相沢ユウ
新宿 ビル ゲート前
ゲートから出る二人にエリが女子会から抜け出して近づく
「おつポン☆、って凄いイケメンッ!?......もしかしてシュウ君?」
「そうです、......この度は迷惑かけました」
シュウは言った。
「あら、あんた達帰ってきたの?」
リナは言う。
「シュウ、ミユキさんに電話しなよ?、心配してたよ」
「あぁ......そう言えば、もしもしミユキ?
あ、ごめん、反省してる、うん、俺新宿に移動したいんだけど
あ、そう、させてくれなきゃ、別れるよ?、あ、はい了解」
シュウは充電し携帯を取り出し連絡した
「新宿に来る事になりました、後日渋谷書類にサインしに行きます
よろしくお願いします」
「はぁ?、お断りよ」
「少し自重したら?、シュウ」
ミオリが言う
「うーん、流石にあんな事があった手前ねー、私としても
素直に受け入れる訳にはいかないわ......」
エリさんも怪訝そうに言う。
「いや、みんなそういうけどシュウのヤツ反省してるしさ
こいつ滅茶苦茶強かったし、いい戦力になると思うよ?」
スカアハの城での戦いを見たけどもしシュウが味方になったら凄く
心強い。
スカアハの事も知っている。
何よりこいつは僕のマブだ。
「ユウ君がそういうなら、スカアハの事聞かせてくれる?」
エリさんがコーヒーを啜りながら言う
「ハイ、ケルト神話の中の影の国の女王です、それは知ってますよね?
スカアハもユウから聞きましたがハーデス同様
現実世界の侵攻を狙っています、しかしスカアハですら
畏怖する神々ダグザやモリガン、ルーなどが居ます
アイルランド神話の神々ですね
この3人の動向が掴めないのですが、僕はクーフーリンに
代わってスカアハの槍兵団の長をつとめる為、スカアハの元に
いました、結局見切られてしまいましたけど、ソラ君も
取って代わってスカアハに色々改造されるでしょう
事実僕も、今ここで冷静になってますが、毎晩の
性交にスカアハに心を蝕まれて力と狂気を得ました」
「長いから分かりやすく言って」
僕は言った。
「スカアハより強い神々が居て、ソラの貞操が危ないという事です」
危ないどころかご褒美だと思うけどな、あんな美人と
エロい事できるなんて。
いいなぁソラ。
「スカアハのマッサージをミオリは受けましたが
あれは愛撫に近い物です、マッサージの快楽よりも
性的な快楽が強く、スカアハと意識を同一化させて
洗脳と理性を崩壊させて、潜在能力を引き出ささせ
そして従順な犬を作り出す、幸いユウと僕の
熱い友情がスカアハの支配をぶち破りましたが
あの女はきっと敵に回るでしょう、恐らくですが
ジョーカーは夢魔の女王モリガンあたりかもしれません
その神以外にもコナハトの女王メイブという
スカアハのライバルが居ます、ギリシア神話神話では
単純なパワー対決でしたが、今回は互いに魔術や
戦略を駆使してのテクニカルな戦いになるでしょう
それにケルト神話は色々な説があり、一般論じゃ
通じないと言うのもあります」
「長いから分かりやすく言ってくれる?」
エリが言った。
「スカアハ以上の敵がいるし、今回のダンジョンは面倒臭いという事です」
「僕がされたのって愛撫なの?、リンパ線のマッサージとか
って言われて股間のあたり撫でられたけど」
そんなAVみたいなシチュエーション気づけよ
というか、ならミオリは危ないんじゃないのか?
「ミオリなんかこう気持ち変わったりとかしない訳?」
「別に、ちょっと血が見たいとか官能と残虐の中で
生を感じたいとかそんな気分にならないよ?」
「ミオリちゃんタクシーを呼ぶわ、今日は帰って寝なさい
後しばらくみんな休みにするから、連絡するわ」
「分かりました」
エリは目が真っ赤になっているミオリを送りに行った。
政府の力で施設とかに閉じ込めるべきだと思うけどなぁ
僕も今日やばいLINEとかミオリからこないだろうか?
「な、シュウのやつまともだろ?」
「な、なんかガラッとキャラ変わってしまったみたいだけど?」
リナが驚きながら言う。
「反省したんだ、リナ、僕には君がただのでかい乳のヒステリー女にしか
見えないよ、今晩のオカズになりもしない」
パァンとシュウはリナにぶたれた。
「そーいやレベッカとかレオってどうなったんですか?」
僕は疑問に思ってた事を口に出した。
「あー、あの子達は今回参加してないわ、ギルドの件が摘発されてね
攻略者から外されるって事は無いけど、今回の参加希望は拒否されたわ
それと政府公認のギルドも設ける事にしたの、場所はアプリで確認できるから
明日行ってみたら?、当然ミオリちゃんは毒抜けるまで待機ね、拳銃
持たせた監視員を家の前に置くわ、それとソラ君の事も今後
救出する会議をしなくちゃね......」
心労が絶えないアラサー処女の女監督エリだった。
その日の晩、僕はミオリからの連絡を全て拒否設定にして寝た
代わりにシュウと連絡を取る
シュウのエロい話や女の口説き方などを教えてもらった
「なるほど、わざと冷たくして興味をひかせるのは鉄板なんだね」
「でも人数なんかじゃなくてさ、ユウと俺みたいな
たった一回の出会いと思い出の方が大事だぜ?
