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雑木林柴刈り奇譚。  小夜物語  第50話  Thicket firewood gathering kitan

作者: 舜風人

小夜物語、小序


誰にだって語りたい物語はある。

誰にだってその人しか語れない物語がある。

誰にだって物語はある、語りたい物語はあるんだよ。そうだろ?

心に秘めた一つの物語がある。

だから、私がもしもかたらずに死んでしまったら

その物語をだれが語れるというのだろう。

だから、、どうか私に語らせてくれまいか?

遠い日のそれは幻想の物語?

あるいは実在しない物語?。

いいや魂の本当の物語なのさ。

塵は塵に帰り、

灰は灰に戻る

だから、

覚えておいてほしんだよ、

私の物語を、

忘れないでほしんだよ

この物語を。

私がいま語らなければこの物語は風化して

消え去り、灰に帰ってしまうんだよ、

だから私が語れるうちに語らせておくれよ、

私はもうじき、語れなくなってしまうんだから。

私が語り継ぐことによって私の物語はそうしてかろうじて、永遠性を

まとうのだろうからね。

誰かどうか私の物語を覚えておいてほしいのさ。

それでこそ私が語り継いだ意味も価値もあるのだからね。

















「柴刈り」、、、と聞いて?


あなたは何を想起するだろうか?


おそらく大多数の方は、、



昔話の、


「おじいさんは山へ柴刈りに


おばあさんは川に洗濯に、、、。」


を、


想起するのではあるまいか?

でも?私が子供のころ,「柴刈り」は田舎の人々の当然の日課だったのです。


原則として、、大人が「柴刈り」で


子供は「薪拾い」(枯れ枝拾い)が役目?日課なのです。


そのことは、おいおい、詳しく語りましょう。



さてその前に、、


そのころ、、、、

昭和30年だった。そのころ私の住む、都から何百キロも離れた、僻村の開墾地では、もちろんガスも水道もあるはずがありません。水は遠くの井戸か、遠くの沢までバケツをもって汲みに行くのです。

煮炊きは?かまどで薪や柴を燃やすのです。

非文明生活が当たり前です、

かろうじて❓電気だけは来てました。

といっても今のようにオール電化?などはありえません。

電気を使うのは、白熱電灯と3球スーパーのラジオのみです。


冷蔵庫も炊飯器も洗濯機もテレビも扇風機も、ありません。

あるはずがないです。

そういう生活が当たり前だった。それが昭和30年の田舎の僻地の開墾地の暮らしでした。


当時、我が家はそうした開墾地のまたはずれの山際のそこから雑木林がうっそうと続くという境界?にありました。

つまり我が家までがいわゆる開墾地で、、畑であり、、、その先はまだ未開墾地で、手つかずの雑木林がどこまでも続くところだったのです。


今、「雑木林」、、と、書きましたが、あなたが想像するようないわゆる、公園やそこらにあるような、こぎれいな?雑木林ではありません。

はっきり言えば手つかずの、、まさに原生林です。

ただ、、そういってしまうと、「もののけ姫」みたいなアンナすごい原始の原生林を想像されると困る?ので

とりあえず?「雑木林」、、と仮に言ってるだけです。


私の故郷は廻り中が山また山の山間僻地、でしたが、

わが、開墾地は、そんな山間僻地にあって珍しく、なだらかな平坦地です。

廻り中は山ですがここだけがそうですね。方5キロくらいにわたって、平たん地なのです。

だから開墾すれば畑ができるというわけですね。といってもここは水の便が悪くて、井戸を掘ってもほとんど水が出ません。川も、沢も、湧き水もありません。

ということで近代まで放置されてきたのです。


古代には、この平坦地いったいは、何百という群小古墳が作られて、ここは古代の一大墓地だったのです。

形式はいわゆる「積石塚」というもので古代にこの山間で「採鉱」や「官牧」に従事した渡来人系統の

技術者の墓といわれています。あるいは彼らを統括するために、古代の朝廷政府から派遣された来た、役人、官吏の墓だとも、


まあ。当時、私は少年でありそんなことは知るはずもなく、、それを知ったのはずっとのちですが、、。


古墳は、最大の物でも、高さは2メートル直径4メートル、多くはその半分もありません。よく登ったりして遊んだものです。墓室はほとんどむき出しで中はぽっかりとあいていて、もちろん副葬品は皆無です。

