友隠しエラー
壱の壱
僕らの村こと鬼ノ原村は緑が美しく、空気が美味いそして……何も無い!
そう、本当にこの村は何も無いのだよワトソン君。
あるものといえば畑と……畑だよな!
そんな村でも僕の産まれた村。何も無いけど無いからこそ見つけられる物も沢山ある。
見つけられる物は何かって?決まってるだろ!友情・努力・勝利だよ!
まぁ~何に努力して何に勝つかなんて知らんけどな。
そんな小さな村で起こった集団失踪……それは良い方にも悪い方にも僕らを転ばせ迷わせた。
壱の弐
7月も半ば暑苦しく目覚めるとそこは……普通に自分の家だった。まぁ~当たり前なんだろうけど。
「真央おきなさい!真央!遅刻するよ!」
必死に母さんが起こしている。起きているのに気付いていないのか。
おはようと目覚めていることをアピールし時計が無い僕の部屋を見回し母さんに聞く
「今何時?」
「8時10分。」
「え!ちょまじ!?まじ遅刻スンじゃん。なんで起こしてくれなかったの!」
家から歩いて徒歩15分、そして8時10分には完全登校となっているこの村唯一の中学校、鬼ノ原中学は遅刻者にかなり厳しい。ヤバいヤバい遅刻するう~ん……まぁ~いいやなんとかなるさ!
う~んでも言い訳ぐらい考えとこ。
「母さんもう行くからね遅刻したら殺すよ(笑)」
なんか物騒な言葉が聞こえた。呼びとめようと振り返るがもういない。あ~あ遅行できね~ジャン!
でも確実に遅刻する。ここは……諦めるか。だって諦めるのも才能だと言いますしね。
えっこらせとベットから立ち上がり服を着替え一階の洗面所に向かう。歯磨きして鏡の中の自分を観察する。
う~んどっからみても平凡な顔だなまぁ~母親譲りで目は大きいけど口は父親似で小さいな。顔の形は隔世遺伝って奴?祖母に似て少し丸いがスラリとしている。眉は誰に似たのだろう?すこし釣り上がっていて初対面の人からみたら怒ってるように見えるかもな。でもこの村を出ない限り初対面の人とは出会うこともないと思うが……。体格は鏡を見ないでもわかる中肉中背。
まぁ~この顔の原型はほぼ母さんだから小さい頃から母さんとは似てると言われていたもんな。
おっとヤバい何見慣れている自分の顔に魅入ってるんだ。
朝食を食べるためキッチンに向かうが……何も無い。母さん何も作ってないじゃん。
キッチンの時計は、8時17分を示している。もう完全遅刻だな。
……全然、先生とか怖くないよマジで本当に怖くないし本当だってマジで、マジだってば……誰を説得しているんだろう。まぁ~自分自身なんだけど。
こうやって自分自身を説得するのってなんの意味も無いことだと分かっているがついついやってしまう。
自分自身を説得して何を期待しているのやら。
「はぁ~マジでやばいな。」
独り言を呟き前日玄関に用意しておいた鞄を持ち玉泉家をでる。遅刻すると分かっているので走らない。ていうかもう遅刻しているので諦めている。
「マジでどうなるんだろう……」
また道路で独り言を呟く。今日はなんでこんなに晴れているのだろう本当に暑い。
壱の参
結果当たり前のように遅刻したが……怒られなかった。恐る恐る門をくぐり教室に向かうまで教師とは合わず教室もざわついており教師は、不在だった。
この時間は、去年から実施された朝読書をしているため本来静かな筈だが。
後ろの扉から20数名あたり人がいる2年1組の様子を確認し堂々と教室に入る。そして鞄棚に自分の鞄を押しこみ必要な教材を取り出し席に着く。
あまりにも騒がしく読書に集中できないので、僕の後ろの席の男子浜崎亮こと浜亮に話しかけ、なんでこんなに騒がしいのか尋ねてみる。
