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飲めるあたたかさになるまで ――あなたの隣を歩きたい――  作者: 蒼宙 つむぎ


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3.American size coffee(13)

今日はちょっと短めです

13.作戦と味方


 長く延ばされた音が大きく聞こえる。有名な医療系海外ドラマの救急車のシーンそのままの音だ。次の瞬間、車体が大きく跳ねた。


 ガタッガタッ


 俺の体が浮く。普通はベルトで固定するのだろうが、処置の必要がない俺はそのままだった。

「健太郎、乗り心地最高でしょ!滅多に体験できないから堪能してね~」

 頭上から気の抜けた言葉をかけられる。

「うるさい!」

 反論したが、マスクをつけられていて声が籠る。

「何を言っているかわかんないわ~。もう少しこのままでいて頂戴ね」

「どのくらいこのまま?」

 マスクをずらして尋ねる。

「空港でLight Aircraft(軽飛行機)に乗るまで」

 軽飛行機という言葉に、嫌な予感が引っかかる。

「まったく。一体どこに連れていかれるんですか……」

 身の安全を保障してくれとは言ったが、飛行機でどこに行くかは聞かされていない。だが、行先はニューヨークだろう。

「ジェシーさん、疲れたので寝ます。着いたら起こしてください」

 そう言って目を瞑った。


 そう、俺は泡を吹いて倒れたはずだが無事なのだ。

 なぜなら――、ケチャップもマスタードも、自分のポケットから新しいものを出して使ったからだ。


 わざとらしくテイクアウトすることを明かし、ターゲットをおびき出した。釣れるかどうかは賭けだったが、俺にダメージを与えられるチャンスがあれば仕掛けてくる可能性は高くなる。

 スパイとして怪しいと思われる人間は3人。だったら、そのうちの一人がランチに近づいたら、その人が9割がたターゲットだ。

 たとえケチャップやマスタードに何も仕掛けなくても、俺が泡を吹いて倒れたら騒がず冷静に周りを見ている人間が一番怪しくなる。

 だから泡を吹きだす錠剤を口に含み、倒れてみせた。本当に苦しくてもがいたから演技だと思われなかった。そして、サミルさんが釣れた。


 昨晩一睡もせず作戦を練っていたが、二人では不可能なので、デニスさんに信用できる人を引き入れることを提案した。

「誰か、俺たちに手を貸してくれる人、いませんか?」

「あ……。ジェシーだな。あいつなら大丈夫だ」

「なぜですか?」

「ジェシーは……。樹に惚れている。今回の日本で起こったこと、許せないって泣いていたからな」

「……あの、ジェシーさんは、男、です?」

「ああ、心は女だから、間違えると殺されるぞ」

(うん。細かいことはあとでゆっくり考えることにしよう)

「では、ジェシーさんに連絡とって作戦を伝えましょう。決行は明日のランチです」

 ジェシーさんは夜中に連絡したにもかかわらず、すぐに了承してくれ、今朝の出勤からの行動となる。

 ここまで上手くいくとは思わなかった。後は次の仕掛けだ。

(してやったつもりだろうが、ここからが勝負なんだよ)


 昨晩寝ずに考えた作戦はこれからが本番だ。


明日は20:00と22:00に投稿予定です。

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