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飲めるあたたかさになるまで ――あなたの隣を歩きたい――  作者: 蒼宙 つむぎ


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4.Cafe Latte(17)

17.返事


 穏やかに、1週間が過ぎた。

 毎日同じ時間に起きて、散歩して。

 食事もとれるようになった。

 明日から出勤する。

 瑞葵は目を閉じ、ゆっくりと息を吸い、しっかりと吐ききって目を開けた。


「瑞葵、一緒に出勤しよう」

「哲平さん。おはようございます。ご一緒してもいいの?」

「勿論だ。行こう」

「はい。お兄ちゃん、行ってきます」

 哲平さんの車で一緒に会社へ向かう。窓から見上げた空は晴れていた。


「おはよう」

 哲平がフロアに入り、大きな声で挨拶すると、みんなが一斉にこちらを向いた。

「今日から瑞葵が復帰する。みんな、よろしく。瑞葵、一言いいか?」

「あ、はい」

 小さく深呼吸し、お腹の前で両手を重ね、視線を少し下げた。

「今日から復帰します。よろしくお願いします」

 丁寧に、ゆっくりと頭を下げる。

 3秒数えて、ゆっくりと顔を上げ、隣にいる哲平に顔を向けた。

 哲平もこちらを向いていたので顔が緩んだ。


 自席へと向かう。一週間ぶりだ。

「……」

 少し、埃が下りているように感じたので、サイドデスクから除菌シートを取り出し、軽く拭く。

 ノートPCを立ち上げ、メールのチェックをする。

 未読がたくさんあった。


 カチカチ


 軽く内容を読んで、返信が必要なものに“☆”をクリックして次のメールに進む。

 “要返信”は3つ。

 時計を見て、急ぎのものから返信する。

 最後の一つのメールはWEB会議の招待だった。


 カチカチ


 参加にチェックを入れて終了した。



「山本さん、仕事を頼んでいいでしょうか」

 隣の石川さんから声がかかる。

 石川さんに体ごと向いた。

「仕様書を3つ渡します。今週はこれをチェックと承認依頼。承認後の修正と哲平への確認依頼をお願いします」

 仕様書を手渡され、ペラペラと確認する。

「はい」

 返事をして、スケジュールとタスクに追加し、仕様書に向き合った。

 ボリュームはそれほど大きくない。

 承認依頼や哲平さんへの確認依頼までの日程を決め、無理のないスケジューリングをする。

(問題はなさそう)

 ペンを取り、意識を仕様書に落とし込んだ。


 AM.11:55

 哲平からチャットが届いたとポップアップが表示される。

 “お昼を食べに行こう。社長室までおいで”

 優しい言葉に視線が揺れる。

 そっと席を立ち、空気を揺らさないようにそっと移動する。


 コンコン


「瑞葵、どうぞ」

 哲平から“了”の言葉が来る。

「失礼します。お言葉に甘えてきました」

 笑顔がこぼれた。

「甘えていい。行こう」

 柔らかい声に笑顔、甘やかしモードの哲平さんだ。

 私は首肯し、哲平について行った。


 PM.1:00

 ランチから戻り、自席で仕事に戻る。

「瑞葵ちゃん。これ、取引先からいただいたの。みんなにも配ってるから使ってね」

 同期の佐藤さんと峯田さんから社名が入っている蛍光ペンを渡された。

 ピンクの蛍光ペンはよく使うものなのでありがたい。

「はい」

 首肯してペン立てにさす。

 そして、意識を仕様書に再び向けた。


 PM.1:55

 個人ブースへと移動する。

 あと5分でWEB会議が始まる。

 深呼吸し、URLをクリックした。


 カチカチ


 画面には、すでに招待者の健太郎がモニターに映っていた。

 一瞬、固まってしまった。

 でも、すぐに視線を落とす。


『山本さん、体調はもう大丈夫?画面で見た感じは……。うん。顔色はよさそうだ』

 健太郎は、相変わらず優しい。

 気遣いのことばが自然だ。


「……はい」

 返事をするまでに、少しだけ時間があった。


『あ、……』


 それに気づいたのは、

 瑞葵じゃなく、健太郎のほうだった。


今日も読んでくれてありがとうございます。

明日も投稿予定です。

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