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飲めるあたたかさになるまで ――あなたの隣を歩きたい――  作者: 蒼宙 つむぎ


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4.Cafe Latte(22)

今日の1話目です。

22.First Meeting②


 緊迫した空気の中、重苦しい静寂を払ったのは白石湊だった。

「透、噛みつかない。相手は女の子だよ」

 やんわりと、でもしっかりと釘を刺す。

「別に、噛みついてなんか、ないし……」

 透の冷たさが急におさまり、瑞葵は驚きを隠せない。

(透さん、怖い人に見えたのに……。意外だわ)

「ガキじゃあるまいし。大人らしい余裕はないのかよ」

 そう言うのは黒川だ。少し好戦的なタイプに見える。

「瑞葵、気にするな。俺が守るから」

 そう言って手を握る哲平。

(この状況、なんだろう。わちゃわちゃしてる?)

 まとまりがなく、落ち着かない。

「……」

 こういう時の瑞樹は、中には入らずに外にいるようにしている。

 騒がず、会話に入らず。

 そっと見守るだけにする。

「みんな、好き勝手しない。瑞葵ちゃんはこのチームに入ったところなんだ。お互いに尊重し合おう。瑞葵ちゃん、みんな悪い奴らじゃない。取って食ったりしないから。……たぶん」

 湊は仲よくしようとは言わない。仕事に慣れ合いは必要ないと暗に伝えてくる。

「は、はい……」

 甘い考えではやっていけないところに入った。もっと気を引き締める必要がある。それをきちんと自分の中に落とし込んだ。

(間違わない。踏み込み過ぎない。自分の領域を守っていく。そうすれば、きっとやっていける)

 瑞葵はゆっくりと目を閉じた。



「さて、リニューアルの話はしたから、若干の意見交換はしたけど、きちんとした意見交換しようか」

 樹が場の仕切り直しをする。

「今回、なんでリニューアルなのかというとね、ゲーム利用者からの声が多かったから。それから、可能性を広げるため。これまでの常識を大きく変えるよ」

「常識を変えるって。それはさっきの5拠点?そもそも、できるのか?」

 黒川理央は疑問を素直に伝える。

「可能かどうかで言えば、“YES”だ。理央はかなり大変になるけどね。国を跨ぐ面倒ごとは哲平と親父さんに任せる」

 樹ははっきりと答える。哲平も首肯しているので大まかなことは通っているのだろう。

「だけど、容量が……サーバーが、持たない。俺は――かなり難しくなるんじゃないかと!」

 理央の不安は現実を知っているからこそのものだ。

「これまでのやり方なら難しい。けど、俺たちは昔のままじゃない。学んでちゃんと前に進んでいる。日本の丁寧さと海外の効率重視さをうまく調和を取っていいものができる。俺はそう思っているし、していくぞ」

 哲平の言葉は自身にも言っているようだ。そして、決意表明にも聞こえる。

「それは、そうだけど。そんな簡単にできるものじゃないぞ。時間もかかる。仕事もあるんだし、家族もいる」

 うなる理央。

「理央の娘は1歳になったんだよね。可愛いよね」

 樹は穏やかに話す。そして軽く息を吐き、背もたれに身を落として言葉を続ける。

「勿論、家族をないがしろにさせる気はないよ。全部を自分たちですることはないんだ。人を育てていくのが、俺たちの次のフェーズだよ」

 樹の顔は笑顔だが、目は笑っていない。

  “やっていこうよ”ではなく、“やるんだ”という決定の言葉に重みを全員が感じた。



 今日、瑞葵は兄の知らない顔をたくさん目の当たりにし、戸惑っている。

 仕事に誠実に向き合っているのは知っていたが、言葉に強さをにじませるのを見たことがないからだ。


(怖い――)

 兄に対して初めての感情だった。


 そして議論は、

 ――まだ終わらない。


2話目も後ほど投稿します。

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