3.American size coffee(12)
今日は短めです。
最後まで一気に読んでください。
12.ターゲット
「おはようございます」
健太郎が眠そうに出勤してきた。のんきに欠伸をしている。
(危機感を感じていない日本人は愚かだな)
そう思い、ほんの少し右の口角が上がる。
(馬鹿な奴らで、こっちは仕事がしやすいがな)
すぐに無表情に戻し、空気のような存在へと落とし込む。
「ジェシーさん。今日はTO GOの美味しい所教えてください~」
ランチタイムになり、締まりのない顔で健太郎が話している。
(ジェシーが行くところは限られているから、もう一度脅しておくか。健太郎は感がいい奴だから、退場してもらう)
どのケチャップとマスタードに仕込みをするか……と考えながら爪を噛む。苦しんでいる姿を見るのが楽しみで、笑いを止めるのが難しい。
「健太郎!こっちで食べよう。飲み物はどうする?」
「あ、自分で入れます。触らないでください」
真顔でジェシーを制止してカウンターへ向かう二人。
(馬鹿な奴らだよ。隙だらけだ。さて、お楽しみの時間だ)
仕込みが終わったものを手に持ち、テーブルに近づく。ご丁寧にケチャップとマスタードが出ている。
(本当に平和ボケした奴だな。世界の現状を教えてやらないとな)
薄手の使い捨て手袋をはめた手で、持っていたものと入れ替える。
(さて、どこで見学するかな)
これから起こることを想像して思わずにやける。
「健太郎、ここのホットドッグはケチャップとマスタードはたっぷりかけるのが一番おいしい食べ方よ!早く食べましょう!」
「ええ~。つけすぎでしょう!でも、美味しいならいいか」
二人とも封を開けてしっかりとつけて口にする。
(さて、どっちが当たりかな~)
コーヒーを口にしながら二人を眺める。腕時計で時間を確かめる。カウントダウン1分だ。
ゲホッ!ゲホッ!ゲホッ!
健太郎がむせだした。
(ビンゴ!おめでとう、健太郎)
拍手喝采したいところだが我慢だ。
「健太郎!ちょっと!どうしたの?」
ゲホッ!ゲホッ!
苦しそうに咳き込んだ後、首に手を持っていきうつむく。
(今回はちょっと早めの効きだな。後で報告だな)
ゲホッ!!
大きく咳き込んだ後、膝から崩れ落ち、泡を吹き始めた。
二人の周りに人だかりができてざわつく中、何食わぬ顔で自席に戻る。
(ああ、あの顔。最高だ!)
デスクに肘をつき、手で必死ににやける顔を隠す。
(大声を出して嘲笑いたい)
遠くからその様子を見ていたデニスは確信して呟く。
「ターゲットはサミル、だな」
明日も20:00に投稿予定です。




