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飲めるあたたかさになるまで ――あなたの隣を歩きたい――  作者: 蒼宙 つむぎ


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4.Cafe Latte(20)

今日も1話投稿です。

20.初めて


 黒狼ヴォルフシュバルツ

 樹と哲平とその友人で作った最初のゲーム制作チームは、もともとは遊びで作ったと聞いている。

 自分たちが“面白そう”と思うことを作ってみた。それが起源。

 作ったゲームは5つしかないが、今も隠れた人気がある。

 集まった人たちも、この業界で知らない人はいないというレジェンドたちばかりだ。

(本当なら、話をするのも恐れ多いのに。チームに私なんかが必要なのかな……)


「えっと、今は活動って……」

 最近は何もコンテンツを発表していないと思ったので聞いてみることにした。

「大した活動はしていない。今はね」

 樹が含みのある言い方をする。

「ん?今は?」

「そう、今は。実はさ、一番最初のRPGをベースにしたVer.2を出してほしいって言われててね」

「そう言えば、今も人気だよね。でも、続きを作るの?」

「続きではない。新しいものにリニューアルする感じだ」

 哲平さんが答える。

「リニューアル……」

「そう、ターゲット層は、全世界の人、全員だ」

「え!ちょっ……全員?!」

(普通はゲーマーの性別や年齢層を絞ってコンセプトを立て、そこから組み立てていくのだけど……。ゲームをする世代とか関係なく、趣味嗜好も異なる全世界の人をターゲットにするなんて。そもそも、どこから手を付けたらいいのかもわからないし……)

 思わず、考え込んでしまう。

「瑞葵、ゲームを苦手とする人もいるよね。してみたいけど、自分には難しそうって。そういう人も楽しんで欲しいからリニューアルしたいんだ」

「あ……」

 瑞葵自身もバトルモードは苦手だ。できることなら、何かをコツコツ作ることに専念したい。だけど、物を作るだけのコンテンツはあれど、全てを一つにまとめていて、楽しいものは……記憶にはなかった。

「瑞葵が哲平の会社の課題で出したもの、あれを使いたいんだ」

「あれを?単純なもの……だけど」

「それがいいんだ。そこから派生して作っていくんだ」

「派生……」

「そう。瑞葵なら、できるよね」

「……」


 樹はできるかどうかを聞いていない。できるからやろうと言ってくれている。

 瑞葵はしっかりとチームのメンバーを見つめた。

(私がいてもいいの?)

「あ、あの……」

 思っていても聞くのが怖くて声に出せない。ただ口をパクパクとさせてしまう。

「課題、見たよ。すごくよかった」

 メンバーの一人がそう言ってくれている。

(でも、私は大したことはしていない。誰にでもできるもの……)

「瑞葵ちゃんのセンスって、瑞葵ちゃんだからのものだよ。俺たちにはないものなんだ」

(本当に?ほんの少しでも、役に立てる?)

「あ……、の……」

 否定されるのが怖くて、やっぱり聞けない。

 胸が苦しくなり、ギュッと服の左胸を握りしめる。

「瑞葵、お前が必要なんだ」

 哲平も苦しそうな顔をして、手を差し伸べてくれている。


 本当に、私でいいですか?

 ここにいてもいいですか?


 まだ、みんなの言葉を信じることはできない。

 できるかどうかもわからない。

 でも、――。


 哲平さんの手に、自分の手を伸ばした。

 そっと触れた哲平さんの手が震えていた。

 なぜだろう。それが私の心をほっとさせた。


 意を決して、言葉を紡ぐ。

「わ、私……」

 緊張で口の中が乾燥して声が掠れるが、どうしても伝えたい。

 不安や逃げ出したい気持ちを飲み込んで――。

「み、皆さんと、一緒に……作りたい、です」

 ——初めて、自分から望んだ。


 震えるほど勇気を出した一歩。


 熱を帯びたその決断が、

 やがて世界を揺るがす種になるなんて、

 このときの私は、まだ知らない。


読んでくれてありがとうございます。

明日も1話投稿予定です。

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