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第二話 エピローグ 或る日の昼休み、二人の高校生

「世の中には4種類の人間がいるんだってよ」


 二学期も半分を過ぎ、そろそろ受験生としての自覚をし始める秋のある晴れた日の昼休み、人権保護団体が聞けば即行でクレームをつけそうなことをいきなり言ってきたのはほかならぬトロイであった。

「…………出し抜けになんだよ?」

 俺は弁当を箸で掻きこみ、それを自販機で買ったブリックパックのコーヒー牛乳で流し込みながら尋ねた。

「言ったとおりの意味だよ。この世界にいる人間は皆4つに分類できるんだ」

「正直唐突にそんなことを言われても意味が分からんのだが」

「つまりはだな、人間が何かする時って脳で情報を『受け取って』からそれを『判断』した上でするだろ? その二つのプロセスの中に違いが生まれるらしいんだよ」

 帰納法的に結論から言われただけで軽い混乱の中にあった俺の脳は、ここにきてようやく理解力を取り戻した。

「ああ、要は考え方のタイプの違いって奴か。テーブルトークにもならんタダのトリビアじゃないか」

 そんなことを言った途端、トロイは取って置きの話のオチを他人に言われた時の顔を浮かべた。

「うるせえ、話の腰を折るな」

「なんだよ、そっちが先に言ってきたんだろうが」

「そういうことじゃねえんだよ。話のオチを先に言うとかKYにも程が有るって」

「そのセリフはお前にだけは絶対言われたくないな」

 弁当の残りを口に放り込み、一気に飲み込む。

 トロイのほうはあーあ、と肩をすくめた。

「話す気が失せちまった。誰かさんのせいでな」

「そうかい、そりゃ結構だ。……というか、そもそもなんで俺にその話をしようとしたんだ」

「ん? 女の子との話のネタにと思ってな。その前にお前で話の練習しようかと」

 失望を隠しきれん。

 まあ、こいつのこういう行動もある意味健全な男子高校生なのかもしれんが……

「動機が不純すぎる」

 それだけ言うとトロイは勝ち誇ったような顔を浮かべ

「不純が100%ならそれはもう純粋なんだよ」

 付き合いきれない。俺はゴミを捨てに席を立つ。

 そもそもそんな退屈な話を誰が聞きたがるんだ。


「ああ、そうそう」

 トロイがふと思い出したかのように付け加えた。

「フェニットに聞いたが、ついさっきライナスの憑着体の反応があったそうだ。場所は日吉町二丁目。数は一体」

 振り向けば先ほどまでのおちゃらけた顔は何処へやら、あいつの顔は真面目そのものだった。

 公私の使い分けができていると言うことだろうか。なんともアメリカンなことだ。

 俺の反応も無視してトロイは話を続ける。

「因みに今のところは町の中を光学迷彩で移動中。目的地は言わずもがなココ」

 ということは必然的に午後の平穏無事な授業は現時刻を持って終了したというわけだ。合掌。


 昼飯後に残ったゴミをそのままゴミ箱にシュートした……外れた、自分の空間認識能力の低さに泣けてくる。


「行くぞ、トロイ」

「はいよ、コウリョウ」

「……やっぱその名前、慣れないな」

「似合ってるぜ?」

「うるせえ、プロミネンス」

「おお、ようやっと日常でもそっちの名前で呼んでくれたか。兄さん嬉しいぞ」

「誰が兄さんだ。お前がそう呼ぶからこっちも返しただけだ」


軽口をたたき、そのまま教室には戻らずに屋上に上がる。

その後は……



――どこの誰だか知らない人が俺を呼んでいる。ヒーローというのはその声のために戦い続けるらしい。

――正直面倒くさくてしょうがないが……今はやれるだけやってみよう、とりあえず俺が持つ限りは。



~~終わり~~


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