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伝説の竜騎士の後継者  作者: sold out
第二章
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歩き出した者(前編)

episode2 ~皇国十二騎士団~




《AILIS SIDE》



私は全ての友達と両親を失ってから様々なことをしながら生きながらえてきた。

あるときは物を盗み、またある時は人をも殺した。そして、一番してきたことが魔物狩りだ。


魔物はとても強かった。斬っても斬っても傷一つつかない恐ろしい奴や、分裂し攻撃を加えてくる厄介なものもいた。そして私は13を迎えた頃にギルドに所属することにした。金は一人でいる時よりも手に入りやすくなるし、強いパーティに入ると、より良いものが手に入ることが多かったから。


しかし、ギルドは利点だけではなかった。頭の悪いおっさん達が、私のところに来ては涙を流して帰っていったことも一度や二度ではない。


四年後のそんな私にある日転機といってもいいような出来事があった。それは、クエストの依頼ボードの隅にあったクエストを見た瞬間のことであった。その時私は直ぐに受けようと思った。


選んだ理由は簡単。内容が簡単だったから。大して疲れそうな内容ではなかったから。きっとこれだけの理由だろう。実際、以来の内容を決めるときはいかに金が多いか、いかに仕事内容が簡単であるかの二つで選ぶ人が多いだろう。だから私がこの仕事を選んだのは当然といえば当然のことに違いない。

そして、私の選んだ仕事内容は『護衛』の仕事だった。仕事内容は一日だけ依頼者のことを護衛するだけ。はっきり言って簡単すぎるほど簡単だった。



いよいよ依頼の当日。

私は意気揚々と自分の家から出ると、指定されていた待ち合わせ場所に足を運ぶ。待ち合わせの場所は街の中心であり、数多くの人がその場所を待ち合わせに利用することが多かった。

その日も当然のように何人もの人が待ち合わせをしている様子だった。もちろん私のその一人なのだが。


私がこの場所に来てからどれくらい時間が経過しただろうか。依頼者は一向に現れる気配がない。来ていたとしても私はその依頼者の顔を見てないないので、どのような人物で、どのような仕事をしているのかなど、まったく知らないことが多かった。

しかし依頼者には、ギルドの人が私の顔を写真にして渡しているはずなので、そのへんのことはきっと大丈夫だろう。

そのようなことを考えていると一人の少女が私の肩を軽くたたく。


「あの……すみません。今日一日私の護衛の依頼を受けてくれた方ですか?」私に声をかけてきた少女は煌く金髪の髪を後ろで一つに束ね、瞳は青眼。美しい顔立ちに鈴を鳴らしたような透き通る声をしていた。

年齢は私と同じくらいかそれよりも下。きっとそのくらいだろう。


「えぇ……。あなたは?依頼者?」私のその言葉に首を縦に振り、肯定の意を示す。その動作に私はどこか品があるように感じられた。


「あなたの名前は…確か、アイリス・ベル…さんでしたよね?」私は軽くえぇとだけ返し、逆に名前を尋ねる。


「えぇと……わ、私のことは……フレイと呼んでください」自分の名前を言うまでに多少の時間が空いたことに私はいささかの疑問を覚えたが、そのことに対して私は何も言うことなく、今日の以来の内容を再確認した。


「今日の内容は一日フレイさんを護衛すること。以上でいいですね?」またしても私の言葉に首を縦に振るだけだった。




《FLAY SIDE》




今日は久しぶりに街に降りることができる。それというのも私がとんでもない貴族だから。寧ろ、貴族というよりも王族なんだけどね……。

だから私は普段は王宮の中に閉じ込められているの。だけど、そんな私にもとってもいい知り合いがいた。その人の名前はアイナ。その子は王宮の中でも奥の方にある場所で働いていた。


彼女と私の関係は簡単に言え、ば王女様と従者といった感じ。でも、その子はよく働くし、周りのあらゆることに気がつくので、だんだんと昇進して今では私のお墨付きとなって、今は次女として私の身の回りのことを支えてくれている大切な存在だ。


でも、その子は若くして昇進し、今では私の一番の側近として働いているので、昔から私のことを知っている人間からしてみれば、それは大層気に入らない事だらけなのだろう。そのせいで彼女ははじめのうちは陰湿ないじめににもあっていたらしい。


そのことを私はごく最近まで全く知らなかった。きっと私が気づいてくれると彼女は信じていたに違いない。そう思うと、私はとても悼まれない気持ちになってくる。

しかし、そのことを知った私は何とかして彼女を助けてあげたいと思い、アイナの次に信頼しているお爺に相談することにした。


「お爺。どうすればあの子を…アイナを助けてやれると思う?」その言葉にお爺は少し考え込むような動作を加えながら、静かに言葉を吐き出す。


「この爺から言わせていただけば、アイナにはなんの手助けもしてやらないのがよろしいかと思います。理由は……そうですね、アイナのためにならないから。とでも言っておきましょうか」私はその言葉に強い棘を感じ、そして、お爺の言葉の真意を理解しようと試みたが、結局私には答えを得ることは出来なかった。


数日考えこんだがやはり答えを得ることは出来なかった。いや、答えを得るどころか、考え込みすぎてみんなに心配をさせてしまった。

やはり私はだめな人間なのだろうか?

