花見川服飾高等専修学園7
叔父との食事を終えると私は自宅に戻った。そして戻ってすぐに弥生ちゃんから電話があった。こうして彼女と話すのは一週間ぶりだ。
『今成田まで戻ってきたよ』
そう話す彼女の声に混ざって空港のアナウンスが漏れ聞こえた。どうやら弥生ちゃんは今空港のロビーにいるらしい。
「お疲れ様ー。ごめんね。今回は一緒に行けなくて……」
『いや、いいんだよ。だいたい学校あるのに無理に来させる方が悪いからさ』
「そう言って貰えると助かるよ。次は絶対行くから」
私がそう返すと弥生ちゃんは「うん。楽しみにしてるね」と言った。その声は心なしか疲れているように聞こえる。
「明日は新都心にいる感じ?」
『一応……。夜にはそっち行ってると思う。学校と実家寄ってからだから遅くなりそうだけど』
「そっか……。ねぇ弥生ちゃん。もし良かったら明日の夜ウチ来ない? 久しぶりにお話したいんだよね」
『明日? 八時時過ぎでいいなら行けるけど……』
「うん。八時過ぎで大丈夫だよ。……ってか私も明日はバイトだから家着くの七時過ぎだろうし」
『そっか。んじゃ明日香澄ちゃんち寄らせて貰うよ』
弥生ちゃんはそこまで話すと「ごめん。迎え来たからまたね」と言って電話を切った。私は既に切れた電話口に「またね」と呟いた。最近はずっとこんな調子だ。まぁ……。弥生ちゃんが忙しいのは嬉しい悲鳴なのだけれど。
電話が終わるとリビングでUGから持ち帰ってきた仕事に取り掛かった。オーダーメイドのコスプレ衣装の縫製。要はミシン仕事だ。
部屋にミシンの音がこだまする。カシャ、カシャカシャ、カシャカシャカシャ――。ペダルを踏むとそんな風に縫うスピードが徐々に上がっていった。心地良い音だ。今日もウチの子は絶好調。音を聞くだけでそれが分かる。
それから私は夢中になって衣装を縫い上げていった。やはり私はこうしているときが一番幸せだと思う――。
二時間後。私は縫い上げた衣装をトルソー(足がないマネキン)に着せて服全体のフォルムを確認した。そしてそれが終わると仕立てた衣装にビニールの衣装カバーを被せた。これで本日のノルマは終了。この調子で持ち帰り仕事すれば今月中には終わるかな? そんなことを思った。これでも今まで納期が遅れたことは一度もないのだ。私唯一の特技であり誇り。ちょっと大げさだけれどそう自負している。
ふと時計に目を遣る。時刻は二三時。帰ってきた時間を考えると三時間も作業していたらしい。縫製を始めるといつもこうだ。ついつい時間を忘れてしまう。
それから私は縫製道具を片付けた。そして急いでナイトルーティンを熟した。入浴から歯磨きまで。やっつけ仕事で片付けた。我ながら女子力がなさ過ぎると思う。
「はぁあ……」
歯磨きが終わると自然とそんなため息がこぼれた。正直今日は大変な一日だったのだ。色々あった割に何も解決していない。そう考えると頭が少し痛くなった。太田まりあ……。彼女が絡んでいるから余計そう思う。
「考えたってしょうがないよね!」
再び私は独り言を呟いた。そして窓から見える幕張新都心の景色をボーッと眺めた。いつ見ても綺麗な夜景だ。独り占めするのは勿体ないな。そんなことを思った――。




