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太陽の光  作者: カオス君
7/8

日食の光 一

日食の光、暗やみのなかあるはずもない光、その色は金剛石のようにきれいに輝く。


姉さんが死んでから三日後である今。

今日は日食。

ふと日を見てみると面積の半分以上が月に隠れてた。

僕は今、あの岬に向かってる。

まだ昼ごろなのに薄暗い風景。

この光景を絵にしてみたいと思うが今はそんな余裕はない。

今はただあの岬に行きたかった。

駅をよこぎり、川にかかる橋を渡り、商店街の前を通り、あの岬にきた。


あの岬にくると完全に日が月に隠れまわりからダイアモンドリングを描いていた。

そんな暗やみのなか、僕はベンチに座っていた。

時間が停止したような気がした。

いつのまにか海に向かって歩きだしていた。

海からここまで約五十メートル。

落ちたら即死か大怪我どちらにしろ無事じゃすまない。

その海にゆっくりと身を乗り出した。

風が僕を押し戻そうとするがそんなのお構いなしに死へと身を乗り出した。

すると

「ダメー。」

と、一人の女性の声がする。

足音がしだいに早くなりやがて僕の体を後ろにひっぱった。

後ろに倒れる僕と女性。

その女性の髪を見てすぐにヒサエだとわかった。

この暗やみのなかでもなお白い光を放っていた。

その光は薄く、やわらかく光って今にも消えそうだが、やさしく、そしてどこか力強く光っているのがわかる。

そしてそのヒサエの顔からは怒りの表情が出ていた。

「ユウヤが死んだら私はどうすればいいの?私のことを頼まれたんでしょ、山口先生に。」

「知っていたのか。」

「うん。」

「悪かった。勝手に死のうなんて。」

「カズミさんでしょ。三日前に亡くなった。確かにそれで死にたくなるのはわかる。けど、私のことは忘れないで。」

「うん。」

日が出てきた。

日食に終わりが近づく。

ふたたび戻ってきた日の光によってヒサエの白い髪が一段ときれいに光った。


一月、姉さんのいない初詣を終わらせた頃、ヒサエが旅行に行こうと提案した。

医者の仕事に休みは無いに等しいが、院長が特別に一月三日から一月十日の一週間だけ休みをくれた。

どこに行くかは決まってない。

おそらく道路を車で走るだけになるかもしれない。

でも、貴重な休みの日。

どこかには行きたい。

どうせいくなら東京より向こうに行きたい。

なるべく早く。

薄々感付いている、僕の中の異変に。

姉さんが刺されたときに、コウのことを忘れかけた。

ヒサエのことも、他の友人のことも。

永遠の暗やみが少しづつ近づいてくるのを。


一週間がたった。

車にヒサエをのせさっそく出発することにした。

「どこにいく?」

「新潟の佐渡島なんていいんじゃん。」

「さっそく遠い場所がでたな。」

「いいじゃん、行こうよ。」

「そうだな。」

そう言うと僕は車を出した。

財布を見る。

中には壱万円札が八枚、佐渡島に行くには十分のお金が入っていた。

車はハイブリッドなのでガソリン代はかからない。

宿はとるのがめんどいから車で寝泊りする。

そんなわけで僕とヒサエは佐渡島に向かった。

ここは鳥取。佐渡島は新潟。その間には富山や長崎などの県がある。

道は地図を見ればわかるがよくわかってない。

もしかすると道に迷う可能性もある。

「そうだ、これに入ってる曲、流していい?」

と、ヒサエは一枚のMDを見せた。

「別にいいけど。」

「ありがと。」

と、言い車にあるMDプレイヤーに入れた。

洋楽だった。

「誰の曲?」

「クイーンだよ。ボーカルはフレディー・マーキュリー。私の一番尊敬する人だよ。」

「たしかあの人はエイズにかかっていたにもかかわらず、いい歌声で人々を圧倒させたよね。」

「そうだよ。私はフレディーの歌声を尊敬している。その歌声をめざしていた、あのメッセージシングを私も歌えるようになりたかった。」

メッセージシング?

