4.Cafe Latte(21)
21.First Meeting①
「じゃあ、今からミーティングを始めようか」
樹が声をかけ、客間のソファに腰かけていく。
私は哲平さんの手を握ってしまっていたので、そのままお隣に座ることになった。
ふかふかのソファ。
体が沈む。
「今日のミーティングは方向性を共有することと、意見交換。まず、俺がディレクター。代表ね」
(お兄ちゃんが代表なんだ……)
サブなのかと思っていたのでびっくりする。
「俺はエンジニア兼戦闘設計だ」
隣の哲平さんが私に向いて話してくれる。
(哲平さんがエンジニア!これもびっくり!)
「黒川理央。サーバー担当です。よろしく瑞葵ちゃん」
向かい側に座っている少し茶髪で細身の方だ。
「アート担当の水瀬朔。よろしくね~」
ふんわりとした髪の柔らかい笑顔が、年上なのに可愛い。
「神崎透。クラフト担当だ」
(斜め前の眼鏡の方がクラフト担当か……。クラフト担当さんいるなら、私はサブってことね)
「俺は広報の白石湊。よろしく」
哲平さんの右隣の超爽やかスマイルの方だ。
(うん。これはかなり女性を転がしちゃう感じなのかも)
妙に納得した。
「あと一人いるんだけど……。今は療養中」
(もう一人いるのね)
そう思いながらもう一度全員の顔を見る。
「……」
(顔面偏差値が、――高すぎる!私、慣れるのかな……)
キラキラする人たちに囲まれ、眩しすぎて前が見えなくなることを心配した。
「瑞葵。何か言ってみ」
樹が挨拶を促す。
「あ、あの、山本瑞葵です。いつも兄がお世話になっています。不束者ですが、よろしくお願いいたします」
座ったままだが頭を下げた。
「本物の瑞葵ちゃん、本当にかわいいね~。今度、一緒に買い物に行かない?コーディネートしたいんだ」
水瀬さんは物腰が柔らかい。着ている服もお洒落だ。私に似合う服を考えてくれるなら施肥ご一緒したい。
「はい。ぜひご一緒させてください」
「やった!樹、いいよね!あ!髪のカットもしてみない?」
「髪、ですか?そうですね……。派手にならないければ、切ってみたい、です」
ずっと変わらないボブヘア。最近はカットしていないので伸びてきた。心機一転、雰囲気を変えるのもいいかもしれない。
「メンバー紹介終わったから、これからの方向性を共有するね」
リーダーの兄が進行を勤め始めた。新鮮な光景で、思わず食い入るように見てしまう。
「まず、俺たちの作ったRPGをリニューアルするんだけど。大規模なものにするよ。今あるオンラインゲームは世界につながっているけど、実はどこかを諦めちゃっているものが多くてね。戦闘に特化したものはデータ量も多くて、サーバーダウンしているよね」
みんな「うんうん」と頷く。
「でも、俺たちの作るものは妥協しない。それこそ、戦闘もクラフトも。現実に生活をしているようなものを作る。それも、全世界オンラインでね」
「え?そんなことしたら――」
黒川さんの声に焦りを感じる。
「理央、やっぱり難しいよね。拠点が一つだとね」
樹は含みのある言い方をして黒川へ挑発的とも見れる視線を向ける。
「樹、無理なものは無理だよ」
「うん。日本だけなら無理だよ。でも、拠点がいくつもあれば?分散されるよね?」
「分散!」
黒川がたまらず声を上げる。
「うん。世界拠点にサーバーを置いて、拠点ごとに都市を設ける。都市を跨いで、いろんな世界をめぐることが出来たら、楽しいよね」
またしても言い方が家にいるときの樹とは異なる。
(お兄ちゃん、黒川さんが前のめりになって、興味を持ち始めてるのを見逃してない。これがリーダーなんだ)
「5拠点を繋げる……そうだね。できなくは、ないかも」
黒川さんが目を瞑り、思案しながら答える。
「それでも1拠点のサーバーは大きいものになるよ」
「そうだね、それは許容範囲って思っている。できるよね理央」
「ああ……。久々に燃えるな」
少し悪顔になったような気がするのは、きっと気のせいだろう。
「戦闘はアイテムの装備をカスタムして面白くしてね、哲平」
「わかった」
(お兄ちゃんと哲平さんは言葉が少ないけど、通じているのね)
二人の仲の良さがここでもよくわかる。
「アートは朔の腕の見せ所だね。どれだけ成長したのか、お手並み拝見だ」
「ハードル上げるなよ~。勿論いいもの作るけどね」
朔さんの自信たっぷりの返事は私も楽しみになるくらいだ。
「あとはクラフト。透。大幅に変える。瑞葵をメインで作り変える」
「お兄ちゃん。作り変えるって…。これまでの物も素敵だったじゃない」
「瑞葵、いいものを作ることにためらいは禁物。そうだろ、透」
「そう、ですね。まあ、瑞葵さんの実力がどれだけの物か、見せてもらいましょうか」
「え……」
「透。言葉に棘を感じるね」
「樹先輩、気のせいですよ」
そう言う透さんの笑顔は、作ったもののように見えて怖い。
「気のせい、なんだな。だったらいい」
樹の言葉も、好戦的なものに聞こえて、部屋の温度が1度下がった気がする。
透さんは冷え切った瞳を私に向け、最後に氷の言葉を言い放つ。
「瑞葵さん。楽しみですね」
その言葉は柔らかいのに、刃のようだった。
喉の奥がひゅっと鳴る。
——試される。
ここは、ぬるい場所じゃない。
私は、とんでもない所に入ってしまった。
部屋の温度が、さらに1度下がった気がした。
透さんの視線が、静かに私を射抜く。
背中に、細い氷の線が走った。
今日も読んでくれてありがとうございます。
明日は2話投稿予定です。




