4.Cafe Latte(16)
本日2話目です。
16.傍にいて欲しいんだ ~哲平side~
「健太郎、急ぎか?」
アメリカにいる健太郎から着信があった。
(珍しい。何かあったか)
『はい。瑞葵ちゃん。いえ、山本さんとWEB会議を14:00からする予定にしてるんですが、まだ彼女から連絡もなく、繋がらなくて。俺、彼女の電話番号知らないから、哲平さんに電話しました』
瑞葵が約束を反故するわけがない。
「瑞葵が?……おかしいな。……健太郎、すぐ探す」
電話を切ってまずいと思った。
「どうしたの?哲平君」
ゆいから声をかけられ、状況を話した。――たぶん。
それくらい、気が動転していた。
瑞葵は親友の樹の妹。いつも大人しい。というか、存在感が極端に薄い。
初めて会ったのは俺が高校生の時だった――。
「哲平~。俺のかわいい妹の瑞葵。いじめないでね~」
デレデレのシスコン樹から紹介されたが、樹背後から出てこなくて見えない。
「……」
たぶん、ちっさい。
「哲平~、睨まないで。怖がっているだろ」
「……睨んでいない。この顔は元々だ」
小さい子には、いつも怖がられる。気にはしていない。
「瑞葵、このおじさんは元々こんな顔なんだって。だから仕方ないんだ。わかってあげてね」
しゃがんで話している言葉が、ムカつく。
(おじさんじゃない。お前と同い年だ)
声が大きいと自覚しているから。怖がらせるだろうと、言いたい言葉を飲みこんだ。
その時、樹の向こう側にいる女の子と目が合った。
「……」
(可愛い)
初めて、可愛いと素直に思った
いや、俺はロリコンではない。
でも、庇護欲を掻き立てる可愛さというものを初めて知った。
俺もしゃがんで目線を合わせた。
「柳哲平だ。樹と同い年だ」
挨拶は大事だからな。
「……み、みじゅきでしゅ」
「……」
(噛んだ!)
顔を真っ赤にさせて挨拶をした言葉は、破壊力が強すぎる。
「……」
俺は何も言わず立ち上がり、そのまま帰宅した。
その後、樹から怒られたようだが、聞き流した。
最悪な出会い方をしたが、今では信頼してもらっている。
瑞葵は友人と折り合いが悪く、辛い思いをしたので存在感を消すようになったと後に聞いた。理由も聞いたが、胸糞悪くなってペンを粉砕してしまった。
大学生の時、樹の家族が事故に合って、ご両親が亡くなった。
樹も瑞葵も怪我をした。
見舞いにも行った。
二人を見て、俺にできることはないかと真剣に考えた。
だが、今の俺には何もできることはない。
なんて俺は小さいのかと、これまでなんとなく生きてきたことを恨んだ。
そんな時、樹から提案をされた。
「俺たち、遊びでゲーム作ってきたけど、本気でやらないか?」
「本気で?」
「ああ、俺は瑞葵を守りたいんだ」
瑞葵が不登校になり、傍にいてやりたいという。
俺にできるのか。不安しかなかった。
だが、何もしない選択はなかった。
「わかった。俺も本気になるよ」
初めて父親にも頭を下げ、プロに学んだ。
遊びではない。
父親との約束で、社交にも顔を出した。
海外に短期留学もして、語学や経営学、帝王学も学んだ。
そして、ゲームアワードで俺たちの作品が選ばれた。
その後、父親に指導されながらやっと社長らしくなった。
順調だった。
瑞葵も会社に入ってくれた。
彼女の笑顔が、声が、そこにあった。
だから、俺が守れると思いあがっていた。
瑞葵は樹や雪と一緒に俺のしがらみに巻き込んでしまった。
3人とも大けがを負い、後悔しかなかった。
俺が、責任を取ろうと思った。
「哲平。姫川ゆい君との縁談が来ている。考えておけ」
父からの言葉は、“決定”の意味を含んでいた。
絶望だった。
(好きでもないのに結婚かよ)
反発して姫川ゆいを拒んだら、彼女が入社してきた。
(親父の奴。勝手なことを)
だが、ゆいは健太郎に一目ぼれしたという。
俺にも可能性がある。
チャンスだと思ってしまった。
だから、ゆいの行動を見て見ぬふりをした。
罰が当たったんだ。
もっと俺がしっかりしていたら、瑞葵は倒れなかったんだ。
それでも、望まずにはいられない。
俺の傍に
いて欲しいんだ。
今日も読んでくれてありがとうございます。
明日は平日なので1話投稿予定です。




