4.Cafe Latte(9)
今日は節分ですね。
恵方巻は食べましたか?
今日も1話投稿です。
9.涙のお弁当
「子リスちゃん、そろそろ戻ろうか」
カレンに声をかけられて、ハッとする。
(全然会議の内容を聞けてなかった)
「あ……。ごめんなさい。すぐ移動しますね」
慌てて立ち上がろうとした時、目の前がクラっと揺れ、椅子に再度腰かけてしまう。
「瑞葵ちゃん!顔が真っ青!無理していたんじゃない?」
「ごめんなさい。そういうわけでは、ないと思います。久しぶりに専門用語連発で頭がパンクしそうになったのかも」
そう言って苦笑いをする。
「専門用語って――」
カレンは、それ以上言葉を続けられなかった。
「カレンさん?どうかしました?」
「あ、ううん。私も疲れたわ。飲み物入れに行こう」
そう言って優しくエスコートする。
(今日のWEB会議、仕事の話は全くしていなかったんだけどな……)
内心はかなり、動揺していた。
翌日、朝から石川さんに仕事の指示を貰い、お昼少し前に終わってしまった。
(ランチタイムまでもう少し時間あるし……。何かほかにも仕事もらいたいな)
少しでも休んでいた時に迷惑かけた分を返せたら、という気持ちが強かった。
そして、少しでも忙しくして、気を紛らわせたかった。
とはいえ、石川さんは席を外している。
(気分転換も兼ねて、飲み物を入れに行こう)
サイドデスクからマグカップを取り出し、カフェテリアへと向かう。
カフェテラスには何人かの人が集まっていた。
「瑞葵ちゃんも休憩?」
同期の佐藤さんと峯田さんから声をかけられた。
「あ、うん。ちょっと手が空いちゃって。次の指示もないのでどうしようかと」
「あら。だったら一つお願いしようかな……。午後一でまとめてもらっても、いいかな?」
そう言って佐藤さんが仕様書を気まずそうに見せてくれた。
ぱっと見だと、これまでと同じなら問題ないと思うけど……。
「……確認、してからでも、いいかな?」
「あ、そう、だね……」
一瞬、3人の間に何とも言えない空気が流れる。
(せっかく仕事を振ってくれたのに……。気まずくなっちゃったかな)
気まずい空気を変えたくて、もう一度声をかけようとする。
「あ、えっと――」
「それ、私がやりますよ」
後ろからゆいの声が聞こえ、振り返る。
ツカツカとやってきたゆいは、仕様書をサッと読み、にっこり笑ってそのまま立ち去る。
「……あ、私も……」
ゆいに声をかけようとするが、歩みが早く間に合わなかった。
「今回はゆいちゃんに任せましょう。瑞葵ちゃんはまだ無理しない方がいいと思うしね」
「そうね。今は、ゆっくりしよう」
そう言ってくれる二人だが、瑞葵は少しもやっとしてしまった。
(私では役不足って思われたかな……)
あの時、即答して受ければよかったと思う。
もう今さらだし、ゆいも行ってしまった。
「そう、だね。ありがとう」
当たり障りのない返事しか、今はできなかった。
席に戻り、しばらくするとランチタイムになった。
「子リスちゃん、お昼はどうする?」
カレンさんが誘ってくれるが、お弁当を持ってきているので迷う。
(本当は誘いを断りたくないけど、せっかく雪ちゃんが作ってくれたからな……)
「あ、あの、実はお弁当持ってきていて、誘っていただいたんですが……」
「あ、お弁当持ってきたんだ!仕方ない。また誘うね」
そう笑って行ってしまった。
カレンさんが行った先にはフロアのみんなが揃っていて、カフェテラスには私一人だけとなった。
「……」
もやもやが、心を侵食していく。
(きっと、たまたまみんな何も持ってこなかった……んだよね)
そう思おうと思った。
(もし、違ったら、――つらいな)
ぽつんとカフェテリアで食べるのはさすがに勇気がいるので、テラスに出た。
人もまばらで、奥に進んでいくと生垣が見えた。
ここは、前に隠れられるって思った場所だ。
(お天気もいいし。ここなら、安心できる)
人目についていないか確認し、生垣の向こう側に隠れるように座った。
そして、
――誰も来る気配は、なかった。
お弁当を開けると、卵焼きとか唐揚げとか、彩がきれいで美味しそう。
まだ、左手が自由に動かせていないと言っていた。
これを作るのに、一体何時間かけてくれたんだろう。
私の決めたことは間違っていない。
なのに、寂しさや悲しさが胸を締め付ける。
誰かが悪いわけじゃない。
たまたまタイミングが悪かっただけ。
雪ちゃんのお弁当は少し、
塩味が効いていた。
いつも、読んでくれてありがとうございます。
明日も21:00に投稿予定です。