何も残っていません。まあ副葬品といったって、こんな山奥のちっちゃな古墳ですからもともと大した副葬品など埋まっていたハズもありませんがね。

未盗掘の古墳がそののち、最近?教育委員会で発掘調査して

聞くところによると、「蕨手の太刀」が出たそうです。



昭和30年当時には、雑木林にはいくつもの群小古墳がぽっかりと。墓室をのぞかせて、小山のように在ったものです。そこはキツネやタヌキが巣穴に利用したりしていましたね。大きな墓室には入って遊んだ記憶があります。なかは空っぽ何にもありませんでした。

そうした小さな古墳が手つかずの雑木林の中にこんもりといくつも並んでる、

もちろん開墾された畑地の中にも、古墳がぽっかりと、いくつも、とり残っている、

おそらくは小さな古墳は壊して畑にしてしまったそうして壊せないような大きな古墳はそのままにしておいた?のでしょう。

高さ2メートルの古墳を壊してまで畑にするのは労力ですものね。

そんな原風景が私の脳裏に今もくっきりと浮かんでいます。


さてだいぶ前置きが長くなりました。


柴刈りとは、、当時のこの地方では至極当たり前のことであり、

主に主婦が、大きな柴かごを背負って、大きな熊手をもって、裏山(里山)へ、、雑木林へと

分け入り、そこで落葉している、枯れ葉をかき集めて柴かごに、詰めて、持ち帰りどこの家にもあった、

柴小屋に入れて貯蔵するのです。

それを日々の煮炊きに利用するわけです。

たくさん貯蔵しておいて1年間の煮炊きの要に賄う。

そのために、

我が家にも大きな「柴小屋」がありました。幅5メートル×10メートルくらい、高さは4メートルくらいの大きな納屋?というか

小屋(貯蔵庫)ですね。そこに薪や柴を貯蔵しておくのです。

これで年間を賄うのですからこれだけの大きさが必要なのですね。


子供たちは学校帰りや休日に山へ入って薪拾い(枯れ枝拾い)をします。

これは雑木林の中に落ちている、枯れ枝を拾い持ち帰ることです。

これも子供にもできる「お手伝い仕事」です。


男たちは雑木を切りそれを挽いて割り、薪作りをします。

長さをそろえて(長さ40センチ、)、針金でくくり、一束(直径20センチほど)にします。そういう薪(まき、たきぎ)を、

これはそれを売って稼ぐためであり、自家用になど、もったいないので?あまり使いませんでした。

当時、薪は町に売るとよく売れたものでしたから。町でもまだ七輪が全盛時代ですからね、


もっと本格的には「炭焼き」もありますがそこまでは我が家ではしてませんでしたがね。

開墾地にも山のはずれに炭焼き釜があって、老人の人が焼いていた記憶はあります。

この辺の炭焼きにまつわるお話はほかで書いた通りです。


さて、

柴刈りは、、言うまでもなく、、秋から冬の仕事です。枯れ葉を集めるのですからね。

落葉が始まって、天気がいい日がしばらく続くと、、

ちょうど柴が乾燥していいころ合いです。、


母はそのころを見計らって大きな背負いかごを背負い、大きな熊手をもって裏山(村の共有林?)へとわけいるのです、

ある日のこと、私もついていったことがありました。

その日はなんだか、朝からいい天気で、晩秋のころでしたが、

母は支度して、さっそく裏山へと分け入ったのです。

けもの道をたどってゆくと、ぽっかり開けたところに出てそこから、熊手でこんもりと散り敷いてる

枯れ葉をかき集めてゆきます。

廻りは、うっそうと茂る手つかずの、雑木林で、昼間でも薄暗くて気味悪いようなところです。

遠くには枯れ葉の積もった、小さな古墳の墳丘も見えますし、次第に、、そこも母は熊手で柴を刈ってゆきます。しばらくして柴が籠に集まれると私がその籠に載って踏み固めます。

籠は直径1メートルはあろうかという大きなものです。

それを私が乗って踏み固めるのです。柴は圧縮されてへこみ、さらに母は柴刈りを継続します。


あたりを見回すと、、あ?

