2.My first café au lait(9)
瑞葵の決意の話です。
8.久しぶりに飲むcafé au lait(2)
しばらくの沈黙のあと、瑞葵は小さく息を吸い込み、ゆっくりと顔を上げた。
自分の作った企画が、きちんと誰かに届いていたのだと――ようやく、そう受け止めようと思った。
それと同時に、作り手の都合だけではなく、使う側の気持ちをもっと知りたいとも思う。
私にできることを、ちゃんとやろう。
人の役に立つことを、もっと考えよう。
きっと、もっといいものが作れるはずだ。
そして胸の奥で芽吹きかけた想いには、そっと蓋をした。
今はただ、ゲームの中身を深く理解すること。何が求められているのかを知ること。
恋をするのは、その先でいい――そう、瑞葵は決めた。
意を決した瑞葵はカレンに声をかけた。
「笹川さん、あの、ちょっと聞いていいですか?」
「ああ、何かな?子リスちゃん」
「子リスちゃん!え?ええ!!」
「ごめんごめん。私のことはカレンと呼んでくれないかな。みんなそう呼んでるからね」
「は、はい。カレンさん。あ、あの、カレンさんは、プログラマーさん、でしょうか」
「ああ、プログラマー兼デザイナーかな。樹さんと同じようなことしてるよ」
「兄と……。そうなんですね、わかりました」
兄の樹の仕事は機密事項が多くて目にすることはほとんどないが、たまに話を聞かせてくれる。世界観を明確にし、ゲーマーにこれが通常であると思わせる。そんなビジュアルをどこまで繊細にできるか。瑞葵は樹のそんな話を聞くのが大好きだ。
「あの、カレンさんは、自分の仕事で気を付けていることってありますか?」
「気を付けていることね……。クライアントの気持ちと使う側の視点……かな。デザイナーの方が主な仕事だから、世界観を特に気にしてる」
「兄も同じこと言っていました。そうですよね。両方を満たすこと、大事ですね」
「うん。瑞葵ちゃんは使う側の気持ち、しっかりとわかってそうだからいいと思う。あと、クライアントの気持ちもね。バランスがいいと思うよ」
「バランス……」
「そう。バランスは全体を客観的に見ることができたら見えてくるよ」
「客観的に……。バランス……」
「今はわからなくても、少しずつ見えてくるから。気負わないこと。いいね」
「はい」
カレンの言葉を受け、急いで席に戻ろうとカフェオレを飲み干し、席を立つ。
少し熱くて、必死に飲んでしまった。
カレンからは「だから、もっとゆっくりでいいんだよ」と頭をなでられた。
焦らなくていい……と言ってもらえたような気がした。
焦らず、一歩一歩着実に前を進もう。
いつの間にか胸のもやがなくなり、晴れやかな気分になった。
さっき飲んだカフェオレは甘く感じたから、次からは甘さを控えよう。
そう思いながら、瑞葵はカレンと並んで席へと戻る。
胸に残る温もりをそっと抱えたまま、
私は、まだ名前のない一歩を踏み出した。
本年は初めて執筆と投稿をすることができた年でした。
拙いものですが、今のできることを詰め込められて感無量です。
来年も、ぜひ読んでください。
よろしくお願いいたします。
よいお年をお迎えください。
明日は1話投稿予定です。




