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飲めるあたたかさになるまで ――あなたの隣を歩きたい――  作者: 蒼宙 つむぎ


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4.Cafe Latte(2)

今日も読んでくださりありがとうございます。


2.リクルーター


「ふう……」

 会社を見上げ、大きく息を吐いた。

 久しぶりの出社。緊張が半端ないのだ。

(大丈夫。ちゃんと鏡で何度も確認したから――。ん?)

 何が大丈夫で、何をちゃんと確認したのだったか。

 考えようとしたが、足先がもぞもぞと落ち着かず、思考がまとまらない。

「大丈夫ですか?あ!もしかして!」

 急に後ろから声をかけられ振り返ると、明るめ栗色の髪とぱっちりお目目が可愛い女の子が立っていた。

(ん?存じ上げない方、だよね?)

 疑問がポコッと湧いてくる。

(“もしかして“なんて言われましたが、もしかしてどこかでお会いした?)

 “初めまして”と言いたくなったのをぐっとこらえた脳内の“知り合いリスト”を急ピッチで検索する。だが、やはり覚えていない。

(ここは、素直に覚えていないことを伝えて謝罪しないと)

「あの、ごめんなさ――」

 謝罪の言葉を述べようとしたが、言葉を遮られる。

「貴方、リクルーターですね!間違いありません!」

(ん?リクルーター?)

「いわゆる、会社訪問ですね!緊張しますよね~。でも、大丈夫です!先輩の私が案内します!」

 黒のスーツを着ていたので、就職活動中の学生と勘違いされたみたいだ。

「え!あの、ちが……」

「大丈夫!ゆいも~、初めてここに来た時迷っちゃって~。だから、君の気持ち、よくわかるんだ」

「……」

 訂正しようと思った。だけど、相手の善意を否定することが、ここで空気を止めてしまうように思えて、瑞葵はそのまま手を引かれて歩き出してしまった。


 ロビーに入り、社員証がないことに気が付き、内線で石川さんに連絡しようかと添え付けの電話機に向かおうとする。だが、“ゆい”さんがそれを遮る。

「あ、ゆいが連絡してあげますからね~」

 そう言って受話器を上げる。

「……」

(どうしようかな……)

 中に入ったら、私を置いて行ってくれるかと思ったが、“ゆい”さんはほっとけない性格のようだ。


 眉間に皺を寄せてどうしようかと思案していると、懐かしい声が聞こえた。

「子リスちゃん!」

 カレンさんが後ろから抱き着いてきて、思わずビクッとする。

(カレンさん!久しぶりに会えてうれしい……けど!相変わらず子リスちゃんって!)

 大先輩なので振り払えるはずもなく、ただただ顔が赤くなって硬直する。

「カレン、しゃん……」

(ああ……。噛んじゃった……)

 誰か、ここに穴を掘って!

 真剣に、切実に、お願い!

「かわいい。癒しが、帰ってきた……」

 カレンさんの声が、震えていた。

「ただいま、帰りました」

 私はそっと抱きしめられた腕に手を添えた。


「なに、あれ。知り合い?」

 “ゆい”さんが、そう言ってじっと見ていたことに、

 そのときの私は、

 まだ気が付かなかった。


明日も21:00に投稿します。

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