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夢境のアルカディア  作者: 挟むギョウタン
第二章「帝国編」
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銃・魔物・魔法〈2〉

これから

 こういった推論に辿り着くのは、落ち着いて考えれば当然のように湧いて出てくる話であった。

 最初の疑問はこの国、いや「世界」で用いられている言語が『ひらがな』『カタカナ』『漢字』といった三種の文字を組み合わせた日本語のようなもので統一されているという点だ。これは昨日の斜め読みで確認した。


 リストリーネ王国

 レーベ帝国

 アリアンディーゼ教皇国

 ムジーネ都市連合

 ニベレ共和国

 少なくとも現在此処の世界で「五大国」と呼ばれる国家では、日本語擬きの統一言語が用いられている。

 だが何故異なる歴史を歩んできたとされる此方の世界で用いられるのが「日本語」なのか?

 仮に言語として用いるのならば、本来漢字だけで事足りる話なのである。間違っても「日本語」が介在する余地はない。


 そして二つ目の疑問、この言語には三種の文字以外使われていない。

 例えば「机」という文字を「つくえ」「テーブル」と置き換える事は出来る。だが「table」という置き換えは存在しない。

 また「大戦争」以前の、言語統一前に用いられていた、魔族・亜人発祥の古代言語(正確には言語群)は存在するが、文字単体だけ確認した限りでラテン文字の記述は無かった。

 それを踏まえるとおかしな事態が発生する。即ち、〈心眼〉で見えるステータスの位階評価の指標に何故ラテン文字が使われているのか?というもの。

 そしてこうした疑問の一部はレッツェに投げかけた質問、「eins(アインス),zwei(ツヴァイ),drei(ドライ)」によって解消した。

 もし現代の日本人ならば、これを即座にドイツ語であると理解する筈だ。

 だが此方ではそうはならなかった。つまり此処から言えるのは、現在の此方の世界の知識・言語体系は不完全で曖昧な日本語ベースであるという事だ。


 これを踏まえると、魔法が存在するという事実、ステータスが存在するという事実にも疑問を挟む必要があるだろう。いや、凡ゆる事実に疑問を挟むべきだ。

 此方にきた直後は全てを「そういうもの」であるとして理解していた。

 だが先程考察した通り、世界がそのようであるにしては不自然極まりないのである。

 此処が単なる「異世界」であると考えるのは早計だ。

 例えば――



 不意にユージンの視界が反転する。視界には暗褐色の土がいっぱいに広がる。

「ユージン、さっきから心在らずって感じだよ?」

「あ、ああ気をつけるよ」

 思考に耽っていた最中、足元が疎かなために躓いて転んだようだ。立ち上がって衣服についた汚れをバンバン、と軽くはたき落とす。

 振り返っていたレッツェとオリヴィエに大丈夫だ、と意味を込めた目配せをすると、再び雑草を掻き分けて進み始める。

 ああ忘れていた。

 転んだ拍子に手元から取り落とした()を拾い上げた。




※※※※※※

 これは依頼主から借り受けたものだ。

 彼は森林近くに住居を構えていた。一角ウサギの時とは異なり、依頼書には狩猟用の道具を借り受ける事が出来るという一文があったために一度寄ったのだ。

 依頼書に書かれた地点と街で普通に売られていた地図を上手く一致させながら歩いていく。だが非常に難解な行程であった。

 というのも、この世界の地図は距離感が正しく計測されていないような、都市や場所を抽象的に記述したものであった。依頼書に書かれた依頼主の住居も、


『南西の街道の三番目の立て看板から、西へ1時間、それから森林の外側を沿って時計回りに1時間』

 と同様に抽象的なものであった。

 1時間とは何の移動手段を考慮した上での時間算出なのか?森林の外側とはどういった視点でその境目を見極めるのか?

 現代人の身としては直ぐには飲み込めない表現が多すぎるのだ。

 ヴィブレの都市内ならば、住居や商店を、方角と建物の並び順で示していたこともあって、この苦労はユージンにとって想定外であった。

 そしてオリヴィエとレッツェは慣れているのか、感覚的に迷うことなく歩いていた。ユージンは遅れないように歩きながら、この世界の「歩き方」というものをレクチャーしてもらっていた。




 依頼主の元に辿り着くと、早速内容の確認を行う。六つ足猪を10頭以上の討伐。元より使えるところはないらしく、部位は不要とのこと。

 そうして出現した場所や予定といった細かい内容を詰めていく。

 最後に道具を手渡された。長細い棒と縄、そして鉄砲(・・)だ。

 物珍しさと好奇心で、食い入るようにしてよく観察する。

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