表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
飲めるあたたかさになるまで ――あなたの隣を歩きたい――  作者: 蒼宙 つむぎ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/63

3.American size coffee(6)

健太郎視点に戻ります。

6.日本が恋しい


 今日は一応休日を貰ったが外出を許されず、結局PCを触っていた。かといってネットサーフィンも禁止、オンラインゲームの禁止。1時間も経たないうちに何もできないとあきらめてデニスさんの家の敷地内をランニングし始めた。ペースは上げず、ゆっくり1時間。軽く汗をかいたので少しストレスは発散できた。

(この後、何するかな)

 時間をつぶすのに何をしたらいいのか、それに悩むなんて思わなかった。これまでいかにSNSやネットに頼って生きてきたのかが痛いほどわかる。

「健太郎、ほんとDVDとBlu-rayならあるぞ」

 デニスさんにそういわれて書棚を見ると、本は勿論英語で書かれており、DVDやBlu-rayは日本語字幕なんてなさそうだ。

「……」

 いい加減日本語に触れたい。

 ていうか、日本に帰りたい。



 ピピピピピピ……

 AM.7:00

 アラーム音で意識が浮上するも瞼が持ち上がらない。

 今日は休日明けの出勤日。サンゼノで暮らし始めて10日が経つが生活になれたとは思えない。


「健太郎、起きろ。朝食だぞ」

 デニスさんが二度寝してしまった俺を起こしに来た。朝食といってもお味噌汁や白米はない。トーストにソーセージ、コーヒーが朝食だ。

「……」

 これが毎日続くと精神的にきつい。

(だし巻き卵が食べたい。煮物が食べたい)

 鰹節と昆布でとっただしが恋しい。

「デニスさん、日本食が食いたいです。ランチは日本食食べに行っていいですか?」

 会社からは少し離れたレストラン街に日本食のお店があると聞いていたので許可をお願いした。

「あ~。ちょっと遠いな……。デリバリーで頼んでみるか」

「俺、デリバリーでもいいので、日本食が食いたいです!」

「わかった。今日はラーメンにするか?」

「……嫌です。きっと伸びてますよね。しかも俺は日本食がいいんです。俺の中ではラーメンは日本食ではなく、ラーメンという部類です。一緒にしないでください」

「健太郎……。お前、変なこだわりあるのな。こだわりありすぎると嫌われるぞ」

「大丈夫です。彼女はこんなことで嫌ったりは……」

「ほ~。彼女?ガールフレンド?それとも?」

(しまった。彼女って言ってしまった。付き合ってはいないから彼女じゃないのに!)

「違います。友達です。特別な人……にはまだなっていませんから」

「まだ?これからってことか?誰だ?日本の女の子か?」

「……」

 ちょっとウザ絡みし始めるデニスさん。面倒なので無視しても問題ないだろうか思案する。

(……無視していいな。プライベートは踏み込ませたくない)

 意を決し、にっこりと笑みを浮かべ、無言でコーヒーを飲む。


 出勤後、デニスさんに定食屋のメニューを受け取り注文をお願いする。定番の焼き魚定食。今から楽しみで仕方ない。ついつい鼻歌を歌っていた。

「健太郎、ご機嫌ね~。どうしたの?」

 ジェシーさんが話しかけてくる。

「あ、今日のランチは日本食を食べるんです」

「ここからだと遠いでしょ?」

「デリバリーですよ。世の中、便利ですね」

 そう言って仕様書の山から1つの束をデスクに置き、読み始めた。

 お昼が楽しみすぎて、少し大きな声で話をしていたが、後悔しても時間は戻らない。


「健太郎、デリバリーが届いたぞ」

 デニスさんに呼ばれて顔を上げる。

(待っていました!)

 俺は浮かれていた。久しぶりの白米とみそ汁。楽しみで仕方がなかったのだ。

 カフェテラスに受け取ったばかりのランチを持っていき飲み物を用意するためにカウンターへ向かった。

 緑茶が飲みたいところだが、ここには勿論ない。紅茶をストレートで飲むかミネラルウォーターしかないなと思い、紅茶を入れることにした。

 カップにお湯とティーバッグを入れて席に戻る。

 すると何人か集まっており、これは何かと質問が次々と投げられた。

「これはサバの塩焼きです。こっちは煮物。お味噌汁でしょ。こっちはお漬物で、これが白米です。この黄色いのはだし巻き卵かな」

 一通り説明し、お箸などの付属物を脇に出した。

(ん?お箸が2膳?デニスさんも頼んだのかな?醤油も2つ?焼き魚とだし巻き用?)

 不思議に思いながらも深く考えず割り箸を割った。

「健太郎、これは?」

 醤油を指さすギャラリーの一人が興味を持ったらしい。

「醤油です。日本ではよく使う調味料です。いりますか?俺、使わないので」

 そう言って2つとも手渡した。

「ありがとう!日本の調味料、気になってたんだ!」

 そう言って自分の席に戻っていった。

(醤油、1つは持って帰ればよかったかな?何かに使えたかもなのに)

 そう後悔したが、この後俺は違う意味で後悔することになった。


22:00も投稿予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