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暗中行軍

「盾持ちのHPがあと少しでぃすよ!」


「このまま一気に押し込め!」


「マジノギさん! 後ろからムナガラーが!」


「ごのタイミングでですが!?」


「忙しないな! ムナガラーは俺が引きつけるからソルジャー共を早く倒してくれ!」


洞窟内の敵は思っていたよりも強敵だった。


気づいたら増えてるイソギンチャクみたいな見た目のエネミー“ムナガラー”。


魚人族の見た目を更に魚よりにしてグロテスクさが増した“ディープソルジャー”。


常にバチバチと電気を帯びていめ、暗い洞窟の灯り代わりな蝙蝠“エレバット”。


数で攻めてくるイソギンチャクと蝙蝠、装備している武器に応じて多様な攻め方をしてくるソルジャー共。


壁に松明が点々と着いているとはいえ、基本的には薄暗いダンジョンということもあり。思わぬ所から不意打ちを食らうこともあって中々に辛いものがある。


というかソルジャー共がひたすらめんどくさい。

ソルジャーは基本的に三人一組で現れるのだが……近接型だけならまだ何とかなる。しかしその中に重戦士タイプと魔道のような遠距離タイプが混ざると途端に地獄と化す。


タンクと火力が揃ったらそれだけでもう立派なガチメンバーでしょ。


タンクに手間取っている内に魔法やら弓矢やらが飛んできて、更にそこにイソギンチャク共が混ざり始めたら……逃げてきた他のパーティーのに巻き込まれた時はマジで無理かと思った。


少なくとも二力と俺だけだったら『よし、レベル上げするか!』と速攻で諦めていたことだろう。

だが今回は頼もしい仲間であるサジタ、マジノギコンビがいる。


サジタの職業は戦士で、攻撃は防具に頼りっきりな代わりに斧の高火力単発スキルでエネミーを派手に蹴散らすバリバリの近接火力型。単純火力なら俺には最早勝ち目は無いだろう。それと単発で終わらせるためMPの消費が少ないのは、スキルを連発するためすぐガス欠になる俺からすると羨ましい。


それに対してマジノギは騎士だ。剣と盾を使い敵の攻撃を受け止めるタンク職。仲間に敵の攻撃を余裕を持って受けられる者がいると楽なことこの上ない。

それに彼は隙あらばカウンタースキルを使って攻撃にも参加してくれる。到れり尽くせりだ。


それとリア友でもあるからか二人の動きは見事な程に息が合っており、お互いの隙を隙間なくカバーしていた。


流石は姐さんの仲間だ。どうせキャラステだけでしょとか思ってたら十二分に高いプレイヤースキルの持ち主達でした。正直ちょっと新職業で図に乗ってましたごめんなさい。


えっ、その新職業はハズレだろって? 俺だけはこの職業を神職業だって信じてるからなんの問題も無いね。


それはそれとしてここまでの話だと、明らかに俺達が足でまといかのように思われそうだ。

いや、索敵では二力が吟遊詩人なのと獣耳だからか耳が良いらしく、エネミーの出す音を聴くことで戦闘回避に役立ってるし。俺も戦闘中は走り回ってヘイト管理を手伝ったりしてたから楽してた訳では無い。


火力に貢献しろ? 壁になれ? 適材適所って素晴らしい言葉だよね。


とにかく敵は強敵だったが対応は十分できたため、そこそこスムーズに洞窟の奥へと進むことが出来た。


そして何度目かの戦闘を終えた時のこと。


「ん、確かそろそろ罠のあるエリアだよ」


「ここ罠あるところあんのか。どんな罠?」


「毒とかの状態異常系の罠だったはずでぃすよ。あっ、それと落とし穴もあるって聞いたな」


「落とし穴……隠し部屋?」


「いんや、だだ落下ダメージ貰って、じかも遠回りさぜられるだけの奴らしいよ」


つまり引っかかるだけ無駄なのか。


落とし穴は一見他の床と区別つかないが、よく見ると微妙に違うのでよく目を凝らして床を見ないといけない。ただでさえ視界悪いのに

エネミーといい、このダンジョンを作った奴は性格悪すぎるだろ。


「……ん?」


ふと前方の岩陰に誰か、或いは何かがいたのが見えた気がした。薄暗いのもあり、はっきりとは見えなかったが少なくともこれまで出てきたエネミーではなかった。


プレイヤー……は隠れる意味が無い。となると新しいエネミーになるのだが……一瞬見えたあの表示は?


前にいるサジタ、マジノギの二人は床を見るのに全力で気づいていないようだ。


その岩陰に何かいるぞと声を掛けようとした瞬間、影が岩陰から飛び出して来た。


早い!? 音で気づいた二人が動くより先にその影はこちらへと飛んできた。咄嗟に装備していた双剣を構えて攻撃に備えようとしたら、そいつは俺も無視して後ろへと向かっていった。


当然その後ろには二力がいた。そして今度は無視せず、むしろ明確に二力に向かっていっていた。


二力を狙ってたのか!?


二力は突然のことに反応出来ずそのまま影の突進をモロに食らった。


「きゃっ!?」


そして次の瞬間信じられないことが起こった。


突進で吹っ飛んだ二人の着地先に偶然罠が存在したのだ、しかも状態異常にするものではなく落とし穴の方が。


そのまま罠は起動しそこの地面にいきなり黒くて丸い口のような穴が現れた。物理演算に従って当然二人は穴に落ちていく。


「二力!」


それを見た瞬間、考えるよりも先に身体が動いていた。


後で思い返すと良くもまぁあんなに早く動けたものだと思う。普段だったらもう少しイベントか何かを疑って動きを止めていた所だっただろう。二力のことにしたってあくまでイベントでのNPCとPLの関係でしかない。


ただ、その時は必死だった。何故かは分からないが。


AGIの許す限り全力で手と足を動かし、そして穴が閉じ切るより先に俺も穴へと飛び込んだ。


暗い暗い穴底へと真っ逆さまに落ちていく

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