そこでその日のメッセージは終わった。男には愛想良くするくせに私には全然フレンドリーじゃない。まぁ……。それは当然だ。だって私は彼女の売春行為の証拠を山のように抱え込んでいるのだから――。


 その週の日曜日。桜井蓮奈から太田まりあの最近の動向が送られてきた。……といっても内容にこれといって特別なものはなかった。学校と家の往復と習い事。どうやら太田まりあは今週も聖者みたいに清らかな日常を過ごしていたようだ。


【手間を掛けた。ありがとう。ではまた連絡する】


 私は桜井蓮奈のメッセージにそれだけ返した。あくまでビジネスライクに。額面通りの注文をただ受け取った卸業者みたいに。


 その後、私は桜井蓮奈から貰った太田まりあの情報を隅々まで読み込んだ。そしてある結論に至った。


『ああ、太田まりあにはスキャンダラスなことなんて何もないんだ。よく言えば清廉潔白。悪く言えばクソつまらない女。こんな喪女みたいな生活してて何が楽しいんだろ? もしかして太田まりあって男性経験もないんじゃないか? 私の元彼とも一緒にお洒落な店行ったぐらいでその後は何もなかったんじゃないか? マジで!? あんだけ男ウケしそうな見た目してて実は処女なんじゃね?』


 ――と下世話なことを思った。でも……。おそらく私の勘は当たっていると思う。この手のこととなると私の鼻はかなり利くのだ。


「さてと……」


 私はPCデスクの前でそんな独り言を呟いた。正直困るのだ。太田まりあが清廉潔白だとすればあの女を陥れることなんてできない。少しでもほころびがあれば別だけれど……。おそらく太田まりあにはそれがないと思う。


 だから私は別の方法を取ることにした。幸い太田まりあの取り巻き連中はみんな真っ黒だしそっちから攻めればあの女を孤立させることぐらい朝飯前だと思う。


 それから私は再び桜井蓮奈にメッセージを送った。そして送ってすぐに彼女からの返信があった。相変わらず愛想がない。


【はい】


 それだけが書かれていた。


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