4.Cafe Latte(7)
ちょっと遅れました。ごめんなさい!
7.誓い ~山口絢人side~
俺は憧れの会社へ入社することが出来た。
父親は最初こそ苦い顔をしたが、柳グループの会社だと知ると、手のひらを返したように喜んだ。
ゲーム制作会社ってことは納得していないみたいだったが、親のいいなりになるつもりははなからない。
俺は、憧れの人と一緒に働くんだ。
高校生の頃の俺は荒れていた。
親の言いなりになるのが嫌で、金髪にして夜遊びもそれなりにしていた。
自由になる金はなかったが、“お姉さま”たちが貢いでくれたので不自由はなかった。
「絢人。クリスマスは一緒に過ごせるでしょ?」
煙草をふかし、ベッドの上で“お姉さま”が問いかける。
(面倒くさい。自分が俺の女だと勘違いし始めたな)
「クリスマスは家族と過ごすって決めているんだ。ごめんね。“お姉さん”」
そう言って部屋を出た。
(この女も終わりだな)
スマホの電話帳リスト“お姉さん①”を“削除”した。
ためらいはなかった。
画面を切ろうとしたが、アプリのボタンを押して、顔を緩める。
俺の唯一の癒しのキャラクターが画面の中で一生懸命何かを作っている。
(今日もかわいい)
俺は中小企業の一人息子で、顔はまあ……そこそこいい。頭も悪くはない。
顔とか社長の息子ってだけで、女が近寄ってきてうんざりだった。
でも、金持ちでもないし、変に頭の固い親のおかげで自由もない。
結局は群がる女を使って遊び歩くことしかできなかった。
そんな俺は昔からゲームが好きで、いつか自分で作れるようになりたいとこっそりと勉強していた。だが独学では行き詰ってしまい、“おすすめアプリ”を期待せずにクリックした。
控えめに言って、それは最高だった。
言語の多様性にちゃんと対応してくれていたし、なにより“アクア”ちゃんが可愛かった。
(マジでこんな子いたら……、惚れるな)
大学生になったある日、課題作成のために資料集めでネット検索した。その時に、たまたま目にした掲示板を、俺は天啓だと思った。
“リアル!アクたんは実在した!”
「はあ!!!」
カフェテリアで、俺は大声で叫んでしまった。
周りが何かうるさかったが、そんなことはどうでもいい。
それより!アクたんが、実在することの方が大事だ。
興奮して手が震えるが、掲示板を最初からスクロールしていく。
“名無し:ゲーム制作会社でアクたんにそっくりな女の子が働いているって聞いたことがある、でも本当に似てる子がいるのかな?”
“名無し:内緒でござる。好きに考えていてくれたまえ”
最後の一行を読んで確信する。
(絶対にいる)
そこから掲示板やゲーム制作会社を時間が許す限り調べた。
そして、俺は見つけた。
レジェンド柳哲平さんの会社に、彼女はいる。
就職活動としては出遅れた。
でも、諦めたくなかった。
俺は“アースプロジェクト”に直談判しにビルの前に立ち止まった。
上を見上げた後、目を閉じ深呼吸する。
「あの、大丈夫ですか?どこか、具合が悪い、ですか?」
可憐な声で俺を心配する人がいた。
ハッとし、声の振る方に顔を向けると、天使がいた。
「……アクたん」
小さくつぶやく。
「ん?どうかしましたか?」
彼女には聞こえてないようだ。よかった。
「いえ、大丈夫です。あ、あの、こちらの社員の方、ですか?」
「あ、はい。まだまだ1年目のルーキーですが」
苦笑いする顔も、眩しい。
「俺、も、働きたくて。今日、突撃してみました」
「わあ!行動力がありますね!頑張ってください!」
そう言って、彼女はビルに入っていった。
その後、俺は哲平社長に何度も面談を依頼し、会えた時に土下座して懇願した。
大笑いした哲平社長は課題を俺に出して仮内定を決めてくれた。
難しい課題だったが、死に物狂いで取り組んだ。
わからないところは、哲平社長に質問させてもらった。
そして、内定を勝ち取った。
来年からは彼女と一緒に働ける。
うれしくてたまらなかった。
夜遊びもそのころには一切しなくなった。
なのに、事件が起こった。
彼女は長期療養している。
でも、復帰すると聞いている。
だから、俺は彼女が返ってくる場所を平和にすると誓った。
明日は平日なので、21:00に1話投稿予定です。




