グラノス洞窟
大分期間空けてしまいましたがこれからは今までのように1週間ペースに戻していきます
「サジタでぃす!」
「マジノギだす!」
「…… 双子?」
いや、すっごいクリソツ。
ダンジョン攻略の当日。俺達は手伝い相手と合流すべく集合場所である青の国の酒場に向かった
姐さんに教えて貰った名前のプレイヤーを探すと直ぐに見つかった。
青と赤色の魚人族の二人組。見た目はどちらも少年のように見えるがそのある意味では王道とも言える色のコントラストは目立っていた。
そして更によく見ると別の所でもその色を目立たせていたのだと気づく。
二人の顔だ。見比べて見ると殆ど差異がなかった、全く一緒。ついでに装備も武器が違うだけで防具一式が同じものにしてあった。
何も知らずに見かけたらNPCかと勘違いしそうだ。
「よく言われますが双子じゃないんでぃすよ」
「ただの同い年の友達さ。けど、一緒にこのゲーム始めだら、何がたまたま似たようなキャラになっちゃったんだよな」
「これが偶然かよ……」
あとすっごい訛り
変な人の周りには変な人が集まりやすいのだろうか?
似たもの同士が集まる必然性への疑問を速攻で忘れて、早速ここに集まった目的について話し始める。
〜〜〜〜
街から一時間くらい歩き、今回のクエストの目的地である“グラノス洞窟”へと辿り着いた。
このダンジョンについて俺は何も知らない。姐さんが言っていた推奨レベルからも分かるが、ここは最近見つかったダンジョンだからだ。
道中で二人に聞いた所によれば。ここは青の国のグランドクエストで他のダンジョンを探している時にオマケで見つかったダンジョンで、目立った特徴もなくクエストで指定されたりしない限りはわざわざ来るような所では無いらしい。
青の国は何でダンジョン何かを探しているのかというと、確か青の国のクエストのストーリーは失くした古代の王家のお宝を探しているというものだったはずだ。その過程で遺跡のようなダンジョンを探せとでも言われたのだろう。
聞いたら案の定、近くに遺跡があってそれのついでがこの洞窟だったらしい。
洞窟の入口は垂直に切り立った岩肌に大きな口がついたような形で存在していた。
「遺跡の方も似たような入り口なんでぇ、よく間違えてしまう人が多いらしいでぃすよ」
「遺跡の方ってどれ位強いの?」
「確か10以上はレベルが上だっで姐さんが言ってだの聞いた気がするだ」
間違えてこっちに来たなら良いが、あっちに行ったら悲惨なことになりそうだ。
そういうのを含めて姐さんは二人を付けてくれたのか。俺だけなら間違えてもおかしく無いしな。
気が利きすぎて本当に頭上がらないねぇや。
「そう言えばユラギさんは……」
「ユラギでいいよ」
「んじゃあ言葉に甘えで。ユラギの職業は何なんだ? 見だ感じ前衛なのは分かっげど」
「多装士」
そう言うと二人は分かりやすく大きく目を見開いた。おや、普通という訳では無いのか。
「多装士っでぇ、あの武器一杯使えるだけの奴か!?」
「マジが! なってる人、オレ初めで見だよ!?」
ははーん、これはどちらかと言うと嘲りが入ってるやつだな?
「まさかダメなヤツなのか」
「そりゃ武器が沢山使えるけど強力なスキルがあるわけでも無いから火力ば低いし、かと言っでステータス的に壁が出来るわけでも無いがら」
「ユニークジョブなのに外れ職業の筆頭扱いされてるヤツでぃすよ」
外れ……oh……。
まぁ薄々気づいてはいた。この職業、火力盛る要素少ないし。その少ない内の一つも汎用性の欠けらも無い代物だったし。職業でのステータス補正も色んな武器を使わないといけないからか満遍なくて寧ろ使いづらそうだったし。
ゲームにおいて強いとされるものがあるなら、当然弱いとされる不遇な存在もある。
全ての職業が強い何てことは有り得ないとは言え、まさか自分が気に入った職業がピンポイントでとは。
辛い。
その場で膝をつき、しくしく嘘泣きをして悲しみを表現していると二力に無言で背中をポンポンと叩かれた。
ガチで泣きそうになった。
「ま、まぁ、決して戦えないという訳ではないから何とかなるとは思うでぃすよ」
「タコの一体や二体何とかなるっで!」
「ん? タコ?」
「ああ、ユラギさんは違うクエストやるから知らねぇか。俺達のやる『冥海流弟子入り試験』ってぇクエストの目的は奥に現れるタコのモンスターを倒すことなんでぃすよ」
タコ……タコねぇ……。
「ユラギどうした? タコが嫌いなのか?」
「いやちょっとめんどくさいなぁ、とね……」
思わず表情に出してしまっていたのか、二力にまた心配されてしまった。大丈夫、多装士が不遇だとかいう情報よりかはダメージは少ない。
ただ確かこのゲームのタコというか海産物はモチーフ的に冒涜的な存在だった記憶があるんだけど。
それのタコと言われると……知ってる限り大物しか思いつかないぞ。
まぁそれと戦うのは俺達だけでは無いだろうし、最悪勝てないなら周りに全任せすればいいか。
と、碌でもない寄生発言を心の中でしながら俺達は洞窟へと足を踏み入れていった。