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飲めるあたたかさになるまで ――あなたの隣を歩きたい――  作者: 蒼宙 つむぎ


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3.American size coffee(17)

本日2話目です。

17.接見


 ポンッ

 エレベーターが到着した軽い音とともに女性黒服が入ってくる。

「失礼いたします。やなぎ いわお様をお連れいたしました」

 そう言って一人の男の名前を告げる。


 コツン コツン


 暗く物が何もない部屋。

 大理石の床をゆっくり規則正しく歩いてくる。

 ――背の高い、動く筋肉という表現が似合う男だ。

「久しぶりだね、巌。わざわざ来てくれてうれしいよ」

 そう言って右手を出す。

「あの番号がまだ使えるとは思わなかった。お前はここから出られないのだから会いに来るのは当たり前だろう」

 そう言って握手を交わす。

「覚えてくれていてうれしかったよ。こちらからは君たちのことは知っていたけどね」

「おいおい、怖いだろ。ストーカーか?」

「すまない。これくらいしか俺にはできないからね。大目に見てくれ。――で、どうする?」

「勿論、すでに手は打ってある」

 そう言って腕時計を見る。

(おいおい。腕時計を了承させてのか。怖いね)

「あと3時間で動きがあるだろう。あ、腕時計は事前申請出してね。ペースメーカーとリンクしているから外せない」

(基本、ゲストが重要施設に入る時は腕時計も財布も持ち込めないが、先手を打つところは変わらないな)

「3時間ね。丁度ランチタイムじゃないか……。早めに上で一緒に食べるかい?」

「そうだな。久しぶりに食べるか」

 強面の顔が、ほんの一瞬だけ柔らかくなる。

「巌、迷惑をかけたな。すまない」

「お前が悪いわけじゃない。部下が使えなかっただけだろ」

「耳が痛いな。その通りだけに何も言えない」

「何割だ?」

「0.7%だ。泳がせている。今回の関わってるやつらの中の一人は“駒”にした。新しい情報を更新できると思う」

「そうか。請求書を回す」

「本当にすまない。雪ちゃんも怪我したと聞いている。幸子さんとの子供だろ?」

「ああ、幸子の忘れ形見だ。片目が、もうない。だから、あいつらを許せない」

「そうか、本当にすまなかった。今は普通の病院に?」

「1時間前に意識が戻った。今頃うちの施設に移動中だろう」

「それなら、もう安心だな」

 巌が囲ったなら、俺が心配しなくてもいいだろう。

「あと、この件で各国を招集してもらいたい」

「“鍵”の所在か。すぐに手配する」

 そう言って右手を上げた。

「例のシステムはどうする?」

「哲平の部下が来ているだろう。しばらく預ける。使ってくれていい」

「あ~!あの小僧な!昨日は面白かったぞ!哲平のところで課題で提出したゲームをおとりにウイルスを仕込むなんてな。俺にくれ!」

「やらん。哲平の部下だし、俺の恩人の息子だ。諦めろ」

「ん~。本人を口説くか」

「勝手にしろ」

 そう言って軽く声をあげて笑う。


 にこやかな空気を黒服が来て遮断する。

「3時間後にオンラインでつながります」

 全ては3時間後だ。オンラインで見てもらうか。

「ゆっくりとブランチにしよう」

「わかった」

 そう言って二人並んでエレベーターへと向かう。


 巌。本当にすまない。

 お前たちを守り切れなかった兄を許してくれ。


明日は平日なので20:00の投稿のみとなります。

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