2:残念な一例
これはレビューだけに留まらず、感想にも言えることなのだが、なろうを徘徊していて僕個人が特に残念に思うレビューの類は以下のようなものだ。
1、「この作品は本格的な●●(ジャンル名)である」
2、「引き込まれる魅力がある」
3、「読みごたえがあって……」
4、「普通に面白い」
1はそれそのものは悪くないのだが、どういったところで本格的かを記載して欲しい。そもそも本格的とはどこからの基準なのか。
例えばファンタジーのジャンルなら、ファンタジーとは何かを踏まえた上で書くべきだ。
「泡を噴く山、煮え立つ溶岩の外海なんて見たことがない! 現実にはない世界観だが、しっかりと練り込まれており、目に浮かぶように表現が多彩。まさに本格的な幻想世界。理想のファンタジーと言えよう」
2は何に引き込まれるのか。万人がそう思うのだろうか?
それを表現するなら、まずは説得力、理由が必要だ。
「出生の秘密を知ったXXが、両親の仇であり育ての父でもある敵国の王を討ち取るため、恋人や祖国を裏切り、再度王子として振る舞う姿に、心を痛めながらも本心ではないと信じて見守るヒロイン。その姿は、誰しもが共感させられることだろう」(これはドラマ「●雕英雄伝・新版」のキャラを一例にしてみた)
……と、一例を書いたものの、これだと少々ネタバレ感が強い。
やっておいてなんだが、最低限、レビューでは大きなネタバレは行わないものだ。
実際はもう少し概要――一言でこの作品を言い表せるような部分で感想を述べると分かりやすいはずだ。
3も同様によく見られる「読みごたえ」という表現。これも主観に使う表現だと思う。
そもそも「なろう」では、少ない文字数の小説が多く、ちょっとした文字数でも「読みごたえ」があるように思われる。長編と称して実際には短編ぐらいしかないものでも、だ。
中には文字数が数十万を平気で突破する作品もあるが、実際には文庫一冊分で完結している作品もある。
それを単純に「読みごたえがある」と表現するのは、人によっては「そうは思わない」と感じることだろう。
ネット小説や改行の多いライトノベルが当たり前の人は、10万字でも多いと感じるだろうし、コアなSF小説や難しい本を読み漁っている読者は少ないと感じるかもしれない。その差である。
ちなみに、毎度4000~6000文字を書く自分としては、3万文字、多くて5万文字ぐらいまでは短編だと思うタイプである。
4は完全に主観だ。レビューサイトで「面白い」という表現を使っているものもあるが、それにはきちんとした理由が記載されている。
というか、そもそも「普通に」「面白い」の二つのワードが結びつかない。普通とはどういう基準でどの程度?
「TSモノと見せかけて、実は性的特徴が逆転した異世界からやって来たのに記憶を無くしていた、という発想が面白い」
極端な一例だが、これなら、なるほど、と思わされるのではないだろうか。