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【完結】終末の花と猫と百合  作者: くもくも
7章 怠惰な1日
26/47

7-1

「へへ、すごいでしょ? ……ていうか、ユウやばいね。めちゃくちゃエッチじゃん。なんか、そのての漫画みたい。うへへ」


 驚愕したまま身動きが取れなくなっている僕を見て、奏は嬉しそうに僕の猫耳を撫でてきた。


 奏の号令によって急に繁殖したフラウアは、見事に僕の体に絡み付き、腕も足も、完全に縛られてしまっている。



「これは……奏がやったのか。フラウアが奏の言うことを聞いたのか? ……いやしかし、これはエロいな。ユウのでかい胸がフラウアの茎で強調されて……」


 凛はこちらをしげしげと眺めながら、取り出したスマホで僕の写真をとりはじめる。


「ちょ、ちょっと待って! なにこれ、動けないんだけど! 奏がやったの? なにこれ!」


 もがいてみるが、妙に茎が固くて腕すら外せない。

 こんなにフラウアって固かったか?

 やめて、写真とらないで!



「へへ、なんかわたし、魔法使いみたいになっちゃったかも? さっき気づいたんだけど、どけーって思ったら、フラウアがなくなってさ。伸びろーって思ったら、こうやって伸びるの。すごくない? ……さあフラウア、ユウの足を開かせろ!」


 奏が楽しそうに言うと、またフラウアが力強く形を変える。

 膝のあたりに絡み付いた赤い茎に片足を強く持ち上げられ、股を強制的に開かされ、僕はすっかり過激なポーズになってしまった。



「ほう、これもまたエロい……じゃない、すごいな。急にこんな力を見せられると、ちょっと心配になるが……」


 凛は言いながら、ようやく写真撮影の手を止めて、しかし明らかに性的な触りかたで、開脚させられた僕の後ろに回り込み、しっぽの付け根あたりをトントンと撫でてくる。


 やばい。ちょっと気持ちいい。

 そこはダメです。猫はそのしっぽの付け根は弱点なんです。


「り、凛。やめてよ……ん、はあ。奏も、これ……ほ、ほどいて。ん、んん……あっ」



 だんだん息が荒くなり、怪しい声が抑えられなくなってきた僕に、二人はニヤニヤ笑いを隠しもしない。


「奏、ユウ。いろいろ聞きたいことはあるが、とりあえずちょっとお布団に行こう。これはさすがに、夕飯なんて食べている場合じゃない」


 凛はしっぽから離した手で僕の足を撫でまわしつつ、また唇を塞いでくる。




『さてアンタたち! 明日のテーマはサバイバルにしてみるぴょん! 最近やってみて良かったサバイバル知識をみんなで交換! いつもの掲示板に書き込んでみてね!』


 全てが一段落し、残り少なくなってきたスマホのバッテリーで遥のネットラジオをつないでみたが、どうやらほとんど放送は終わりに近づいていたみたいだった。


 なお、僕の男性としての人生は、先ほど奏の手で完全に幕を閉じた。

 今日からは、奏のハーレムの一員、一匹のメス猫として生活していくのだ……。


 なんだろう。嫌だったわけじゃないし、いずれこうなるだろうな、と覚悟は決めていたけど、ちょっと涙が出る。



 先ほど半ば強制的に開通させられた股関の痛みを抑えながら、何やら部屋の奥に向かっていった奏の方に目を向ける。

 

「ねえ奏。気づいてたかも知れないけど、今日二人がいないときに……っ! ひぃ!!」


 奏はなぜか、薄暗い部屋の隅で正座になり、必死の形相で仏壇に祈りを捧げていた。

 ハチ譲りの猫の目は、暗い中でも周りがよく見えすぎてしまうので、急に妙なことをはじめるのはやめていただきたい。



「ふ、ふふっ! 笑わすな奏! 気にするようなことじゃないぞ。たぶんよくあることだ、うん。ちょっと早いくらいでクヨクヨするな!」


 ち、ちょっと凛!

 それは言っちゃダメなやつ! あと絶対笑っちゃダメ!


「ゴメンネ……ワタシ、ヨワヨワ……ハヤクテ、ゴメンネ……」


 仏壇に手を合わせたままの姿で、ロボットのようにカクカクしている奏。



 先ほどまで行われていた、僕と凛の股関の開通式で、奏は緊張のあまりか、少々ふがいない、いや、良く言えばスピード感のある終わりを迎えてしまい、それ以来絶望に浸った匂いをさせ続けている。


「か、奏! ほらこっちにおいで! また明日から一緒に頑張ってみよう? 今日はちょっと緊張してただけだよ。大丈夫大丈夫。すぐ慣れてくるって! ほらおいで!」


 僕が胸元をさらけだし、奏の大好きなプリプリの胸を広げてあげると、奏はピクりと反応し、立ち上がってこちらにのそのそと近づいてきた。



「そうだぞ奏。私たちを自分の女にしたんだろう? 喜ぶところだろうが。そんなふうにされたら、こっちが傷ついてしまうとか、考えないのか? ……ふ、ふふっ! くそ、やめてくれ本当に! 笑わすなってその顔!」


 やめろ凛! そういうとこ本当にデリカシーないな!



