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飲めるあたたかさになるまで ――あなたの隣を歩きたい――  作者: 蒼宙 つむぎ


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3.American size coffee(7)

本日2話目です。

7.違和感


「美味い!」

 久しぶりの日本食だからだろうか、サバの塩焼き定食はかなり美味しく感じた。

 ジャガイモと人参とこんにゃくの煮物も美味しい。

 ただ、だし巻きだと思っていたものは甘い卵焼きだった。

「……」

 だし巻きじゃなかったとしても、卵焼きは醤油や塩の味付けが好ましかった。

(醤油、1つ渡さなければよかったかな)

 少し後悔するも今さらなのでパクパクと食べた。


 ざわざわざわ

 食事をするカトラリーの音が消え、どこかで人が集まっている気配がした。

 何かあったのかと覗くとさっき醤油をあげた人が倒れている。口から泡を吹いているようにも見えるが、何があったのかはわからない。

「何があったんですか?」

 近くの人に声をかけた。

「あいつ、急に倒れたんだよ。泡吹いてるし、近づかない方がいいってみんな言ってて」

「救急は?誰か呼んだんですか?」

「誰かが911にコールしてた」

「そうそう。レスキューから近くには寄るなって指示あったよ」

 次々と周りの人が情報をくれる。2次3次被害を防ぐためにも専門のレスキューが来るまでは近づけない。ただ、このまま何もしないのも気が引ける。

(醤油をあげただけの付き合いだけど、せめて横向きに寝かした方がいいかな……)

 そう思い、彼に近づこうとするとジェシーさんに肩を掴まれてしまった。

「健太郎、今君が行っても何にもできない。ここで待ってましょう」

 確かに、俺は何もできない。でも、一人は心細くないだろうか。せめて傍に寄り添うだけでもいいのでは、と思ってしまう。

「寄り添うのがいいとも限らないわよ。日本人はそうしないと人間性を疑うって思うらしいわね。でも、それは違う。今の状況は明らかにそばに寄ってはいけないわ。待つのよ」

 今度は腕をきつくつかまれたのでどうにも出来なさそうだ。

「わかりました。でも、なんで倒れたんでしょう?」

「そうね、泡を吹くっていうのは一種の中毒症状かしら。毒性のもの?刺激物だったら周りも何人か倒れるはずだから違うと思うし……」

「確かに日本でも刺激物で多くの人が亡くなったことありました。そうか、空気中のもので倒れたわけではないのなら、何かを飲んだり食べたり?」

「そうね、口にしたもの、が原因ね。あ、レスキューが来たわ」

 倒れた人に声をかけ意識がないようだ。ストレッチャーで運ばれていく人が無事であることを祈るしかない。

 呆然と立っているとデニスさんが顔を青くして駆け寄ってきた。

「健太郎!君は大丈夫なんだな。よかった」

「デニスさん。俺はなんともないですよ。心配するならさっきの人に……」

「ああ、勿論彼のことは心配だが、健太郎は日本から預かっている人間だから心配するよ」

 なるほど、哲平さんの手前、俺に何かあってはいけない。だから心配するのだと思った。

「ありがとうございます。でも、何もないので大丈夫です。あ、お昼からは普通に仕事する感じですか?」

「あのテーブルは封鎖だな。でも、ほかに被害は見当たらないから通常通り仕事はする。健太郎は自席に戻って仕事な」

「なるほど、わかりました。戻って仕事します」

 そういってカフェテラスから出ようとした。

 ふと気になり問題のあったテーブルを見ると、渡した醤油は封が切られて使ったように見えた。


「……」

 自席に戻ってモニターや仕様書を見ても、さっきの醤油が気になって仕事に身が入らない。

 あれは、醤油だったのだろうか――。

 何かが引っかかる。

 まるで、喉に魚の小骨が刺さったかのような変な違和感だけが俺の心に残っていた。


明日も2話投稿できるように頑張ります。

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