食うべきか、食わざるべきか。
ここに、鮭の皮がある。
焼き魚定食を頼んだ私。
白いご飯にお味噌汁、小鉢にほんれんそうの胡麻和え、中皿に鮭の塩焼きとキャベツ。茶碗蒸しと、漬物。
基本的に、私は出たものを残すという選択はしない。
この定食にはついていないが、居酒屋の揚げ物メニューで必ずついてくるパセリでさえ平らげるのが常だ。
しかしですよ。
私はこの、魚の皮が、どうにも好きではない。
パリパリに焼いてあるものとか、カリカリに揚げてあるものは良い。
この、うろこ感たっぷりの、ぬめぬめしたやつが、恐ろしく気に入らない。
食べられないことはない。しかし好ましくない。
おお、なぜ鮭の皮は、皮なんだ!そりゃそうだ、鮭の皮なんだから。
鮭の切り身にりんごの皮がついてるわけないじゃん。
一人で葛藤しつつ、鮭の身を完食した。
…しまった。
鮭の身と一緒に食べたら、まだハードル低かったんじゃあるまいか。
中皿には、鮭の皮が、一枚、ぴらりと落ちている。
どうする…。
いつ食うんだ…。
あと残る食材は、漬物と二口のご飯、味噌汁が半分。
味噌汁に入れて一気に飲み下すか…?
いや!!それは悪手だ!!
味噌に鮭の皮の生臭さは危険だ!!
ご飯に乗せて、一緒に食らうか…?
いやだめだ!!白いご飯は最後の口直しだ!!
冷や汗が、垂れる。
何という、この、緊張感。
箸を伸ばす、手が、止まる。
緊張が、続く。
鮭の皮しか乗っていない皿の上で、箸は微動だに、しない。
う、動けない!!!
どうする!!どうしたら!!この食事を制することができるというのか!!!
「あ!鮭の皮もーらい!!」
旦那が皮をさらっていった。
「ちょ!!!何勝手に食ってんだ!!!」
「エビフライの尻尾あげるからさ!!許して!!」
絶妙なトレードが成立し、無事定食は、完食された。
よかったよかった。