 からかわれて泣きそうな、悲壮感溢れる表情の奏を見ると、こちらまで笑いそうになってしまう。


 僕も元男として、その悲しみは理解できる。

 なんとか元気付けてあげたい。


 笑うのはギリギリのところでこらえて奏を捕まえると、しっかり抱きしめてお布団に連れ込んであげた。


 なんだかんだ、凛も反対側から奏を挟んでくれて、ハーレム要員二人での人間サンドイッチにより奏を慰める。



「アリガト……ワタシ、ガンバルネ……」


 未だロボット状態の奏に、結局僕まで笑ってしまい、真っ赤にした顔でぽこぽこと胸を叩かれてしまった。




「じゃあ例のウサギハラとかいうやつと、とりあえず友好的な関係にはなってくれたわけか」


 三人で布団にゴロゴロしながら、昼間に出会った遥のことを説明すると、凛はうんうんとうなずきながら、自分のスマホを手にとった。


「何か物資と交換に、電気を分けてもらえないか、頼んでみたいものだがな。そろそろ私のスマホは充電切れだぞ」



 凛の言葉を聞きながら、奏は僕の胸にすっぽりと顔をうずめたまま、ふごふごと何か騒ぎ出す。


「ユウ、ウサギハラさんと浮気はしてないよね? わたしのアレがよわよわだからって、わたしを捨てたりしないよね?」


 な、なんて面倒くさいやつ……。

 何も言わず僕がその金髪を撫でると、またムニムニと僕の胸の谷間へおさまっていった。

 


「もう、奏も凛も、浮気とか言うのやめてよ。今日は元男の僕がこの貞操まで捧げたんだよ? さすがにこっちの気持ちも理解して欲しいな」


 わかったわかったとばかりに、凛が僕の唇を奪ってくる。

 キス魔め。なんでもキスでごまかされると思ったら……あ、結構ごまかされてた気がする……。



「さっき奏が見せてくれたフラウアを動かすやつさ、どうも遥……ウサギハラさんも同じことができるみたいなんだ。たぶん二人の車の周りにフラウアを繁殖させてきたのもあの人だよ」


 凛は色ボケでそんなことすっかり忘れていたような表情だったが、布団から体を起こして胡座を組み、ペットボトルの水に口をつけた。


「それならなぜ私には同じことができないのだろう。私もこの馬鹿力やら、異常な体力やらが、さすがにフラウアの影響だろうとは気づいているが。なぜそのウサギハラや奏だけがフラウアを操れる上に、奏に至っては股関にあんなビックな新メンバーまで生やせるんだ?」


 確かにそれが謎。


 僕もハチの影響でこんなに体は変化してしまったし、バケモノとの戦いの中では、何度もフラウアの作用で力を手に入れてきた。


 だけどフラウアを思い通りに操るなんて、さっきも全くできなかったし。


 遥が言ったように、人間の意思でフラウアがどんなふうにも変わるのだとしたら、遥や奏と僕らの間には、その意思の強い弱いの差があるということだろうか。



「確かに奏は前々から、意思が強いみたいな感じはあったな。ユウは知らなかったかもしれないが、前に奏から一度告白されたことがあったんだ。そのときは、私はユウが気になっていたし、女同士だからと断った。だがその後もこいつ、一切アプローチを辞めなかったんだよ」


 え。知らぬ間にそんなイベントが。


 奏も前々から頑張ってたんだな……。

 僕も百合っ子を応援していたつもりが、かなりお邪魔になっていたみたいで奏に申し訳ない。

 今日はおっぱい枕くらい、いくらでも貸してあげよう。


「奏はさ、その、股関のアレのこと、昔からそんなに欲しかったの?」


 僕が尋ねると、胸の間から奏が少し顔を浮かせて、ふごふごと答える。


「なわけないじゃん……。たださ、いつか将来、凛とユウが二人で恋人になっちゃったりしたら、悲しいなあって思ってた嫌な自分はいたかな。もし自分がユウみたいに男で、立派なアレがついてたら、凛を自分のものにできるかも知れないし……みたいな、バカな妄想はしたことあったよ」


 そんな程度の意思でこの体の変化?

 ていうか僕にかつて付いていたアレは、今の奏みたいな、ご立派なサイズではなかったぞ。


 僕は死にかけて、ハチと二人分の願いでこんな姿になったけど、奏はちょっとした妄想みたいなレベルでここまでの影響。

 以前にも足の怪我がすぐに治ってしまっていたり、フラウアとの相性みたいな問題なのだろうか?



「……あっ! へへ、すごいこと思いついちゃった……!」


 僕が真面目に考えを巡らせていると、急に奏は僕の胸元から離れ、勢いよく立ち上がった。


「フラウアにお願いすればいいんじゃん……! へへ、へへへ! ユウ、凛。明日の夜は覚悟しといてね? わたし、生まれ変わるから……! 明日のわたしのアレは、つよつよだから……!」


 今度はあまりにも下らないことにフラウアの力を利用しようと企む奏に、凛と僕は目を見合わせため息をついた。

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