ユウ、ありがとな、俺今まで男友達できたこと無いからさ......
それじゃ、おやすみ」
.....こいついいヤツだな、というか人って本当に日常で見せてるのって
一面なだけで少しの壁を超えると良いも悪いもみんな
何かしら持って、みんな考えて生きているんだな
......ミオリの狂気然り。
シュウもまさか、本当に心通わせられる友達が
いなくてずっと凄く悩んでたなんて知らなかったし
僕は眠りにつく前考えた。
シュウを救った、そして感謝される、そして色んな事を
教えて貰う、誰かと心を分かち合う。
それってもしかしたら、エロい事よりも遥かに気持ちいいものなの
かもしれない。
その誰かを通して、誰かの中に自分がいる事を感じる
リナやミオリにエリさん、そしてレベッカ達にシュウ
今まで感じていた、世界に対する「非」現実感、乾いた心に
みんなの気持ちが注ぎ、すくすくと成長する
「誰かを助けたい」
政府が出す死傷者から学校の身の回りの困っている人まで
僕は彼らを救いたい、それが僕の生きる現実感になり意味になる。
世界の色が変わった。
ユウは温かな気持ちで眠りについた。
ミオリやリナの感受性や知能に触れたが
ユウはもしかしたら誰よりも感受性が強いのかもしれない
知能は分からないが。
物心ついてから今までずっと薄い生活の中
彼は刹那的な生き方をしていた。
小さい時は違ったのかもしれない。
例えば虫を色んな手段で殺す遊び、みんながよくやるが
ユウはみんなに合わせて虫を一匹殺しただけで家に帰ってずっと泣いていた
虫だって同じ様に生きている
老害だと生きているだけで疎まれていた曾祖母
ぶつぶつと過去をぼやき続ける祖母の横にユウは行き、ずっと
話を聞いてあげた。
手をにぎってすっと。
どうして曾祖母の事を悪く言うのかと言ったら
みんなに怒られた
悪口では無いと、そんな風に自分達を言うなと。
屋台で家族に夜逃げされたおばあちゃん、誰も買わない
フレンチドッグをユウはくじをひかずに持っているだけのお金全てで
買ってあげた
家族にとても美味しいフレンチドッグだと醜いフレンチドッグを振る舞うと
嫌がられた、ユウは一人で泣きながら全部食べた。
みんなの輪に入れさせて貰えない子が居た
その子とずっと遊んでいたら、ユウまでみんなの輪から
外された。
何が悪くて、何が正しいのか
悪口、仲間ハズレ、いじめ、流行り、虚栄、ブランド
セックス、金、暴力、事件、学歴、マニュアル通りの進学
インターネット、SNS、サブカルチャー。
ユウは少し世界で生きていくには清らか過ぎたのかもしれない。
だからあやふやで斜に構えた適当な下ネタ野郎ユウを作り出した。
そして純粋なユウの上に作られた仮想のユウがいた。
だけども元々の強いユウの感受性は仮想のユウを突き破りかけている
何度も、突き破ってはまた壁を作られるが。
少なくとも、ミオリやリナの件やソラやシュウ件の時は
間違いなく純粋なユウが突き破った。
チートスキルのカードなんて無くても、もしかしたらユウは
本当に価値のあるチートスキルを潜在的に持っているのかも知れない。
当の本人は無自覚だが
次の日 学校 昼休み
ユウは困っていた
後輩の女子にLINEIDののったラブレターを渡されたからだ。
ケンタに相談した悪戯だろうか?
「いや、なんか最近お前カッコいいもん」
クラスの女子の接し方も最近違う、普通に会話というもの
が成立している。
ユウが特別授業の時、席を変えてクラスの女子の椅子に座っても
嫌がられない。
ふと目を見やる
クラスの女子達に仲間露骨に仲間外れにされてる女子が居た
理由は色々ある、女子なら容姿や折が合わないとかでも十分理由になる
ユウは近寄って言った。
「なぁ一人で飯食うなら、バイキンの僕も同伴していいか?
僕もそのソシャゲやってるんだ、って知ってるか僕一応チャンピオンだもんな
ていうかこの前ヘラクレス当てちゃってさぁ」
ユウの芽は小さな苗になっていた。