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伝説の竜騎士の後継者  作者: sold out
第二章
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歩き出した者(中編)

《AILIS SIDE》



今日私はひとりの少女の護衛をすることになっていた。

その少女は自のことをフレイと呼んで欲しいと言っていた。私は断る理由もなかったのでそれを受け入れそう呼ぶことにした。


「フレイ。君は今日この街で一体何を何をするつもりなんだい?ギルドに依頼するくらいなんだからきっとお金のある名家に違いないんだろうが、君の一挙一動にはどこか品格を感じる……。一体君は何者なんだ?」その問いかけに対し、フレイは口を固く閉ざす。

まぁ私としても依頼人が嫌がるようなことは一切したくないのだが、この少女がいったい何者なのかくらいは知っておきたいと思ったのだが、少女が口を閉ざすのならば仕方ない。


「……じゃあ、街を歩きましょうか。今日の私の仕事はあなたの護衛。それ以上でもそれ以下でもなかったわね」そういい、少女がどのような動きをするのか観察してみる。

私は小さい頃から裏切られてばかりだったのでその人物をある程度観察していると、どのような気持ちなのか、どんなことを考えているのか大体想像がつくようになっていた。ある種の特殊技能のように。



私が少女を観察していると、やはり少女からはそのへんの貴族よりも高貴な品格が感じ取れた。

私の勘違いと言われればそこまでなのだが観察を長時間しているほど、よりそうなのではないかという疑問に陥ってしまう。

すると、不意に少女に呼ばれる。


「…すみません。私はあまりこの街のことを知らないので、できれば自分がおすすめする場所に案内して頂けないでしょうか?」あまりにも突拍子もない言葉だったので、私は暫く固まってしまった。


しかし、少女は私から目線を逸らすことなくじっと私の方を見つめる。

そのとても澄んだ瞳を見ていると、どうしてかわからなかったが小さい頃の私を見ているようだった。


友に、親に捨てられる前の自分を見ているようなそんな気分だった。

井の中の蛙。そんな感じだろう。その瞳には他人を惹きつける何かがあるのではないかと思ってしまうような、そんな綺麗な瞳がそこにはあった。


「…いいわ。ただし、自分の中でこんな場所に行きたいと言う要望くらいは言ってください」その言葉に満足したのか、少女は首を何回も縦に振る。それこそ首が取れてしまうのではないかと疑ってしまうほどに。




《FLAY SIDE》




私は城を抜け出すと決めてからは行動が早かった。

アイナに懇願してなんとかギルドの依頼ボードに貼ってきてもらうことができた。

そこまでは良かったのだが、問題はここからだった。

一体どうやってこの城から抜け出すか。これが今回の一番の難関になると私は思っていた。

そのことをアイナに相談すると、彼女は額に手を当てて溜息を吐きつつ仕方ないと言った表情で作戦の説明をしてくれる。


私はアイナのこういったところが気に入っているのだ。なんだかんだ言って私のわがままを素直に聞いてくれる。そのことが私は無性に嬉しかった。


「私が考えたフレイ様の脱出計画はこうなります」開口一番、アイナは脱出と言った。その言い方には多少問題があるのではともった私だったが、そこは気にせずアイナに話しの続きを急かせる。


「…それでは説明いたします。まず行うことはメイド服を手に入れることです。ここでの問題はフレイ様のサイズに合うものがあるかどうかですが、ちょうど良いことにフレイ様と私のサイズはほとんど変わりがないので問題はありません。その次は抜け出し方ですが、フレイ様は私とともに市場への買い物についてきてもらいます。私とともに行動することで多少の不安要素を消すことにもつながるので、私としてはこれだけで問題はありません。……しかし、フレイ様もお年頃の女です。やはり、外に出るに当たりメイド服では些か恥ずかしいと思うので、私の私服をお貸し致します。…あまり汚さないでくださいよ。高かったんですから…」それだけ言うと満足したように肩を撫で下ろす。


私は期待に胸をふくらませ今日一日を笑顔で過ごす。

…このことを父親に知られているとも知らず。


そしていよいよ城を抜け出す日がやってきた。

私としては抜け出すが正しいのだが、アイナからしてみれば脱出らしい。私とアイナの感覚の違いがここに来て露わになったというところか。

そんなことより、私は今ついに作戦を結構しようと思った矢先のこと。

唐突に私の部屋の扉をノックする音が聞こえる。それにたして私はアイナだと思い、軽く返事をすると扉が開かれる。

そしてそこに立っていたのは意外な人物だった。


「…フレイ。今からどこに行くつもりだ?」重みのある声の主は私の父親…。

そう。現国王にして私の父親ロクサス・フェン・オルザルム。この皇国オルザルムのトップだ。


「ど、どうしたんですかお父様?…私はどこにも行きませんよ?」はははと乾いた笑いを浮かべるフレイに対してロクサスは無言のまま睨みを効かせる。

その光景の恐ろしさたるや。威圧だけでここまで人を黙らせることができるのか。というほどの重圧(プレッシャー)


「うむ。…悪いとは思ったが昨夜アイナと密談しているのを聞いてしまったのだ。…街に降りるそうだな。そのことに関して儂は悪いとは思わん。だが…父である儂にも秘密というのは些か問題があるのではないか?………どうしても降りたいのだな?」軽いため息混じりにロクサスは優しい声でフレイに尋ねる。