私が好きな、秋茱萸の木が、近づくといっぱい実をつけているではないですか。

秋茱萸の実は,渋すっぱくて、独特の味です。

私はその味が大好きでした。

ああ、あの味、もう1度味わってみたいなあ。忘れえぬ少年時郷愁の味です。


ふと気が付くと、

母が遠くの森の奥を見つめていました。

私もついとそっちを見てみると、

なんかウス白いような、影がたたずんでこっちを見てました。

母はしきりに口のなかで何かつぶやいていました。

するとその白い影はすーと消えてゆきました。

「あれなあに?」私が聞くと母は

「ああよかったね、山の神様に柴刈りのお許しをもらえてね」

といいました。

子供の私には何が何だかわかりませんでしたが、

村では、山に入って、帰ってこない人も実は、、多くいたのです。


例えばこんな話もあります。


村の夫婦で喧嘩ばかりしてる夫婦がいました。

ある日嫁さんのほうが大喧嘩していなくなったのです。

あくる日になっても帰らず慌てた旦那は開墾地の地区長に相談。

村人みんなで山狩りして捜すことに、、。

雑木林の中の奥深くまで探しました。

と、、

森の奥の未盗掘のおそらくここらで一番大きなちょっと不気味な?古墳のそばにまるでもたれかかるようにしてその嫁さんが死んでるのが発見されたのです。

私の父の話によると、

その顔は恐怖にゆがみ、目が飛び出てたといいます。

死因は、、不明、というかそんな昭和30年の片田舎で病院は遠い町まで

50キロもあるのですよ、

わからずじまいということです、


さらにこんな話もあります。

村の若いお嫁さんが柴刈りに入って、夕方になっても帰らず、

山がりして捜索したこともありました。結局ついに見つかりませんでしたが、、。

それからしばらくして、、山に入った猟師が、山のうんと奥のほうの沢筋で、若い女が突っ伏して目をむいて、死んでるのを見つけました。それがあの若いお嫁さんでしたが。そんな事件?もよくある話だったのです。


さて母は白い影が消えたのを見計らうと、「今日はここまでだね。これ以上ここにいると山奥に連れこまれそうだから」といってそそくさと帰り支度をしました。


あの時もしも母の呪文?がきかなかったら?

私も母も山の精霊に?山奥まで連れ込まれて、取り殺されていたのでしょうか?

今思い出しても背筋が寒くなります。


山は、、森は、、精霊の住まうところであり。

精霊にはもちろん悪霊も含まれますから、

本来人間が踏み込むべきところではないのです。


古来人間が山に入るときは切り火を切り、あるいはみそぎをして、

お守りを持ってはいるのが常識?だったのです。

山はコワイところであり、むやみに入るべきところではない。

もちろん当時ウブな?少年だった私が知る由もなく、

それが分かったのはもっともっと、ずっと後でしたがね、


もっとも、私たち村の少年たちも、あまり深くの先までは雑木林の奥までは入りませんでした。

それは、、、

こんな話を聞いてたからです。


ある少年がある日雑木林の奥までもキノコ採りに入ったそうです。

しばらくするとこのあたりでは見かけない不思議な少年が奥から出てきて「もっとこっちにいいシメジがあるよ」って教えてくれたそうです。で、ついてくとすごいシメジの群落があって取り放題だったそうです。籠がいっぱいになったので「もういいや」っと思ってふと見るとその少年はもういなかったそうです。


ぞくっとして慌てて逃げかえったそうです。その精霊はきっと良い?精霊だったのでしょうね?

連れ込まれて殺されなかったので、、、。



母はよく言ってたものでした。


「いいかい。いくらキノコがほしいからってあんまり森のおくまでいっちゃいけないよ、どんな悪い

物のけが出てくるかもしれないからね」






すべてが懐かしいい


遠い


遠い日の


もう今はどこにもない


そんな消え去ってしまったであろう


私の遠いはるかな思い出です。


もうどこにもない


どこにも存在しない



私の


遠い


遠い


幻のふるさと


そこではすべてが


幻想であり


白昼夢だったのかもしれない。
































付記。小夜物語もとうとう50話まで進捗しました。ここでいったん終わりにするか?

それともこの先、、わたくしの、生命がある限り?続けるのか?

それは、、、おそらく?私の気の向くまま、、ということなのでしょう。







小夜物語の全編を読む方法は、「小説家になろう」サイトのトップページの

「小説検索」で「小夜物語」と入力して検索されれば全話が検索結果として列挙されますので

全編を読むことができます。






この物語はあくまでもフィクションであり、現実に存在する一切とは全く無関係です。

私が創造した、完全なるフィクションです。











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