3.American size coffee(11)
今日は瑞葵sideです。
11.どうして ~瑞葵side~
ピ……ピ……ピ……
何の音だろ。規則的に、何かが鳴っている。
「ん……」
体が、重い。
瞼が、言うことを聞かない。
「……んん!!!」
何?息が!しにくい!
「山本さん!気が付きましたね!カニューレ抜くので、苦しいの少し我慢して!」
「先生!山本瑞葵さんが意識戻りました!」
「カニューレ、抜きます――」
ゲホッゲホッゲホッ!!
喉の奥から太めの管が抜かれ、苦しさのあまり咳き込み涙が止まらない。
何が起こっているかわからず、怖くて体をよじろうとするも手足の自由がない。白い包帯が見える。いや、ギブスだ。
「これは……」
言葉を発したくてものどの痛みと渇きでうまく喋れない。
「山本瑞葵さん、無理して話さなくていいですよ。もうすぐ先生が来ますから。ゆっくり息をしてください」
涙を浮かべ、首肯するしかできない。ゆっくり息ができるようになり、目を開けると白い変な模様がある天井。そして、カーテンと真っ白なシーツに手足のギブス。
(病院だわ……)
私は、覚えている最後の場面を思い出そうとしていた。
「お兄ちゃん、送られてきたファイルなんだけど、1つ多い?」
「ん?多い?今見てもらうのは9個だよね?」
「うん。資料には9個になっているけど10個あるよ」
「瑞葵、それ、触らないで。もしかすると――」
「樹さん、ごめんなさい……。私の方も数が多いけど、開けちゃいました……」
「え!いつ?今?」
「10分前に……」
「まずい!瑞葵と雪ちゃん。すぐに家を出るぞ!」
「え?何?家を出る?」
急に家を出ると言われ、何か持って出ようとする。
(スマホは、使えないけど一応持って出ようかな?)
そう思い充電しているキッチンに向かう。兄はカーテンを少し開けて外を見ているようだ。
(お兄ちゃん、急になんだろ。変なの)
のんきにそんなことを思って充電コードを抜く。
「瑞葵!雪ちゃん!伏せろ!」
樹がこっちに向かいながら叫んでいる。
伏せる?
なんで?
兄が手を伸ばしている。
雪ちゃんもこっちに向かってくる。
目に見える二人の動きが、スローモーションのようにゆっくりと見える。
「え?」
ドオンッ!!
大きな音と一緒に私は後ろに吹き飛ばされ、気を失った。
それが最後に見た光景だった。
「お、お兄ちゃん!雪ちゃん!二人は!?」
今の状況からいろいろと不安になり、肘をついて体を起こし叫ぶ。
「山本さん!落ち着いて!先生が来るから。ね」
そういって看護師さんがギブスから出ている指を握ってくれる。でも、今欲しいのは握ってもらうことではない。
「看護師さん。二人は?私の大切な二人は?」
(怖い。お兄ちゃんと雪ちゃんの姿が見えない。どこ?)
部屋を見渡す。でも、機械が一杯で、隣のベッドは見えない。
(嫌だ。置いて、いかないで!)
気が付いたら涙を流して喚いていた。
「山本さん!こっち向いて!ドクターの佐々木です。深呼吸して」
「先生!兄と友達が!」
「うん。今から話すから、落ち着きなさい。話せないだろ」
先生は取り乱す私に一喝した。
「……はい」
そういって、ベッドに体を預けた。
「よし、落ち着いたね。まず、兄の樹さんはまだ意識が戻っていない。友人の女の子も意識が戻っていない。二人とも奥のベッドにいる」
「意識、が、ない?」
「ああ、二人とも君を庇うようにして倒れていたらしい。君は足を骨折、腕はヒビが入っている。だからギブスしている」
「庇って?」
「そうだ、女の子も手足を骨折してる。君の兄は、ところどころガラスが刺さっていてね、縫合は完了した。後は意識を戻るのを待つ」
先生の声はなんの感情もなく、ただ事実を述べた。
「二人を、二人の姿を、見たいです」
「そうか、立ち上がるのは無理だが、ベッドの背を上げよう。少しの時間だけだ。いいね」
そういってリクライニングをゆっくり上げてくれた。
「左の一番奥。君のお兄さんだ。その隣が友人だ」
そういって指さしてくれる。
二人は――
いろんな機械と管につながれていて、顔や手が紫に変色している。
「う……」
どうしてこんなことになったのだろう。
私は唇を噛みしめ、泣くしかなかった。
明日も20:00に投稿予定です。




