振り返ればそこに
ショートショートみたいな。
この作品はnoteにも上げています。
「おじいちゃん、しっかりして!」
俺のたった一人のおじいちゃんが倒れた。
年齢のせいで弱ってきていた心臓が悪さをした。おじいちゃんは意識を失ったのだ。
俺は幼い頃に両親を亡くし、親戚もいない。そんな俺を育ててくれたのがおじいちゃんなんだ。
俺がおじいちゃんを思う気持ちに反して、医者は残酷な言葉を吐いた。
「最善を尽くしましたが、助かるかどうかはわかりません。今夜が峠です」
そんな・・・・・。おじいちゃんが居なくなったら俺は一人ぼっちじゃないか。
俺は病院のベッドに横たわるおじいちゃんに必死で呼びかけた。
「おじいちゃん。目を覚まして」
俺は眠ることなく、おじいちゃんに付き添った。
俺の願いが通じたのか、やがておじいちゃんはゆっくりと目を覚ました。
助かったのだ。
おじいちゃんは一命を取り留めた。
だが、驚くことに、おじいちゃんが覚醒するとき「すりこみ」がおきた。
鳥の雛は卵から孵ると最初に見たものを親と思い、ついてまわるという例のやつだ。
おじいちゃんはあれ以来俺についてまわる。
今日も。今も。
振り返ればそこに、おじいちゃんがいる。
オモシロイと思っていただけたら嬉しいです。