2.My first café au lait(18)
投稿が遅くなりました。すみません。
仕事で…。
予約投稿ですが、確認できる時間にしたかったのでこの時間でした。
今日は健太郎sideです。
18.いつか、俺だけを見てくれませんか ~健太郎side~
「健太郎、今日のミーティングに来い。こっそりな」
哲平から声がかかった。
いつもの社長チームのミーティングに参加させてもらえるみたいだ。
「はい」
しっかりと返事をして時計を見た。
あと30分で始まる。急ぎスケジュール管理ツールにミーティング参加を追加する。それまでに切りのいいところまで進めようとモニターに食らいついた。
最近、仕事で何か物足りなさを感じていた。自分のスキルが上がって、ではない。仕事の量が足りない、というわけでもない。ただ、何かが自分の中に足りないのだ。
「はあ……」
ついついため息をついてしまう。
「健太郎、最近ため息多くなったな」
小山がコーヒーを飲みながら話しかけてくる。ため息のことを指摘されて焦った。
「多かったか?」
「自覚なし、か。……お前、瑞葵ちゃんから坂口に乗り換えたの?」
「はあ?何それ!」
小山の発言にイラっとした。坂口に乗り換えるとか意味がわからない。
「だって、坂口と抱き合ってたんだろ?そこで」
そういいながら顎でカフェテラスを示す。
「抱き合ってもないし、坂口には変な感情はない」
本当にイラつく。俺は彼女一筋なんだ。
「でも、見たってやつがいたぞ。あ~テストプレイの後だ!」
テストプレイの後。その時は坂口を慰めていた時に違いない。
だが、それを言うのは坂口のことを考えると気が引ける。
どうしたものか……。
上手く言えそうになく黙り込んでしまうと、小山はあきれ顔で俺の心をえぐる言葉をかけてきた。
「お前、その変な優しさ、誤解される元。本当に大事なもの、逃げていくぞ。お前が優しいのはわかるし、ほっとけないって思ったんだと思う。けど、距離は大事。近すぎると周りが誤解すんだよ。気をつけろよ」
言い返せなかった。あの時の俺の考えのない行動が周りを誤解させたんだ。もしかしたら、彼女も同じように思っているかもしれない。
(くそっ!)
自分の愚かさに嫌気がさす。彼女がどう思っているかはわからないが、俺自身が嫌だと思った。
(誤解されたくない。どうにかしないと)
握りこぶしが白くなるまで力んでしまう。
そんな時、ミーティング開始5分前のアラートがポップアップで知らされた。
なんの解決策も思いつかず、気持ちが沈んだままノートPCを持って移動した。
ミーティングルームに着くと、月初めということもあり多くの人が集まっている。
総務や経理の人もいるようだ。哲平から人目につかないようにと言われていたのでまぎれるにはちょうどよかった。
「ミーティングを始める。まずは報告を石川」
哲平の一声で一気に空気が引き締まった。
流れるような応答、的確なアドバイス、全く無駄がないミーティング。
圧倒された。
(俺が参加したことある会議で一番楽しく感じる。この空気、最高にいい!)
他の会議が悪いわけではない。だが、どちらが好みかと聞かれれば圧倒的に今の会議だ。参加者も無駄な発言ではなく、意見や思いをきちんと言葉にしている。日本人特有の“みんなと同じです”という人が少ないからだろう。
そろそろ終盤という雰囲気が哲平の腕時計で時間を確認したことで流れた。退室するためにノートPCを閉じようと手をかけたその時、一人の先輩が声を上げた。
「社長、実は今組み立ててるところで相談が」
先輩の池田さん。センスがあり社長チームにプログラマーとして入るのが過去最短の人だ。
どうやら、今組み立てているところに自身が何か物足りないと感じているようだ。共有された画面を見るが、俺には何がいけないのか全く分からない。ほかの人も同様な意見のようだ。
哲平はどう思ったのか気になり見てみると、肘を組んだ足につき、ふっと柔らかく笑っている。その視線の先には彼女がいた。瑞葵も哲平と視線が合ったようで何か言いたそうな顔をしている。少しうつむいたかと思うと、小さく息を吐いて控えめに挙手をした。
哲平が彼女に発言するように促すと、彼女の口からは今までの彼女とは違う自身の意見が紡がれた。
「はい。あの、すごくきれいな組み立てで、いいと思います。――あの、そこで、真ん中のところを、半拍置く、のはどうでしょうか?その、引き立つ、気がするんです」
口調は今までとあまり変わりはない。だが、これは彼女の感じたことを丁寧に伝えた言葉で、彼女は――ふんわりと柔らかいのに、芯が一本通ったような、そんな強さを感じる。
モニターで提案を組み込んだ後のシミュレーションをし、みんなで確認した。たった半拍、それだけで大きく世界が変わったような気がした。自分がこれを思いついたことがなかっただけに、彼女のセンスや能力の高さを実感する。
ふと、彼女を見ると、瞳に光を含んでいる……ように見えた。
瞬きをしてもう一度彼女を見る。
間違いない、自分の考えに自信を持っている顔だった。
その横顔が、かわいい印象から大人の女性に変わりつつある。
「瑞葵ちゃん!すごいわ!これだけで引き立つ!社長もそう思いませんか?」
「そうだな、引き立つ。これで行こう」
池田さんと哲平のこの言葉に一気に室内の気温が上がった。
ゲームに息が吹き込まれた瞬間だと思った。
そして彼女は、小柄な花が一気に花開いたかのような、可憐な笑顔を見せた。
ああ――
彼女には敵わない。
そんな笑顔、反則だ。
好きにならずにはいられない。
だけど、彼女の隣に立つには
まだまだいろんなものが足りない。
どうすれば彼女に近づくことが出来るだろうか。
どうすれば――その笑顔を俺だけに向けてくれるのだろうか。
悩んでいても始まらない。
動かないと何も変わらない。
ゆっくり、ゆっくりと。
座ったままの彼女へと向かう。
君との距離を縮めるために
もっと頑張るよ。
だから、
いつか、
俺だけを見てくれませんか。
彼女の横についた俺は
――笑顔で話しかけていた。
無自覚さをちゃんと”間違っている”と言ってくれる友人っていいですよね!
明日は、きっと20:00に投稿できると思います。




