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飲めるあたたかさになるまで ――あなたの隣を歩きたい――  作者: 蒼宙 つむぎ


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2.My first café au lait(4)

健太郎sideのお話です。

なんていいますか…すれ違い。

瑞葵ちゃん!頑張れ!

4.ほろ苦い味 ~健太郎side~


「健太郎。今度の同期会、出るだろ?」

 後ろのブースから同期の小山が声をかけてきた。今、仕事中なんだが……。

「変な顔すんなって。今、先輩方全員大会議室でミーティングだってさ」

 思っていたことが顔に出ていたようで今の状況を説明してくれた。新入社員以外全員いない。ほっとした後、小山を小さく睨んだ。

「いないからって、こんな大声で仕事以外の話って」

「まじめだね~、健太郎は。それよか、行くだろ?同期会。メール来てたっしょ」

 そういえば2日前にメールが来ていた。しっかり見ていなかったが、もうすぐ入社して半年、最後の研修がある前にみんなで集まろうって内容だったような気がする。

 そこにはきっと彼女も来る。

「ああ。行く」

 迷うことなく返事する。

「だよなあ。いろんな部署に行ったみんなと再会できるなんて滅多にないし。どうしてるのか気になるよなあ」

 確かに、他部署の奴らがどうしてるのか気になるし、どんなことで苦労しているかやどう感じているかなどを知ることで全体の流れが見えるような気がして楽しくなる。

(進み始めたプロジェクトに関わっているやつはいなかったはずだし、話してもらえそうなこといっぱい聞きたいな)

 

 入社していきなりプログラミングできるわけがなく、デバックをしながら簡易ゲームの企画を作っている。バグがないかなどのチェックが主だが、“アースプロジェクト”はソフトウエアを使わずに“C++”で細かく組むのでデータが膨大だ。そんな仕事の中、簡易ゲームの企画を立てるのは正直時間もあまりなくてきついが、これも入社半年の通過儀礼だと先輩から聞いたので手を抜けない。

「小山、企画はできたか?」

「ああ……。まだ。時間なくて適当になっちゃいそうだわ」

「そうか」

 小山は根っからのゲーマーらしいから、きっと適当なものにはならないだろう。さて、俺もそろそろ詰めていかないとな……。

 そう思っていたらメールの着信通知のポップアップが表示された。

 同期会10日前、参加不参加の未回答を完了させた。


 同期会は週末に全員定時上がりをして集まることになったので、早めにスケジュールを立て、小山と企画を哲平社長に提出した。哲平社長は自身が忙しいにもかかわらず、全て目を通して確認してくれる。

「健太郎、お前の企画、簡易どころじゃないだろ」

 ざっと目を通して瞬時に意見をくれた。びっくりしたと同時に体がしびれるような感覚になった。すごい人だ。

「駿太は目の付け所、面白い。もう少し詳しく書いてこい」

「はい!」

(小山、駿太という名前だったのか)

 同期の名前を初めて知った。

「まあ、二人の企画は預かったから、研修で発表してもらう。修正はいいか?」

 最後の研修で発表、緊張するが見てもらいたい気もする。そのまま修正しないでおこうかと思ったが、社長から企画書を返された。

「健太郎はもう少し削ぎ落せ」

「……はい」

「クライアント“俺”の依頼内容は“簡易ゲーム”だからな」

(あ、これは疑似依頼だったんだ)

「わかりました。すぐに……」

「いいよ。来週で。よい週末を!」

 颯爽とその場を去る哲平の背中を見送る。時間をもらったからには、期待にこたえたい。週末はこれを考える時間に充てよう。

「健太郎、それ考えるのは明日以降な。今日はこれから同期会だからな」

 そうだ、今日は彼女に会えるのだ。

「ああ」そう言って小山とフロアに戻った。


「それじゃ、今から予約した店に行くのでついてきてください」

 この会の幹事をしている田所が声をかけ、会社近くのイタリアンレストランへ向かう。今集まっている中には彼女の姿はない。先に行っているメンバーの中にいるのだろう。

「健太郎君、今日参加してくれてありがとう」

 田所が声をかけてきた。前に企画してくれた会には不参加だったからだろう。

「いや、たまには参加しようかと」

「ありがとう!私のために!」

(……いや、田所のためではないが……。どうしたらそんな発想になるのやら)

 あきれて何も返さず歩みを進める。相手にするのも面倒だ。

「おいおい、健太郎。田所ちゃん無視しちゃっていいのかよ」

「別に、何か勘違いしているようだったから相手にしたくなくてな」

「はあ、確かにあの手の子、苦手だけどな。瑞葵ちゃんに当たらなかったらいいけど……」

「ん?なぜ瑞葵ちゃんが?」

「……ああ……。健太郎は気づいてないんだな。まあ、関係ない俺が言うのも違うからな……」

 小山の言葉に嫌な予感がする。彼女が嫌な思いをしているのではないだろうか。

 そんなことを思いながら歩いていると、会場となるレストランに着き、注文をしたところで彼女の姿が見えないことに気が付く。参加しなかったのだろう。小さく息を吐き、気持ちを切り替えた。


 お酒も進み、少し酔っぱらったやつがちらほら、楽しそうに騒いでいる。

 そんな中、一人が声を上げた。

「そういえば……田所さん。送信先に山本さん、入ってないみたいだけど……?」

 坂口裕子、瑞葵と同じSEだ。

「え?!そんな……えっと、彼女用事があったんじゃ……ないかな?」

 しどろもどろに言い訳する様子に苛立ちを感じた。

 おかしい。

「へえ……そうなの……」

 坂口はこれ以上何か言うでもなく、お酒を口にして田所を見ている。

 田所は目をそらし、周りにさらに言い訳を始めたようだ。

 俺はその姿を冷めた目で見たが、苛立ちが募るだけだと思いすぐに目をそらし一切耳に入れなかった。


 20時30分。予約の時間が終わったので2次会をしたいと言い始めたようだが俺は辞退し、会社に向かった。もしかしたら、瑞葵は残っているのかもしれない。

 気が付いたら走っていた。


「あなたの仕事、私たちは評価してる。いつも丁寧だし、早いもの。次の段階の仕事、任せたいと思ってるわよ」

 瑞葵と先輩が話しているのを目にした。

 彼女は残業していたのだ。

(なぜ気が付かなかったんだろう)

 彼女に会えると思い、浮かれていたのかもしれない。集合場所にいないこともいいように解釈していた。

(俺は何をしていたんだ)

 後悔ばかりが健太郎を襲う。

 独りよがりの馬鹿野郎だと。

 先輩と話す瑞葵はしっかりとその場になじんでいて、声をかけられる雰囲気ではなかった。


 そっと会社を出て、酔いを覚ますためにも缶コーヒーを買った。

 汗をぬぐいながら冷たいブラックコーヒーを飲む。


 ――ああ。なんて苦いんだ。


 自分の甘さを痛感させるその苦さは

 大人になり切れない俺には

 まだ早かったんだ。


職場あるある…といった感じになったかな。

そう思いながら書きました。

次話、22:00の予定です。

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