「浜亮なんで朝からこんなに騒がしんだ?」
「先生が朝読書の時間と一時間目を自習にするって黒板に書いてそれ以来戻ってこないからだよ。多分職員会議でもしてるんじゃないかな。てか学校くるの遅かったね、おはよう。」
細い目付きの悪い目でこちらを見て説明をしてくれる。
この目は傍からみれば年柄年中キレてるように見えるが別にキレてるわけじゃない。
産まれつきなのだ。この目の性でいろいろ大変な目に合ったようだが今じゃそんな様子微塵も感じ無い。
体格は僕より少し背が高く中肉中背ってかんじかな。浜亮は、外見が怖いだけで実際中見はイイヤツなんだ。
「あ~おはよう。ここんとこ職員会議とか自習多いよな。」
「そうだね。これだけの人が居なくなって、この学校の生徒も何人か居なくなってるみたいだしね。警察も動いてるみたいだけど。居なくなった人……いや集団失踪した人たちの手がかりはほとんど掴めてないからね。掴めている手がかりと言えば集団失踪した人たちは、皆失踪する何日か前に特徴的な傷を負ってるらしんだ。」
そう今この村では、浜亮の話でも分かるとうり集団失踪事件が起きている。
別にこの事件は、今に始まったことじゃない。何年も前から起きている。
でも今年になってから集団失踪事件は、頻繁に多発している。
僕の父さんも今年になってから失踪した人の一人だ。今は7月、父さんは1月に失踪した。何の前触れもなく、いずれ帰ってくるだろうと思いその時は失踪だともおもわなかった。何日も帰って来なく。警察に捜索願いをだすも結局見つからなかった。
浜亮の話を聞いてるとそんな記憶が頭を過ぎった。あんまり仲は良くなかったが誕生日だけは普段遅い仕事を早く切り上げて帰ってくる人だったなと思う。
もう父さんが居なくなってから半年以上たったのか……
「真央どうしたの?顔色悪いよ……そういえば真央の父さんも」
「いや別に何でもないんだ……そいえばさっき特徴的な傷があるって行ったな?それってどういう事?」
咄嗟に話題をそらした。あんまり父さんのことは、話したくない。
自分の中では、整理が着いていたはずだったけど……やっぱり整理は、まだ着いていないようだった。
「特徴的な傷っていうのは5本の爪で引っ掻いたような感じの奴が次失踪する人には付いてるらしいよ。でもこの傷、結構痛そうな傷らしいけどその傷を付けられた本人は傷が付いてることに誰かに指摘されないと気付かないらしいよ。」
「傷ね~だったら傷を付けられてる人見かけたら、傷ついてますよって教えた方がいいのか?でも教えたところで何も変らないんじゃ教えた意味ないよな?」
「そんな事聞かれても……傷が付いてる人見つけて24時間監視しとけばなんとかなるんじゃないカナ?
失踪しそうになったら止めればいいし、失踪じゃなくて誘拐とかだったら犯人も分かるし一石二鳥になるから……よって傷が付いてる人をみたら先に誘拐するってことで。」
「おいおいおかしいぞ最後の結論!なんでそうなるんだよ!」
反論をしようと身を乗り出すと朝読書終了のチャイムがなり、それと同時に教師が入ってきた。
そして今日の授業の日程を話し一時間目の自習課題を配り足疾に教室をでていった。
浜亮にさっきの反論をしようと後ろの席を向くがそこには浜亮はいなかった。
いつの間にか教室から出て行った用だ。いつ出て行ったんだと考えるが分かるはずもなく、時間を無駄にするのは趣味じゃないので、少しでも課題を終わらせようとペンを握る。
一問目……え~とうんううんなんか問題の意味が分からないな?なんでかな?あ!わかった!コレが日本語で書かれてるからだ!納得!……って僕日本人じゃん!一人ボケ一人ツッコミ悲しすぎる。
