3.American size coffee(18)
少し遅れました。すみません。
18.君の笑顔のために
軽飛行機でニューヨークへ来た俺は目隠しとヘッドホンをつけさせられ、くるまに乗り込んだ。
行先はなんとなくわかっている。
目隠しする必要はないはずだが、この様だ。
「すみませ~ん。どこに行くんですか~」
わざと軽く言ってみた。
答えは――
「Be quiet」
ヘッドホンを少しずらし、耳元で小さく言われる。
(あ~、何も言うなってことか)
これ以上抗っても意味かないので、シートに深く座りなおした。そして目を瞑り、これからの動きを考える。
(俺ができること――やっぱりあのシステムのチェックだろうな)
命の保証は約束してもらった。だからと言って、何もせずにただ待つだけだなんてできない。俺なりの復讐がしたい、と思ってしまっている自分がいた。
(そして、あわよくば、彼女のことも確認出来たらいい)
車が止まり、トントンと腕に合図を送られた。降りろってことだろう。
ゆっくりと足を地面におろし、大地を踏みしめた。
(コンクリート。建物の中、かな)
腕を掴まれ、歩き出した。そして、肩をたたかれ、ヘッドホンが外される。
「目隠し取っていいですよ。明るいので、目をゆっくり開いてください」
すごく丁寧に説明され、言われた通り目隠しを取ってゆっくりと目を開ける。
(まぶしい!痛い!)
眩しすぎて目が痛く感じるのを初めて知る。
「ようこそ、久遠健太郎君。君の作戦、面白かったです」
さっきの声の男性が笑顔で話しかけてきた。
「え、あ、はい。ありがとうございます」
デニスさんとジェシーさんだけしか知らないと思っていたからびっくりする。
サミルさんのあぶり出し以降、俺は関知していないのできっとこの人たちが対応してくれたのだろう。
室内はどこにでもあるシステムエンジニアの部屋だった。
「健太郎君は我々のことはあまり深堀りしないようにね。あと柳さんから連絡が入ったから繋げるね」
そう言ってノートPCのモニターをこちらに向けてくれた。
画面の向こうには哲平さんを年老いさせた感じのダンディな人だった。
『君が久遠健太郎君だね。哲平の父の柳巌だ』
「初めまして。哲平さんにはお世話になっています」
『日本的な挨拶はいい。――まず、身の危険を感じさせて悪かった。それからあぶり出しの作戦は、悪くなかった。あとはそこでしばらく匿ってもらえ。以上だ』
「待ってください。俺は何をすれば」
『命の保証はしてやる。後はお前次第だ』
「俺次第――。それなら、ここで続きのチェックをしたいです。俺も何かしたいです」
そう言って返事を待つがなかなか声が聞こえない。通信が切れてるかと思ったが後ろで人が動いているのでそうではなさそうだ。
「あの……」
もう一度声をかける。
『君に何ができるというんだ』
「俺、気が付いたことがあるんです。“癖“とか、人が気づかない“ズレ”を見つけるの、得意なんです」
そう言って大きく笑顔を作った。
「……」
(無理だったか……。仕方ない)
「……やっぱり無理――」
諦めて身を引こうと言葉にしようとした時。
「いいだろう。その代わり、条件がある。期限は1週間。君が気づいたことは、一切の判断を挟まずこちらへ流せ。復讐をするなとは言わん。だが、私の盤上でやれ」
そう言って通信を切られた。
「……」
まさか意見が通るとは思わなかったので、放心してしまう。
「健太郎さん。席を作りましたので案内します」
そう言って、背後の書類の山に隠れているデスクに案内され、腰かけた。
(1週間ね。かなりやばいな。間に合うかな)
書類の山に手を置き、ため息をつく。
「健太郎さん、ありがとうございます。我々では時間がかかりすぎて困っていたんです」
「そうなんですね。まあ、かなりの量なので大変ですよね」
苦笑いが漏れたが、次の言葉で笑顔が消える。
「日本で頑張って振り分けてもらったんです。でも、あと少しのところで襲撃にあわれて……。続きは同僚の方がしてくれたので助かりました」
「……襲撃?それって――」
「確か、健太郎さんの同僚の方、でしたよね。彼らのためにも何としても終わらせたいんです」
一瞬、涙が出そうになるがこらえる。
(泣いている場合じゃない。俺ができることをするんだ)
「わかりました。すぐやりましょう」
そう言って仕様書を手に取る。
「ありがとうございます。それから、柳哲平さんから伝言いただいています」
そう言ってメモを渡してきた。
“3人は峠を越えた。安全な場所で治療中”
「っ!!!」
思わず、メモを握りしめる。
必ず終わらせる。
君の笑顔のために。
俺は顔を上げ、大きく息を吐き、モニターを睨みつけた。
残業が増えそうなので、明日は21:00に投稿します