歌声だよな、たぶん。

「今度、聞かせてくれよヒサエの歌。」

「うん、何なら今歌ってあげようか?」

「そうだな。歌ってくれよ。」

「じゃあ歌うよ。曲は私が作曲した『光』。」

大きく深呼吸し歌いだすヒサエ。


朝起きて 見上げたこの空

冷たい眼差し きみの瞳

なくしたと思ってた

夜空の星


鏡に映る 白い髪

流れる 風

岬にのぼりし この光

朝にも 夜にも

輝きし 日の光


見上げて この空を

見下ろして その海を

不思議な出会い

似ている思い

悲しみを 癒しあい

沢山のことを学ぼう

雲の向こうへ


二人は出会い

そして離れ

僕達は 何に出会う

いなくなる恐怖

目を逸らし

ただ君にあいたい


ヒサエが歌ったその曲はまるで僕とヒサエのことを歌っているようだった。

その歌声を聞き何となくだけどメッセージシングの意味がわかったような気がする。

天気は晴れ、流れる雲を見ると鱗雲を思い出す。

コウとはじめてあったときに空に浮かんでいた雲だ。

結局、その三日後に雨が降った。

今はその雲はない。

今はその雲はあってほしくない。

そんなことを思いながら二人を乗せた車は高速道路を走っている。

佐渡島に早くついてほしい気もするが、まだつかないでほしい気もする。

いったいこの否定の気持ちはなんだろう。


鳥取から出発してから三時間たつ。

現在十一時。

この時間になるとまれにお腹を空かす人がいる、ヒサエもその一人だ。

「ユウヤー、お腹空いたー。」

「少し我慢しろよ、もうすぐパーキングエリアにつくから。」

うそだっだ。パーキングエリアまで三キロ以上ある。そう思ってた。

「あっ、そこ左。」

「え?」

パーキングエリアがあったがあっさりスルーしてしまった。

「ううー、ゴハンー。」

少し涙目になったヒサエ。

「仕方ない、ほら僕の左手の指を食べていいから。」

と、冗談半分に言うと。

カプっ

ヒサエは本当に噛み付いた。

噛む力には力が無かった。

ただ加えているだけと言ったほうがいいのかもしれない。

これでヒサエが次のパーキングエリアまでもってくれればいい。


二十分ほどたちやっとパーキングエリアについた。

「おいヒサエ、いい加減指をはなしてくれないか?」

「うん。」

ヒサエが指をはなし、そして僕達は食堂に向かった。

「ヒサエは何食べたい?」

「えーっとね、みそラーメン。」

「みそラーメンね。」

五分くらいたちみそラーメンがきた。

「わーいわーい、みそラーメンだ。」

「なんかヒサエって二十歳すぎてからなんか明るくなったよな。八年前とは大違いだ。」

「そうだね。でもそれはユウヤのおかげだよ。十五のときからずっと世話してくれたから。」

「そうだよな僕達、出会って十年くらいたつんだよな。」

「そうだよね。・・・ってまさか変なこと考えてない?」

「いや、そんなことないよ。」

だっておまえエイズにかかっているだろなんて言ったら悲しむだろうな。

そうだよな、親からの遺伝だもんな。

「あ、このラーメン、うちの近くの商店街のラーメンと同じ味だ。」

「近くの商店街?そんなのあったっけ?」

「あったよ。しっかりしてよ。」

「ああ、コウと一緒に行ったあの商店街ね。」

「そうだよ。さっ、早くいこ。」

何かが変だ。記憶がとぎれとぎれ消えていく。

なんなんだ、この感じ。


新潟についた頃、高速道路を出、道に迷いながらもなんとか佐渡島行きの船にのることができた。

その船で・・・・・・

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