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飲めるあたたかさになるまで ――あなたの隣を歩きたい――  作者: 蒼宙 つむぎ


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3.American size coffee(15)

少し遅れました。

15.もう、戻れない


「そろそろ目を覚ましてください、サミルさん」

 遠くで声がする。


 プチッ、という何かを潰した音。

 直後に、鼻の奥を刺すような匂いが広がった。

 その匂いが強烈で一気に覚醒する。


「ぁあ!!」

 叫んでもがこうとするが、うまく声が発せられず動けない。一瞬訳が分からずパニックに陥りかけるが、一呼吸深く息を吸って落ち着く。

(確か、声をかけられて、気絶させられたんだ。落ち着け)

 今、椅子に縛られてる。そして、猿轡されてる。だが骨が折れたところはなく殴られてもいない。

「おはよう、サミルさん。縛っててすみません。話しが終われば解きますから」

 目の前の男が穏やかに話しかけてくる。

「あと、奥歯の毒、抜いておきましたから。もう安全ですよ」

(クソ!ばれてる)

 いざという時は奥歯を砕くように言われていた。

「あと、左胸のチップも解析させていただきました。最近は微弱な電磁波で心臓止めるんですね。勉強になりました」

 そう言って右手に持っていたチップを隣に立っていた黒服が持っていた銀トレーの上に静かに置く。

(チップもだめか……)

 息を吐き、ゆっくりと背を伸ばして男と目線を合わせる。男の左目は義眼だった。

「さて、状況は理解してもらえたようなので、猿轡を取りましょう」

 そう言って右手を上げ、後ろに立っていた黒服が猿轡を外す。

 口を動かし、ため息をつく。

「俺に何か用ですか?こんな扱いされる覚えはありませんが」

 まだ、ばれたとは決まっていない。

「あ~。そういうの、いいですよ。大事なのはこれからなので」

 そう言って黒服からアルミ製の小さな箱を受け取り、カラカラと横に振る。

(しまった。最後の一つも見つかったのか)

 男はにんまりと笑い黒服に箱を渡す。

「首の物も、勿論外しましたよ」

 これで、自害するのは無理だろう。諦めて、次の手を考える。

「これから、というのは?なんでしょう?」

 務めて冷静に。主導権は渡さないのが鉄則だ。

「はは。しっかりと調教されていますね。いいでしょう。単刀直入に聞きます。座標はどこです?」

「座標?どこのですか?自由の女神かな」

「ん~。もっとできる方だと思いましたが、小物でしたか。残念ですね」

 男は挑発してくるが、それに乗るほど馬鹿ではない。

「小物ですから、解放してくださいよ。こんなこと、世にもれたら大変なことになりますよ」

「漏れませんし、私たちは何物でもありませんから、ご心配なく」

 そう言いながら男が立ち上がり外に出ようとする。

(なんだ、これで終わりか。大したことなかったな)

 安堵のため息を小さくつく。早く帰りたい。

「あ~。あと、お母さまは上でお茶を飲んでおられます。ご自宅のチワワの“アクア”ちゃんと一緒にね」

 扉の前で振り返りながら男が小さく言い放つ。

「っ!!そんなはずはない!」

 母は俺の仲間に保護されているから大丈夫なはずだ。“アクア”ちゃんも俺にしか懐かない。

「はは!おめでたい人だ。君はすでにお尋ね者になっているというのに。我々がお母さまとワンちゃんを保護してあげているのですよ。感謝されたいくらいです」

「お尋ね者?」

「そう。君が寝返った~っていう情報をね。流しましてね。メール、開けましたよね?」

「開けた。だが、それはすぐに解除して……」

「本当におめでたい人だ。トラップだけに気を取られたのですか?」

「いや、そういう、わけでは……」

「ああ、いいんですよ。詳しくお伝えするつもりありませんから。で、座標は思い出しましたか?」

 男は相変わらず扉に体を向けている。外に出たら、そこで終わり、ということだ。

「わかった……。座標は、北緯37.……」

「結構です。では、これで」

 そう言って黒服に声をかけようとする。

「待ってくれ!わかった!言うから!北緯30.――」

 俺は彼らの望む座標を伝えた。これでよかったのか、正直わからない。でも、直観的に言うしかないのだと思った。


「ありがとうございます。では、これで」

「待ってくれ!母と“アクア”は!」

「だから、うえでお茶を飲んでいますよ。自由の身です。出て行ってもいいですよ。どうなるかわかりませんがね」

 いつの間にか、手足を縛るものが取れていた。後ろにいた黒服から、俺の持っていたスマホを渡された。

 “位置探索”の文字が表示されていた。

 自由の身だというが、それは違う。俺は、追われている。


 俺は両膝をつき、額を地面にこすりつけ乞い願った。

「……お願いが、あります。我々を保護してください。俺の知る限りのことを話します」

 俺は泣いてすがるしかなかった。

 母と“アクア”が守れるなら、俺がどうなろうとかまわない。


「いい心がけです。では、今から私たちと同じように名前を捨ててもらいましょう」

 悪魔が俺に笑いながらゆっくりと歩み寄ってくる。


 もう、ここから抜け出せないのだと、野生の感で悟った。


明日も2話頑張ります!

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