そう自問自答してみたが、そのことに対しても答えを得ることは出来ない。

どうしてだろうか……知識が少ないから?まだまだ世間のことを何も知らない子供だから?私がダメな人間だから?そう言ったマイナスの思考ばかりが増えていく。

そんなある日、私にお爺が話しかけてきた。


「フレイ様。この前爺が行った言葉を覚えていらっしゃいますか?」その言葉に私は肯定の意を示すために首を縦に振る。そのことに多少なりとも満足したのか、お爺は嬉しそうな顔をしながら次の質問をして来る。


「では、フレイ様のお答えを聞かせてもらえないでしょうか?」そう言われた途端に私はうつむいてしまう。だってわからないから。いくら考えたって一向に答えなんか出やしないし、答えの緒が見える様子もなかったから。だから私はその言葉に対して首を横に振り、小声で一言「わからない」とつぶやく。

するとお爺は笑いながらそうですかと流してしまう。


「フレイ様に爺が仰った意味が理解できるようになりましたら、フレイ様は一人前の大人ということになります。ですので、まだわからなくて結構です。…ですが、この言葉の答えを出すのには少々時間がかかりすぎるかと思います。ですので爺が一つ昔話をして差し上げましょう。これで答えがわかればそれこそ僥倖です」すると、お爺は上を見ながら小さな声でと話し出す。


「あれはまだ爺が王族側近の近衛騎士団に入ったばかりのことでした。ある日突然、ひとつの不幸が降りかかってきました。それは……いじめでした。私は若いながらも、近衛騎士団の末席に加えていただ来ました。その時はもちろん嬉しくて何もかもが輝いて見えました。そして一ヶ月ほど経過したある日、爺は同僚に呼ばれてとある酒場に行きました。きっとみんなが内緒でささやかに祝ってくれるのだと思い浮かれた気分で約束の酒場へと急いで行きました。しかし、そこで待っていた出来事は……」そこまで言うととても悲しそうな顔をしながら言葉を続ける。


「そこで待っていた出来事は、爺に嫉妬する同僚たちでした。同僚たちの顔は憎しみで歪んでおり、とてもではないですが正気を保った人間がいるとは思えませんでした」そこまでの話しを聞いていると私はふとしたことを思い浮かべる。


……これってアイナと同じ状況では?若くして昇進。そして周りの人間に嫉妬される……全くアイナと同じじゃない!!


「そして爺はその者たちの不意打ちに合い怪我をしてしまいました。その結果私は二週間ほど近衛騎士団に顔を出すことができませんでした。…しかし、それよりも悲しかったのが、私がほかの同僚よりも早く昇進してしまったがためにみんなの恨みを買い、そして……恨みのあまり騎士団自体にいることさえやめてしまった者がいた事です。…彼らはまだまだ将来有望な若者ばかりでした。それゆえに彼らがやめてしまったことは、爺を何度も何度も悔やみました。自分が悪い。ずっとそう思っていました。……ですが、近衛騎士団に在籍してから五、六年ほど経過した頃でしょうか。突然私の家に見知った顔の来訪者が訪れました。そのものはかつての私の同僚でした」するとお爺は先程までとは打って変わって表情がゆるくなり、嬉しそうな顔を浮かべながら話しを続ける。


「その同僚は爺の家に入るなり膝をついて頭を下げてきました。あまりにも突然のことで何がなんだかわかりませんでした。そこで爺は話しを聞いてみると、五、六年前のことを謝りたいとのことでした。その言葉を聞いた途端に爺は嘘をついているのではないかと内心思っていました。しかし、そのものは嘘をつくどころか、誠心誠意爺に謝り、挙句には爺を傷つけたことを悔やんでいるから殴ってくれとまで……。その瞬間爺はなぜだかわかりませんが泣いていました。今になってわかるようになってきました。その時の涙はきっと嬉し涙だったのでしょう。それ以来というもの、同僚とも再び仲良くなり、今では時々酒を共に飲むほどです」そこまで話すとお爺はこちらの方を黙って見つめる。

きっと答えを求めているのだろう。


…お爺が言いたかったのはきっとこうだと思う。

いじめられても、傷つけられても、きっと誰かが自分のことを認めてくれると。真の友とは互いの過ちを認め合うことのできる者たちのことを言うんだと。

そこで私はお爺の目を見ながらゆっくりとしゃべりだす。


「……アイナのためにならないって言っていたのは、自分で乗り越えて欲しいから?それとも、お爺のような人が現れると思ってるから?」その言葉に多少は満足したのか笑顔で頷き、無言で踵を返して部屋から出ていこうとする。


「…フレイ様が真の友だと思ってかるからです」それだけ言い残し部屋から出ていく。私はその後ろ姿をただ見つめることしかできなかった。それはきっとお爺がすごい大人だと思ってしまったからに違いない。





《FLAY SIDE》



それから数日が経ち、私はアイナに秘密のお願いをした。

その内容はギルドに依頼を出してくることだった。依頼の内容というのは一日だけの私の警護。ただそれだけだった。しかし、アイナはそれに対して反対していた。

彼女の言い分はこうだ。


「フレイ様にもし何か起こった場合、私は死を持って皆様に詫びなくてはいけなくなるので反対させていただきます」とのことだった。事実論からすればそうだが、やはり私は城の外というものを一度見てみたかったのだ。


城の外には、私の知らない様々なことがたくさんあるのだという。いつも私は従者のみんなの話の内容をただただ聞くだけ。

だけど、もう私も16歳。そろそろ外の世界に飛び出してもいい頃だと思う。

なのにも関わらず、私の周りの人間はみんなしてそれを断固として拒否する。そのことに対して私はとても不快感を感じる。正直私はどうしてみんながそこまで私を束縛しようとするのか疑問だった。


だから私は外の世界をこの肌で感じるためにもこの牢獄のようなお城から飛び出して自分の見識を深めたいと思う。


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