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飲めるあたたかさになるまで ――あなたの隣を歩きたい――  作者: 蒼宙 つむぎ


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2.My first café au lait(6)

同期の一人の坂口裕子の視点のお話です。

6.無駄なものは必要ない ~坂口裕子side~


 窓の外を眺めながらコーヒーを一口含む。

 ――少し、苦い。

 砂糖を入れ忘れたことに、今さら気づく。

 でも、もう取に行く気にもなれなかった。


 先ほどの順位、悪くはない。

 けれど、良くもない。

 本当はもっと評価されると思っていた。

 いや、思いたかっただけかもしれない。


 1位の彼女の課題は単純な仕様で、特別なことをしているようにも見えなかった。

 私の方が、いくつも工程を組み込んでいる。

 その分、完成度も高いはずだった。


 だから、余計に腹が立った。


 しかも、哲平社長のチームで働けるなんて……。

 どうして、私じゃないのだろう。

 このやるせない気持ちを飲み込みたくて、コーヒーを一口含んだ。

 やっぱり、苦かった。


 ふと、背後から人が近寄る気配を感じた。

 振り返る前に、誰の足音なのか気が付く。

 ゆっくり小さく息を吐き、背筋を伸ばした。


「何かしら、久遠君」

 名前を呼ばれて足音の主が立ち止まる。

「いや、ちょっと気になって。話、できたらいいなと思ったんだ」

 何が気になったのだろう。話すことなど思いつかない。

「……よくわからないわ。何を話すのか」

 そう言いながら、自分でも声が少し硬いと気づく。

「あ……。うん。その、坂口さんの行動の意味が分からなくて。わからないことは直接聞こうと思ったんだ」

 あきれた。私の行動が知りたいらしい。どうでもいいであろう私の行動のことが。それこそ意味が分からない。

「わからなくて結構よ。もう仕事に戻るので、どいてくれるかしら」

 ここからの巻き返し、どうするべきか考えたい。今は他人と話をする時間がもったいなく感じた。


 私の言葉にびっくりしたのか素直に道を開けてくれた。視線を向けてくる彼を横目に足早に去った。

 デスクに戻る途中、手に持っていたコーヒーは飲む気が失せたので、ごみ箱横の回収ボックスに捨てた。


 私には無駄なものは必要ない。

 恋や友情――そんなものは、

 仕事の邪魔になるだけだ。


本日、あと一つ投稿予定です。

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