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夢境のアルカディア  作者: 挟むギョウタン
第二章「帝国編」
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食事のお誘い

 ユージンと別れた後、ルベンは急足で学院寮の自室へと戻る。今朝方、久々に姉さん(・・・)に食事に誘われたのだ。

 丁度いい機会だったとは思う。昨日今日で気になった事も幾つか出てきたのだ。

 クローゼットを開く。冒険者(・・・)としてか公人(・・)としてか。どちらの格好で行くか迷ったものの、場所を考えて着替える事にする。

 ローブと帽子を脱ぎ捨てて、着たのは高価であると一目瞭然であると分かる装飾を施されたパーティードレス。

 そして普段はウェーブを効かせた髪を真っ直ぐにして整えると、すぐに部屋から駆け出す。




 幸いレストランは学院からそれほど距離はなかったために時間ギリギリではあるが間に合った。名前を告げて、中に通されると既に一人座っているのが見える。

「時間ギリギリってところかしらねぇ〜?」

「アイステアさん(・・)、待たせてしまい申し訳ありません」

「あぁ…これはこれはルベン様(・・・・)。此方こそ突然のお誘いであったのにも関わらず快諾して貰ったことは感謝の言葉が絶えません」

 ルベンの態度を見て、アイステアは此方もと改める。一応「真面目な」話とは銘打ったが、正直こうした雰囲気で話すものではなかったのだ。それもあって最初は「何時も」通り話したのだが、ルベンはそれを字面通り受け取ってしまったようだ。

「珍しいですわね、待ちぼうけた間にお酒を飲まないなんて」

「私にもギリギリそうした良識は有ります…あぁルベン様、食前酒は如何しましょうか?」

 スパークリングで、とルベンは軽く返す。それを聞いて、アイステアは自身の注文と共に店員に伝える。

 このレストランは上流階級御用達の場所であり、コース料理の決まったものが運ばれてくるのだ。ルベンも何度か利用した事のある店だったので、勝手はわかっていた。

「それで…本日はどのようなご用件でしょうか?」

「単刀直入にお伝えしましょう。今すぐにでも貴方様は冒険者をお辞めになるべきです」

「…本気かしら?」

「本気です」

 周囲の音が小さくなる。どうやら他の客の幾許かも聞き耳を立てていたようだ。多分、こうした状況では会話は続けられない。

 そう考えたルベンは、自身の「権威」を楯にして店員に人目のない個室席へと案内するように迫る。


「…さて、姉さん。なんであんな事言ったのかしら?」

「んもぅ固いわねぇ〜。こうでもしないとちゃんと話ができないでしょう?」

「…そ、態々着替えた意味が無くなるんだけど?」

 ルベンは個室の席に大胆に座ると、服の袖をひらひらとはためかせながら問い詰める。

 ルベンの知るアイステアは飲んだくれではあるが、分別のつかない人ではない事はよく知っている。

 先ほどの話が本題ならば、態々こうした食事の場でなく冒険者と受付嬢の立場で話せばいいだけのこと。

 それが他の貴族の目もある中で切り出したと言う事は、人目の無い場所に案内させるためだったのではないか…とあたりをつける。

「まあいいんじゃない?こうして普通に話せるんだし」

「…そうね、冒険者的な、こっちの方が気楽ね」

「冒険者…彼とはどうなのかしら?私気になるわぁ?」

「彼?」

「ユージン君よ。噂になってたわよ。ウチの領主様のご令嬢が一冒険者でしかない男性とお出かけしてたって。そこでプレゼント贈っただとか、魔法具店でいつもの(・・・・)を披露しただとか」

 流石に話が広まるのが早すぎるのではないか。ルベンは頭を抱える。

 ルーシアやレッツェと三人で街を巡ったことは何度かある。だがその時はここまで話題に登るようなことは無かった。男性と二人で出かけるというのが初めてということもあって、失念していた。

「別に何もなかったわよ。プレゼントはあくまでもお詫びの品(・・・・・)だし、店の前でやらかしたのも偶々、興が乗っただけよ」

「ホントにそれだけなの?ホントに何もないの?迷宮で二人で遭難したって報告書にはあったけどその時に何かあったとか――」

「何も、無かったわ」

 これ以上聞くな、という意図を込めて力強く否定する。

「うんうんこれ以上は聞かないわ。何も聞かない。でもね、まだ彼と会って三日ぐらいでしょ?何でそんなにお話できるようになったのかはお姉さん、気になるのよ?」

「そうねぇ…アイツが私の話をちゃんと興味深そうに聞くから、かしら?」

「魔法のことも?正直に言うと貴女の話はあまりに小難しすぎて聞きたくないのよねぇ」

 ルベンはちょっとしたため息を漏らすのを聞きながら、杯を傾ける。

「まあそれは否定しないわ…。でもアイツ、そんな事も興味津々に聞くのよね…。あの時は思わず押さえきれずに色々と熱中したのよ」

「確か…昔留学してきた…エスタータちゃん、だったかしら?あの娘ぐらいよねぇ、そういう話してたの」

「…彼女の話は難解すぎるわよ。色々とついていけない」

「でも楽しかったでしょ?」

「…そうね」

 ルベンは表情筋が少し動くのを感じ取りながらも、誤魔化すようにして再び杯を傾ける。

「アタシとしては、楽しいか退屈かは兎も角、みんなが何で疑問を覚えないのかは気になるけどね」

「丁度6年ほど前だったっけ?可笑しいって言い出したのは?」

 懐かしいわね、と言って杯を深く傾けて飲み干す。

 飲み干した杯を、豪快に、音を立てるようにして乱暴に置く。



「どうしてステータスも、スキルも、そういうもの(・・・・・・)として、所与のものとして、当然のように認識してるのかしら?逆に理解出来ないわ」

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