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黄昏 ~たそがれ時

かじりかけの林檎

作者: 白石 瞳

あの頃のにおいがする

乱れたベッド


何度も絡み合い しわになった白いシーツ

何本か抜けた2人の髪


かじりかけの林檎

シーツにこぼれたシャンパン

フランボワーズ


生クリームをつけてるあの人のほお

ぬぐうようにkissする私に


たわむれて胸に触れながら

耳たぶをかむ あの人に驚いて

思わず私は飛び上がり

花瓶を倒す


花と花の間から

水がゆるゆると床に出てくるのも構わず

私は何も身につけない姿で

花瓶をまたいで


そこだけがコンクリートのように冷えてる壁に

背中をむけて立つの


林檎を頭にのせて言うのよ

「ねぇ、貴方の視線で命中させて。」って


鋭く痛い位の視線で

私を犯すようにしてみるのもいいわ


ほら、貴方が今、ラ・フランスを使ったカテロラリーを

林檎に投げてみせてよ


私は逃げたりしないから


笑っていただけの

あの人の目が細く

真剣な目に変わり

私は目を開けたまま

両腕を広げた

どこに命中してもいいように



眠れない夜

眠りたくない夜


甘酸っぱいにおいが

私を少し混乱させるかのよう

現実と非現実の境目のような

昔のことか現在のことなのか



ほら、ロビンフッドみたいに

視線の矢を命中させて


林檎でも私の心でもいいから


ひざがガクガクしてるのは

怖いからじゃないわ

寒いわけでもない


次に待っている愛撫を想像してるだけよ


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