表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/14

9.白竜の輝鱗(冒険者視点)

 ファントムのそっくりさんと名乗る人物は、突然現れ、冒険者としての心構えを語り、突然去った。


 彼が去ったあとも、その余韻でしばらく黙っていたが⋯⋯やがて『白竜の輝鱗』のリーダー、ハイドンは全員に向けて聞いた。


「⋯⋯どう思った?」


「とんでもなく下手くそな嘘つき、ってカンジ」


 ストレートなレーナの言葉に、ハイドンは苦笑いを浮かべながら


「ああ、俺もそう思う」


 否定することなく、同意を返した。 


「全く⋯⋯『そっくりさん』なんてわかりやすい嘘を、なんでつくんだろうな」


「ね」


 ハイドンは、周囲にまだ残っている盗賊たちの死体を見る。

 どれも見事な断面だ。

 恐らく自分には、生涯到達できない領域。


 ハイドン自身もBランクパーティーを率いる者として、それなりに剣の腕前には自信がある。


 だが、彼が見せた剣術と比較すればまさに児戯に等しい。

 当然だろう。

 今見たのは、まさに『現代の伝説』なのだから。


「でもそれより⋯⋯なんでファントムさんは、私たちに、ワザワザ冒険者としての心構えなんて言ってきたのかしら?」


 レーナの質問に、ハイドンは少し考えてから答えた。


「⋯⋯これは、当たって欲しくない予想、というか勘なんだけど」


「⋯⋯その言い出し方、不安だわ。あなたの勘は良く当たるから、特に⋯⋯悪い勘は」


「最近、王都から離れた場所でモンスターの活動が活発化しているって問題⋯⋯」


「よく聞くわね」


「うん、それで⋯⋯一部の人間が言ってる説があるんだ」


「知ってるわ。『魔王復活説』でしょ。まもなく封印された魔王が復活する、モンスターの活発化はその前兆だって。バカバカしい話じゃない」


「ああ。俺もそう思っていた⋯⋯だけど、ファントムさんの今回の行動を考えれば、辻褄があってしまう」


 ハイドンは自分の考えを説明した。


 ファントムがこの一年、一切活動している形跡がないのは、広範囲の調査をしていた為。


 そして、彼は『魔王復活』に関して、決定的な証拠を見つけた。

 

 魔王が復活したとなれば、人類と、魔王率いる魔物との間で激しい戦いが起こる。


 だが長く続いた平和のせいで、現在冒険者の間では、装備含め魔物との戦闘を軽んじる風潮がある。

 つまりファントムは、今一度彼らに危機感を持たせる啓蒙活動をしている、という事だ。


「いきなり魔王が復活する、と言えばパニックになる⋯⋯だから、彼は冒険者たちの実力の底上げを考えた。その一番手っ取り早い手段は、良い武器を持つこと、そう考えれば、色々と説明できるんだ」


「⋯⋯そうね。確かに彼がいくら強いっていっても、ひとりで魔王と戦うなんて無理だもんね。過去の御伽噺が本当なら⋯⋯」


「うん、だから今回の事は、魔王復活に備える為の、彼なりの準備⋯⋯冒険者たちに、装備の重要性や心構えを説いて、来るべき日に、共に戦う準備をしている⋯⋯ということさ」


 ハイドンとレーナがそれぞれの考えを話していると、それまで一言も離さなかったもうひとりの前衛がおずおずと会話に入ってきた。


「あ、あの、オラ、思うんだども」


「何だい、ドグーラ」


「あの人、ただ、あの剣さ売りたかったんじゃねぇがって⋯⋯思うんだども」


 ドグーラの言葉に、ハイドンとレーナは顔を見合わせ⋯⋯。


「ぷっ」


 とふたりで同時に吹き出した。


「ああ、ドグーラ。そうかも知れないな。うん、いや、そうだったらいいな」


「もう、ドグーラったら」



 ドグーラのおかけで、深刻な空気が弛緩したのを感じながら、ハイドンは宣言した。


「よし、この話はここまでだ。街に戻って、今回の依頼分の調査を申請しよう」


「ええ」


「それが済んだら⋯⋯俺たちも、できるだけの協力をしよう。命の恩人に⋯⋯ね」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
新作です!

『レンタル魔王』は本日も大好評貸出中~婚約破棄騒ぎで話題の皇家令嬢に『1日恋人』を依頼されたので、連れ戻そうと追いかけてくる婚約者や騎士を追っ払いつつデートする事になりました~

その他の連載作品もよろしくお願いします!

『俺は何度でもお前を追放する』
コミカライズ連載中! 2022/10/28第一巻発売! 下の画像から詳細ページに飛べます!
i642177

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
書籍化作品! 画像クリックでレーベル特設ページへ飛びます。
i443887 script?guid=on
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
[一言] ドグーラさん、その直感が大正解なんですよ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