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2. ヤンキー召還


「あぁ?」


じっと睨みつけるようにこちらを見るかつてのクラスメイト。


「御堂くん…。っ!ごめんなさいっ、ごめんなさい!」


まず出たのは謝罪の言葉だった。ど、どうしよう…魔法陣は失敗したんだ…!勇者でないと世界の崩壊は免れないのだ。それなのに金髪の勇者じゃなく、関係のない御堂くんを呼び出してしまった。どうしよう…結びついてしまったのだ。先生が伝説の勇者を語ってくれた時に…勇者様は金髪だと教えられた時に!かつてのクラスメイト御堂くんが、それはそれは鮮やかな金髪だったから先生にその話をした事がある…『イメージと魔法は切っても切れない関係なので魔法とはイメージ次第です。』そう言われた言葉が頭の中に響く。…どうしよう。どこかの頭隅にいた金髪の御堂くんと金髪の勇者様がきっと結びついてしまったんだ。


あぁ、どうしよう…取り返しの無い事をしてしまった…


その場に座り込んで、泣きながら謝った。謝って許される事では無い。彼は勝手に異世界に連れて来られて…その異世界はもうすぐ崩壊する運命にある。


「お前…水森か…?」


台座から降りてきた御堂くんに、まじまじと顔を覗き込まれた。


コクリと頷くと御堂くんはため息をついてポツリといった。


「こんなとこに居たのかよ…」


「えっ?」


そう思った瞬間に、急に二の腕を後ろへと引かれた。


「きゃっ!」


「神巫女…!貴様、失敗したのかっ⁉︎ふざけるな…勇者でなく、悪魔など呼び出しおって…!」


「いっ…痛い…ちょっと、やめて下さい!」


「おいっ、ハゲっ!てめぇ…なにしてんだよ!」


私の腕を掴んだままのハゲル…違ったユゲル大臣の腕を御堂くんがさらに掴んだ。


「ぐわぁああああっ!触るな、悪魔がぁぁあ!」


鬼の形相でユゲル大臣は私から離れ、御堂くんの腕を振りほどいて後退した。そして大臣の右手からは赤く燃える炎が揺らめきだした。


「おぉ、魔法とか異世界らしいな。」


御堂くんは怯むどころか感心して拍手を大臣に送っている。


「そうだよね。私も初めて見たときは…って違ぁあう!」


揺らめく炎が大臣の手から離れてこちらへと向けられる。


「ん?やべーのか?」


「ユ、ユゲル大臣っ!止めて下さいっ!」


仮にも神巫女である自分の声も届かないのか炎は勢いを増してこちらへ飛んでくる。


こういう時に自分が相殺魔法を使えたら…水の魔法を使えたら…そんな事をとっさに考えても自分には魔力を増幅させる事しかできない。


「御堂くん避けてっ!」


「アクアウォール!」


そう投げかけた言葉に重なって、耳に馴染んだ声で水魔法が詠唱された。


私と御堂くんの目の前に水の壁が作られて炎が水蒸気となって消えた。


「ウォーカー先生!…よかったぁ。」


ペタリと冷たいタイルの床に座り込んだ。見つめる先には、異世界に飛ばされ何も分からない私にこの世界の事を教えてくれた人、エリオット=ウォーカーがいた。


「ユゲル殿。神巫女に向かって…一体どういうつもりですか。」


「悪魔がっ、悪魔が出おったのだ!」


「悪魔…?」


御堂くんに視線を向けたウォーカー先生の前に出て慌てて否定する。


「ち、違いますっ!彼は悪魔なんかじゃありません。私が…私が勇者様と間違えて召還してしまった…人です。」


元クラスメイト、同級生、知り合い、同じ世界の人…説明するには何だかややこしくなりそうな気がして省いた。


「…事情は後でゆっくり聞きます。くるみ、疲れたでしょうから今日はもう部屋で休んでください。」


「あっ、でも…」


御堂くんに目を向けると、ウォーカー先生が宥めるような口調で言った。


「大丈夫ですよ。彼に危害を加えるつもりはありません。危険がないとわかり次第あなたの元へ連れて行きますから。」


「…はい。」


先生になら任せられる。そう信じて自室へとむかった。


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