表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/22

りそうのしょくぎょうをてにいれたぞ!

相変わらず道中は初心者らしき集団を見かけるばかりで平和な道程だった。


もう少し長耳族(エルフ)の連中がいても良かったのにとは思わないでもない。ニカを、というより楽譜を狙う理由を是非とも聞かせて欲しかった。


さて、街へと向かっている間何もしないと言うのもアレなので、ここで鹿たちを倒した際のレベルアップでも確認しておこうか。


かつて俺が現役だったころのレベル上限は50だった。凡そ三ヶ月ほどの期間しかやっていなかったが、それでも俺は50まで上げきった。当時は運良く時間だけはあったからな。


そして今ではその上限は90という値にまで繰り上げられてある。……90ってちょっと中途半端な値じゃない?


とにかく俺にとって50以上というのは未知のステージに他ならない。1年を経て増えた新要素たちが俺を待ってと思うとテンション上がってきた。


さてさて取り敢えずスキル周りから。


このゲームにおけるスキルは幾つかの種類に分かれている。武器スキル、職業スキル、装備スキル、魔法スキルと後は称号スキルというものがある。


スキルを得るためには当然技術(スキル)なので何回も繰り返し使わなければならない。


武器、職業、魔法はその繰り返しを熟練度という名の経験値という形で成長して新しいスキルを覚える。ただ残りの装備と称号のスキルは少々特殊である。


装備スキルは要するに装備そのものに備わった特殊能力のことだ。基本的にはパッシブ、つまりは装備してるだけで効果が発動するのが多いが偶に攻撃や防御スキルのように発動させる必要のあるスキルを持つ装備も存在する。これは所謂ユニーク枠に属するものだ。


固有のものだけあり強力なものが多いがそもそもユニークなのでその装備を手に入れるのが難しかったりする。


鹿を蹴散らした“灼鯨の大骨剣”もその唯一無二の攻撃力から分かる通りユニーク装備だ。当然固有の強力なスキルを持っている……がその武器の重量に合わせたかのようにその使用コストはクソ重い。


具体的に言うと。俺が一回撃ったらMPが底を尽いて他のスキル使用不可とかそんなレベル。使いづらいってレベルではない。絶対あのレベル帯で手に入っていい武器じゃないってアレ。


次に称号スキル。これは読んで字のごとく称号を得ることで手に入るスキルだ。


このゲームにおける称号とは実績解除のようなもので一定の条件をクリアすることで手に入る。ただその条件は基本的に途方もなく。そもそもその条件が明かされていないのが殆どだ。


なのでPLが称号スキルを意図的に手にいれることは難しく。実際手に入れた連中はその殆どが偶然によることが多い。これは逆に言えば称号スキルそのものがユニーク枠という話でもあるので称号スキルを持ってるかどうかも一種のステータスとして扱われる。


ちなみに称号で手に入るものはスキルだけに限らず、貴重なアイテムや職業の解放だったりもある。どれにしろ恩恵が大きいことには変わりない。


1年間でのアップデートでどれだけスキルが増えているのかとワクワクしながらメニュー画面を開き、それぞれのスキルページを捲っていく。


メインとなる武器と職業のスキルは……ざっと見た感じで新しく増えたのは無さそうだった。流石にそうそう増えたりはしないか。


魔法も取ってはいるが飛ばす。おまけ程度に取ったものでそこまで詳しくは無いから変化を見ても分からないのが殆どだろうし。


武器スキルに関しても手持ちの武器には特に変化が無かった。倉庫に預けてある奴はもしかしたら何か変わっているかもしれないのでここはまだ希望がある。


そして最後に称号だが……スキルは増えてないな、うん、スキル(・・・)はな。


称号の獲得と共に報酬があるので獲得できる称号はそのページの先頭に来るようソートされるのだが、そこには幾つかの消費アイテムが貰える汎用称号と共に「多装士」なる名前からして恐らく職業であろうものの解放ができる称号が獲得出来るようになっていた。


少なくとも俺がやっていた時には無かった奴だ。なんだよ称号名の「使いたがり」って。何を使いたがったんだよ。


……いや考えるだけ無駄だ、獲得したらこれが何なのかは分かる。


ということで取り敢えず一括称号獲得のボタンをポチッと押す。


するとそこそこの数の消耗品アイテムを獲得したという表示が並び、そしてそれに紛れ込むように「多装士になれるようになりました」の一文が。


早速職業を「盗賊」から「多装士」に変更してスキルページを開く。


二つ武器を取り出すスキルに即時装備、それと手元から離れた武器の回収。全部装備関連のスキルか。


つまりこれは、多装士の名の通り沢山の武器を使える職業なのか。


……最高では? え、マジで俺の求めてた職業じゃん。


突然の出来事で思わず声に出てたのか、隣にいた二力に心配そうに声をかけられた。いや、変な人に見えただろうけど大丈夫だから。離れようとしないでガラスのハートが割れちゃう。


このゲームに関しての俺の評価は概ね最高なのだが、ただ一点。職業による武器の向き不向きが存在することだけが気に入らなかった。


いや、このゲームに限った話ではなくそれが普通なことなのは分かっている。なんなら職業での装備出来る武器種の制限が無いだけよっぽど素晴らしい。


けど結局は職業スキルの兼ね合いでどうしても優劣の差が出来てしまっており、僅かな配慮も本末転倒気味であった。


しかしなるほど、この職業が最初から実装予定だったのならば武器種の装備制限が無いのはその為だったということか。


物語の伏線もそうだがシステム的な伏線がこういう形で回収されるのもいいものだ。


しかしここまで絶賛しておいてあれだけど、この職業に果たして好き好んでなる奴がいるのか?


ざっと見た感じさっき確認したものも含めこの職業のスキルは概ね装備関連のサポートスキルのみで構成されている。代わりに戦闘の要たる攻撃や防御、強化スキルが見当たらない。


いや、この職業の高レベルスキルに攻撃スキルらしきものが見受けられるが逆にそれだけだ。強化や防御スキルに至っては一つも無さそうだ。


絶対弱いだろこの職業。


瞼の裏にロマン職だとか産廃職だってネットの掲示板に書かれてる光景がありありと浮かぶようだ。


……まぁ使うんですけどね。


今までの戦闘スタイルがそもそも武器種を沢山使い回すものだったし、現に今の俺の職業は全職業の中で唯一アイテムを盗めるという理由だけでなっている「盗賊」。別に職業にこだわりがあった訳では無いのだ。


むしろこの職業はこれまでの戦闘スタイルにピッタリハマる。下手したら想像以上に化けるかもしれない。


……フフフ、フハハハハ!


勝ったな! 何と戦っているか分からないがこれは何かに勝ったな!


今ならあの青鹿の五、六匹と闘っても勝てる自信があるぞ!


あまりの嬉しさに更に距離を置くように離れていくニカを尻目に俺はひたすら高笑いをし続けた。


ようやくユニーク要素を手に入れた主人公君。……大骨剣? あれはリリース初期での暫定的なユニーク武器だから。全然一線級の性能はあるけど所持スキルが一つしかない辺りでユニークレベルは低いから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