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飲めるあたたかさになるまで ――あなたの隣を歩きたい――  作者: 蒼宙 つむぎ


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2.My first café au lait(19)

瑞葵の感情が揺れます。

 19.シュガーレスのはずなのに

 

 健太郎君から話しかけられたあの日から、胸がざわざわする。


「瑞葵ちゃん、今日もかわいいピアスつけてるね」

「瑞葵ちゃん、コンビニで好きそうなのが出てたから、これ食べてみて」

「瑞葵ちゃん、チョコレート、どうぞ」


 いったい何が起きたのだろう……。

 どうしてこんなに健太郎君が話しかけてくるのか、全くわからない。



 理解できないことが続くと人は立ち止まってしまうのだと初めて知った。

 扉一つ開けるのにも一旦立ち止まって深呼吸をしてしまう。

 目立ちたくない。

 人から注目されるなんて、怖すぎる。

(今日は、話しかけられませんように)

 そう思って、ドアノブに手をかける。

(大丈夫。この扉の向こうには健太郎君はいないはずだから)

 そう思って手に力を入れる。

「瑞葵ちゃん、どうしたの?その扉開かない?」

 まさかの後ろからご本人登場でした!

「にゃう!」

 びっくりしすぎて、何かの動物みたいな声が出てしまった。

「瑞葵ちゃん、猫みたいでかわいいね」

(猫みたいでかわいいって!なになに!え?私は猫だったの?)

 恥ずかしすぎて思考もおかしなことになるし、顔が熱すぎる。

 涙が今にもこぼれそうなくらい湧き上がってくる。

「わわ!どうしたの?何かあったの?つらいこととか?俺、話聞くから泣かないで!」

 そういってゆっくり顔を近づけてくる。距離が!近すぎる!

(問題なのはあなたの行動です!なんて言えない~)

 何も言えず首をふるふると横に振る。鼻もツンとして痛い。

 持っていた資料の紙の束をギュッと握りしめ、顔を隠すしかできなくなってしまった。

「健太郎、いい加減やめろって。瑞葵ちゃん困ってるだろ?デリカシー足りてない」

 小山君が声をかけて助けてくれた。

「瑞葵ちゃん、ごめんね。こいつバカだからさ。悪い奴じゃないから、大目に見てやって」

 そういって健太郎君を引きずってどこかに行ってくれた。

(よかった……。これで哲平社長に渡せる)

 頼まれた資料を渡すために社長室にやってきたのに、危うく逃げ出すところだった。

 ふうっとため息をつき、握りしめてよれてしまったところを撫でて伸ばそうとするが、手汗がひどくて悪化してしまう。

「……」

 服で手をこすりつけ、少しでも手汗を何とかしようとするが、きっと意味のない行動だろう。

(困ったな……)

「瑞葵、もう百面相は終わりか?資料、寄れてていいから渡してくれ」

 哲平が扉を開け、笑いをこらえ肩を震わせて話しかける。

「にゃい!」

 また、変な言葉が出てくる。もう、今日はだめだ。

 諦めて、素直に資料を手渡し、とぼとぼと自席に戻ろうとすると、哲平からもう一度声をかけられる。

「子猫の瑞葵、資料ありがとうな」

 そして持っていた書類をさっと抜き取り部屋に入って行ってしまった。

 1人取り残された瑞葵は疲れ切ってしまいカフェテラスへトボトボと向かった。


 備え付けの使い捨てカップにカフェオレを入れ、テラスに出る。カレンから教えてもらった時間帯なので人がいない。

 椅子に座ろうかと思ったが、植木の奥に隙間があるのが見えた。そこなら座っても誰も気が付かないだろう。

 周りを確認し、座り込む。自身からも植木の向こう側が見えない。瑞葵は安息の地を得た気分になった。


 蓋をあけ、カフェオレに口をつける。

 熱い。

 全く飲める気がしない。

 息を吹きかけもう一度口をつけた。

 シュガーレスのはずが甘く感じる。

 この甘さに慣れる日が来るのだろうか。


 自分のことを

 健太郎が探しているとは知らずに

 2人はすれ違ったままだった。


本時も読んでいただきありがとうございます!

少し短め…でしたね。

明日も投稿予定です。

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