それにたいしてのフレイの答えは首を縦に振るだけ。父親のことを怖がってなのか、単に話したくないだけなのか分からないが。


「はぁぁ…仕方ない。可愛い愛娘の頼みだ。断るわけにもいかない。……しかしだなぁフレイよ、お前一人で行動するのか?」首を横に振り、ついに口を開く。


「………アイナに頼んでギルドの依頼ボードに貼ってきてもらったの。そしたらね…依頼を受けてくれた人がいたの。ギルドの人が気を効かせてくれて写真を渡してくれたの。…確かここにあったはず。……あったわ。この人よ」ロクサスにその写真を手渡しする。するとロクサスは顔を顰める。

理由は写真に写っている人が女の人だからだろう。見る限りでは細身で綺麗な人である。

きっと父はこんな人が私のことを守ることができるのかと疑問に思っているのだろう。

しかし、どこの誰かもわからない男の人よりだったらこの人がいいと私はいいと思っていた。


「…こんな人物とフレイは行動しようと思っていたのか?だとしたら儂はがっかりだ」先ほどよりも深い溜息を吐くと写真を私に渡す。


「…だがしかし、受けた人にも悪気があるわけではないだろう。…こうしないか?フレイお前が街に降りる代わりに護衛として十二騎士団の一人を尾行兼護衛役として付ける。…この条件が飲めないようであればお前を街に出すわけにはいかない」その言葉はフレイにとってまったくもって悪い条件ではなかった。護衛が一人から二人に増えたのだから安全に違いない。そう思ってフレイはとびきりの笑顔で「うん!」と答える。


こうしてフレイは堂々と城から出ることができた。

このあとに待ち構える苦難に自ら飛び込むかの如く。



《AILIS SIDE》




私と多少無口な少女が街を歩き始めてから、数刻が経過しようとしていた。

少女は街にありふれている物を「あれは何?」「これは何?」と何も知らない赤子のように道行くものを、いたるところに溢れているもの質問してくる。


そんな少女に私はどこか妹いたのならきっと姉はこんな気持ちなのだろうなと、思わず笑みが溢れてしまう。

その中で一番少女が驚いていたものはこの街なら大抵のものが食べたことがあるだろうフライドッグを食べた時だった。

これは揚げた肉などをそのままパンに挟めただけという簡単なものなのだが、店によってそれぞれ味が違うのだ。濃い味の店もあれば、薄味の店もある。

様々あるから面白い。私はそう思っている。この少女は水を吸い込む前のスポンジのようになんでも吸収してしまう。それが私にはとても不思議で面白かった。


「アイリスさん!私…街にきたことはありませんでしたが、こんなにも楽しくていい場所だとは全然知りませんでした。とても楽しいです!……もし、またギルドに依頼したアイリスさんが受けてくれますか?」少女は何かに縋るようなそんな目で私を見つめてくる。

その瞳は最初あった時から何も変わっておらず、とても綺麗で濁りなど一切ない。気圧された。というわけではないが、少女はどこか私と似た空気をしていたので断ることもできなかった。


「あぁ…もしまた依頼したくなったら私を名指しで依頼してくれればいつでも受けよう」私があまり慣れていない笑顔でそう答えると少女は今日一番の笑顔で「はい!」とだけ答える。その様子をみて私の顔にもついつい笑みが溢れる。




《FLAY SIDE》




今日は私にとって最高の一日になったに違いない。

だって初めてお父様が私を街に出ることを許してくれたし、依頼を受けてくれたアイリスさんはとても綺麗で優しいし、護衛役のウォーテラさんも一切口を出すことなく順調にことが進んでいるのだから。

こんな日が最高の一日と言わずに一体どんな日だっていうのかしら。


さりげなく隣で歩いているアイリスさんをみると、とても凛々しい顔で堂々と街中を歩いている。

そんな彼女を見ていると私はとてもかっこいいと思ってしまう。

同性なのに…。なんてね!アイリスさんは同性の人が見ても綺麗だしかっこいい。

確かアイナが言ってたなぁ。こういう人のことを多分エロカッコイイって言うんだよね!


ずっと彼女を眺めていると、「どうかしたのか?私の顔に何かついているのか?」と自分の顔をペタペタと触り始める。きっと彼女は天然さんなのだろう。

そんなことを考えていると不意にアイリスさんに話しかけられる。


「最初からなのだが、言おうかどうか迷っていたがやはり気になるのであえて言わせてもらうが…誰かつけてきてるぞ?大丈夫なのか?もし怖いというのなら今すぐに叩き潰してくるが」至極当然と言った表情でそんなことをいうものだから面白くて思わず笑ってしまう。


「……一体何が面白いというのだ?それでどうする?本当に叩き潰してこようか?」すると突然踵を返して歩いていこうとする。私は危ないと思い、アイリスを止める。


「だ、大丈夫ですよ。心配しなくても平気です。き、きっとアイリスさんの勘違いなんじゃないんですか?」そうか?といい、再び私の隣に並ぶ。


「…そろそろ時間も頃合だ。次で回るのは最後にしようと思うのだが、最後はどこに回ってみたい?」その言葉はそろそろ来るだろうと思ってはいたが、実際面と向かって言われるとこんなにも悲しいものなのかと実感させられる。

そこで私はふと、伝承で読んだ場所を思い出す。

その伝承はひとりの男子が白い竜を従え世界を救うと言う在り来りな話なのだが、この話しはただの伝承でもなければ作られた逸話でもない。

この話しはれっきとした事実だったらしい。だから私はその人物が描かれた舞台の一つであり、平和の象徴として一昔前に作られた彫像を見てみたいと思った。


「…白竜の、白竜の伝説の彫像がある場所に。…そこにお願いします。知ってますよね?伝説の竜騎士の物語を…」無言で首を縦に振る様子をみると、アイリスはおそらくそこに向かって歩きだしたのだろう。



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