ちょまってマジで分からないんだけど。なんなの覚醒遺伝ってヒーローかヒーロー達のあれか、窮地なると覚醒するってやつか。あ~あれは遺伝だったのか納得だな。うん……隔世遺伝だね。でも言葉だけじゃ隔世遺伝ってかっこいいな。
じゃなくて隔世遺伝ってどういう意味だっけなんか27行目あたりで使った気がするが……。
次の問題に行こう。次の問題に。次の問題。次の問。次の。次。って一つもわかんね~よ今年受験だぜこりゃ、ちょっとどころかかなりやばいよ。ガチで勉強しよ。
壱の四
一時間の自習時間は、浜亮に反論することなんて忘れ教科書とにらめっこ。……まぁ~にらめっこしているだけじゃ時間はどんどん進んでいく。日本人なのに日本語がわからないってなんか悲しいな。
この前まで「僕鎖国してるので英語なんてむりです。」なんて言ったが英語も日本語も理解できないんならお前何人だよインディアンか!ってなるよな。
机に俯せになり下敷きで顔をパタパタと仰ぐ。そして周り見ると僕みたいに勉強してない奴なんて一人も……あれ~おかしいな頭以外に目も悪くなったかな?なんか皆遊んでるように見えるな~。
ないない。しかもあそこで箒片手に乱闘してるのは中原さんじゃないか。髪型は、長いポニーテールそして目は垂れ目スラっとした顔立ちに体もスラっと細いそんな委員長の中原さんが箒片手に鈴木こと変態魔王を殺してるなんて……
「っておい、中原なに箒片手に鈴木こと変態魔王殺そうとしてんだ!」
現実だった。風紀委員長である僕は止めに入る。
「だってこの変態ゴミが学校にいやらしい本もってきてるだもん~だからちょっとばかし血の制裁をな!!」
最初と最後全然口調違うやん。しかも変態魔王こと少し太ってる鈴木は、唯一の長所である近所に住んでる良く飴をくれる優しそうなお兄さんみたいな顔が、動物園にいるうずくまってるパンダみたいな顔になってるやん。
「やめろ中原!トンボだって、オケラだって、ゴキブリだって、変態魔王だって、生きてるんだ!
確かに鈴木が見てる本は、中学生には早過ぎる内容だ。しかも東京青少年健全育成条約に反対運動するため東京まで行った。極めつけにロリコンだ。でもそんな奴でも生きてるんだよ。」
「でもこいつが居るだけで学校の風紀が乱れるんだよ。風紀委員長なのにそんなことも分からないかな。分からないよね~?だってアンタが率先してこの学校の風紀乱してるんだからな!!毎日遅刻遅刻遅刻そして極めつけにインナー白なのにいっつも黒じゃん。こんな時だけでしゃばるな絞めるぞ!」
会話内容からも分かるようにこいつ中見が果てしなく悪い。
「マジでやめろ!それ以上やったら鈴木が死ぬぞおおおおおおおおおお!」
「正義の為に犠牲は必要だ」
「そんなセリフ言う正義の味方はいない。そんなこと言うやつ大抵悪の組織のそこそこ偉いやつだ」
「悪ってなんだろう……」
「知るか!この場面でいうならお前が悪だ!」
唐突に教室の後ろの扉が開いた
「うるせんだよ!このクラスだけ!燃やすぞ!」
それは20代後半には見えないぐらい綺麗な可愛らしい顔した風紀委員会顧問の野中先生だった。がいつもとは顔がぜんぜん違う。……なんかめちゃ怒ってる。
壱の伍
世界とは不条理で不公平だと思わなかワトソンくん?弱きを助け正義の為に戦った僕は今こうして三階の生徒指導室の一角で殺人未遂の中原と一緒に反省文を書いてる。
今は3時間目。2時間目から説教が始まり、一時間説教を受けそのまま3時間目に突入し反省文を書いている。……もう疲れたよパトラッシュ僕、正義の為に戦えたかな?
