3.American size coffee(2)
日本とアメリカの違いを強く感じるお話しです。
2.後悔
「アメリカなのに、不思議な街だなあ……」
大きすぎず、でも小さすぎない街。俺は思わず思ったことが口に出ていた。
「健太郎、面白いか?」
「ジンさん。ええ、面白いです」
「それはよかった。きっとここを気に入るよ」
そう英語で言葉を交わし歩みを進めていくジンさんは、黒服に身を包みあまり特徴のない人相の人だ。
ロサンゼルスから、カリフォルニア州サンノゼまで連れてこられた。
直行便を使えなかった理由は、ただ「セキュリティのため」だと言われた。きっと腕に埋められたチップが関係するのだろうが、これ以上は追及するなと本能が警鐘を鳴らす。
(俺は欠員補充のサブで来たんだ。だから何も深入りは、しない)
「よく来たね、健太郎。デニスだ。ここの代表だよ」
そう言って握手を求められた。
「健太郎です。哲平さんからサブと聞いてやってきました。よろしくお願いします」
「……サブ、ね。よろしく」
何か含みのある言い方をされたような気もしたが、一種のアメリカンジョークと思うことにしてにこやかに笑った。
「住居はここから近くの俺の家の1室だから。徒歩圏内。いい環境だろ?後でジンに案内してもらって。まず、軽く面談しよう」
そう言ってカフェテリアに向かった。ここも“アースプロジェクト”とは違う。いや、日本とは違って、Keurigと書かれているコーヒーメーカーがある。
「健太郎は何を飲む?コーヒーかい?」
「あ、はい。何があるのかな……」
Regular(普通)
Dark Roast(深煎り)
Decaf
(3種類?)
「健太郎ならRegularじゃないかな。甘めがよければそこにいろいろ揃っている」
「わかりました」
そう言ってカプセルをセットした。カップは……この大きさは日本ではラージサイズだけど、ここでは一番小さい。
「……」
「健太郎?小さいのでいいのか?遠慮するなよ?」
「あ……。はい」
(遠慮はしてませんよ。デニスさん)
仕方なくカップをセットしてボタンを押す。出来上がったコーヒーを持ち上げ眉間に皺を寄せた。
香りはいいが、量が半端ない。
(減る気がしないな……)
日本とはやっぱり違うな……と感じ、ひとくち口に含む。
「……」
眉間にできた皺が一段深くなる。
(なんというか……大雑把な味。飲めなくないが……ずっとは無理だな)
飲み物に関しては要改善だと脳内メモに残した。
「健太郎、こっち」
面談が始まるようだ。
「はい」
デニスさんの向かいに座り背筋を伸ばす。
「健太郎は英語は問題ないね。よかった」
「はい。母がスイス人ですのでドイツ語も少しなら話せます」
「それはいい!ドイツにも友人がいるからね。今度紹介するよ。ところで、ここでのやることは聞いたかな?」
「詳しくは聞いてません。機密事項があると聞いています」
「うん。かなり厳重に管理が必要でね。先月、ここから情報漏洩があったことがわかってね。君には一旦バグを見てもらう。修正箇所も探してもらう。そこからどうするかはその出来次第だ」
「わかりました。いつから取り掛かればいいですか?」
「明日から。今日はいくつか書類にサインして部屋にかえって休んでくれ」
そう言って書類を手渡され、デニスさんはどこかに消えていった。
(説明も大雑把なんだな……書類は、文字ちっさ!)
いろいろツッコミどころ満載だがこれが普通なのだろうと諦めることにした。
サインをした後、書類をデニスさんに渡しに行く。サインを見たデニスさんがにんまりと笑ったのが引っかかるが早く休みたい。部屋を後にしようとすると後ろから声をかけられた。
「わざわざアメリカまで来てくれてありがとう。哲平にお願いしてよかったよ。よろしくね」
気持ち的に何とも言えなくなり思わず苦笑いして退室した。
部屋を出るとさっき入れたコーヒーを持ったジンさんが待っていた。
「行きましょう」
そう言ってカップを手渡され、出口に向かう。
「はあ……」
大きなため息が出る。
何もかもが日本と違い、帰りたくなる。
あの日飲んだミネラルウォーターは甘く感じたのに
今は薄く雑な味しかしない。
目をつむると彼女の姿が浮かんでくる。
カフェオレを両手で持って飲んでいる姿が。
「しまった……。写真撮っておけばよかった」
思わずその場でしゃがみこんでしまった。
明日も20:00に投稿予定です。
1/15(木)と1/16(金)は23:00に投稿できるように頑張ります。
早く仕事終わりますように…。




