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飲めるあたたかさになるまで ――あなたの隣を歩きたい――  作者: 蒼宙 つむぎ


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2.My first café au lait(3)

投稿、少し遅れました。すみません。

本日2話目の投稿です。

3.ほろ苦い味


「山本さん~。お願いがあるんだけど……。この一次チェックの残り、明日までなのだけど、急用ができちゃったの。ついでにお願いしていいかな?」

「あ……。えっと……」

 定時5分前、同期の田所さんに声をかけられて返答に少し困ってしまった。自分も抱えている仕事が期限ギリギリだったから。

 周りを見ても聞こえていないふりをする人たちでこちらを見ようともしない。


 はあ……。これは、いつもの感じだな……。


「……わかった……。そ、それじゃ、またいつか私の」

「ありがとう!山本さん。いつも助かる!」

 私が勇気を振り絞り言いかけた言葉を遮り、彼女は感謝の言葉を述べ、仕様書を私に手渡し、足早に去っていった。帰り支度も終わっていたようだ。

 彼女が向かった先にはほかの同期達が集まっており、どうやらみんなでどこかに行くようだ。その中に、久遠君の後ろ姿もあった……。


「……」

 みんなの姿を見たくなく、仕様書に目を落とす。

 視線の先の文字が少し歪んで見える。

 ――だめ。ここで泣いちゃ。気にしない。

 自分に言い聞かせるが、やっぱりちょっと辛くなる。

(何か、みんなの気に障ること、しちゃったのかもしれない。気が付かないうちに、何か……)

 自分が悪かったのかもしれないと思うことで自己防衛しているのだという自覚はあるが、今の私にはそれができる最善だった。

 同期が集まるという連絡は受けていなかったが、その理由を知る勇気もないからこのまま何も「知らなかった」で終わらせようとPCのスリープモードを解除した。


 時刻は21時を過ぎ、仕事に目途がついた人たちは帰宅の途についているので残っている人は少ない。私も田所さんの仕事が終わったので、自分の仕事にとりかかろうとした。期限まではあと2日。少しでも前に進めておきたい。

 期限に間に合うようにリスケをし、効率を少し上げる方法を模索していると1年先輩の西尾先輩がカフェオレを差し出して声をかけてきた。

「瑞葵ちゃん、頑張りすぎはよくないよ。断りを入れることも大事よ」

(ああ、先輩は見ていたのかな)

「……はい……。あ、カフェオレ、ありがとうございます」

(見ていたのなら、その時に声かけてほしかったかな……)

 胸にもやっとした感情が起こる。でも一番いやなのはこんな自分だ。いつまでも甘えてちゃいけない。

 後ろ向きな感情を振り払い西尾先輩に向き合う。

「本当は、あの時に声かけようと思っていたけどね、社長に止められてね。様子見ようって」

「哲平社長が?」

「そう、もうすぐ入社して半年でしょ。評価査定があるのよ。彼女、仕事に対しての姿勢がね……それに、ちょっとね……」

 含みのある言い方が少し怖くなった。入社半年で正式採用になるかの評価査定が行われるのだ。

(“アースプロジェクト”は実力主義と聞いたことがある)

 急に先輩の言葉が怖くなった。

「えと……。私も、ふるいにかけられます……よね」

「あなたの仕事、私たちは評価してる。いつも丁寧だし、早いもの。次の段階の仕事、任せたいと思ってるわよ」

 思わぬ言葉に胸が詰まった。見てくれている人がいる。ただ、それだけだが、瑞葵にはとても大きなことだった。

「あ、ありがとう、ございます」

 うれしくなり感謝を述べたが、同期への評価を耳にしてしまって複雑な気分になった。

 このことは、胸の奥にしまっておこう。できることなら忘れよう。


 入社半年の締めくくりの研修は、1週間後だ。


 社内予定表の管理画面を見ながらいただいたカフェオレを少し口に含む。

 少し熱く、無糖でほろ苦かった。

 その味が、今の自分みたいだと思った。


読んでくださりありがとうございます。

明日も2話投稿する予定です。

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