もう眠たいよ……と野中先生が居ないことをいい事に机にうつ伏せになり寝ようとすると、
「先生~ここに反省文書かさらてるのに寝ようとしている人が居ま~す」
寝るのを妨害してきやがった誰のせいでこんなことになってると思ってるんだよコイツは。
「先生~ココに30行ある反省文の用紙に、悪いと思ってます。でも半分いえ九割型は玉泉君が悪いのでどうぞ、私だけはお見逃しをとか全面的に僕の性にしようとしている殺人未遂の中原とかいう変なのがいます」
「先生ここに玉泉というなのゴキブリがいるので家から持ってきた、人間潰し用のハンマーで潰していいですか?それがだめなら人体に有毒危険と書かれている薬品をゴキブリにのませていいですか?」
唐突にこの部屋に一つしかない扉を開く音がしその方向を見ると野中先生がいた。
「ってかなんでお前ら怒られてるのに喋ってんだよ!少しは静かにしろ燃やすぞ!……はぁ~反省文書き終わりましたか?それ書き終わって3時間目終了のチャイムがなったら教室にもどりなさい。これから一切チャイムがなるまで喋らないように!」
『はい』
壱の六
それからチャイムがなるまで一言も約束道理喋らず僕は開放してもらった。僕は、だ。普通ならココは僕達となるはずだが中原は開放してもらってない。仕方ないことよ……あんな反省文で開放して貰えるわけがない。
あんまり長いとこ、こんな狭い渡り廊下に突っ立ってると変な人に思われかねないので二階の教室に向かい歩き出す。
今は休み時間なので生徒で溢れかえって居るはずの廊下に一人も人がいない。ここから見える校門には何台かパトカーが停まっている。不安に思い僕は教室へと足を急がせる。教室に人はいたが……なぜか休み時間なのに席に座り神妙な顔つきで先生の話を聞いている。
「だ~れだ!」
いきなり視界が暗くなり目が……圧迫される。う~んおかしいなこれってこんな遊びだったけ?
「痛い痛い痛いマジ痛いからやめてお願い!中原だろ!中原さんだろ!中原様だろ!」
「正解正解よくできました23点」
「23点ってなんだよ!つうかなんでこんなに速く帰ってきたの!?もうちょっと説教されとけよ!」
「授業めんどうだから説教されてても良かったけど野中先生が大事な話が有るからもう行きなさいって言われて……なんか教室の雰囲気少しヤバいね。結構大変なことなんじゃない?」
23点はスルーかよ、まぁ~今はこんなことをしている場合じゃない。見た目というか空気というか雰囲気というのか……ただごとじゃない雰囲気がある。扉を最小限音がしないように開け自分の席に着く。
遅れたことは何も言われずプリントが先生から配られる。
「中原さん速く席について。二人がきたからもう一度話すわね。
朝、職員会議が行われ知ってる人もいると思いますがこの学校の生徒で1年で2人2年で2人3年で1人の子が家に帰ってこず行方不明になってます。
そして2時間目の休み時間にこのクラスの浜崎くんがいなくなりました。
浜崎くんが居なくなったのは二階の水道場横のトイレです。警察にも連絡し着てもらっています。ここから警察による調査が入るので今日は全学年早退となります。詳しくは、プリントに書いてあるとうりです。明日学校は休校となる可能性があるので6時半に回ってくる連絡網を確認してください。それと今日は家に帰ってから絶対外にでないこと。」
ちょっとまて浜崎くん?浜亮のこと?どういうことだ?警察?……本当に日本語って難しいな~先生がいってることが理解できないや。なんでだろう。なんで?なんで?朝自分で失踪事件について語ってたじゃん……。理解できない事実の前に下を向いてしまう。下をむいて目に入ったプリントが追い打ちを掛けるように現実を突きつける。
「起立。」
中原の声が聞こえ席を立つ五月蝿い音が聞こえる。僕も席を立つ。中原の声は心なしか震えてるように感じる。
「姿勢、礼。」
『ありがとうございました。』
挨拶という作業をすまし、皆帰路につく。このときだけはいつも騒がしいクラスは嘘みたいに静かだった。
だってそうだよな8年間ほとんどクラス替えされずにこの小さな村で皆が幼馴染みのように過ごしてきたこの日常が平凡が一気に壊れたんだから
作家を目指し努力している中学生なので感想を書いて頂けると。
嬉しいです。