3.American size coffee(14)
本日に1話目です。
14.俺はできる男
健太郎が救急搬送され、一時は騒然としたものの、夕方の今はいつも変わらない落ち着きを戻している。
カチカチッ
――この無機質な音は嫌いではない。
仕事がひと段落ついたのでメールを確認する。社内メールが15件。その内、添付ファイル付きが5件で、3件がデニスからだ。
一瞬添付ファイルを開くかどうか迷うが、容量を見て左側の口角をニヤリと上げた。
(本当にこいつはだめな奴だな。ろくなハッキングもできないくせに、こんな解除簡単なものを3つも送ってきやがって)
カチャカチャカチャ……
俺は即座に仕掛けてきたハッキングを30秒もかからず次々と解除していった。
(俺を疑っているってバレバレだし。こんな奴がここの代表しているって、どこの馬鹿がトップなんだよ。でもまあ、おかげで好きにさせてもらっているけどな)
デスクに肘をつき、口元を隠す。最近は笑えることが多くて困る。笑い死にさせる気かと真剣に考える。
残りの添付配流はジェシーからだった。
“サミル~。健太郎に付き添うから私の仕事、手伝って~。午前中、保存したフォルダのURL送るから、続き、お願い!仕様書はデスクの上に置いているから。今日中に日本へメールしないといけないの。今度、おごるから! ジェシー”
(ジェシーからか……。どうしようか)
俺は少し迷ったが、添付ファイルは開けずにドライブのURLを開く。
(ファイルの容量は、日本のものだとしたら大したことないな。添付ファイルも問題なさそうだ)
カチカチッ
ファイルを開いてぱっと見は問題が見当たらない。日本からの依頼のデータはとにかく細かい。だから、多少大きくても許容範囲内だ。
(それにしても、ジェシーはいつの間に日本からの依頼受けていたんだ?)
少し腑に落ちないと思いながらもチェックをこなしていく。
(この日本からのデータは面白いな。単純なゲームだと思うがよく考えられてる。近々発売予定のものか?)
サミルはすっかりとその内容に引き込まれ、発売日には購入しようとまで思い始めた。
カチャカチャカチャ……タタンッ!
(よし完了!ジェシーに送るか)
“ジェシー 頼まれたものは完了した。おごり、期待する。あと、このゲームの発売日がわかったら教えてくれ。 サミル”
カチカチ
送信完了し、時計を見るとPM7:25、いつもより早いが帰宅しようと電源を落とす。
(今日は充実した一日だったな)
散らかったデスクを片付け、鞄を手にエレベーターに向かう。扉が開き、いつもの癖で乗り込む前に中にいる人や庫内の四隅を確認する。
(今日も問題なし。まあ、ここでは何も問題が起こったことないのだから心配しすぎか)
ふうっと息を吐き、目を閉じる。
(今日は家に帰ったら気に入っているサイトを確認しよう。今日こそはアクアちゃんが笑っているといいな……)
ビルを出て、車を止めているところまで歩きながらそう考えていると、路地から声をかけられた。
「Hey!」
ふいに横を向いた瞬間、腕を掴まれ視界の端でバチバチっと火花が散っているのが見えた。
まずい!
そう思った瞬間に意識が途切れた。
22:00も投稿予定です。




