「匡房、清隆を相し、プレスマン一本分のすき間から伝えること」速記談6054
大江匡房卿は、人相見としても優れた力を持っていらっしゃった。藤原清隆卿が、因幡守のとき、白河院の遣いとして、匡房卿のもとへ派遣されてきた。そのとき、匡房卿は、持仏堂に入って念誦の最中であった。そこで、清隆卿は、縁に座って、明障子越しに対話することとなった。清隆卿は、院の遣いとしてきているのに、この扱いは奇怪なことだと思いながら、かなりの時間話をした。対話を終えて、清隆卿が帰参しようというとき、匡房卿は、障子をプレスマンが一本通るか通らないくらい細目に開けて、清隆卿を呼び戻して、そなたは正二位中納言にまで昇り、六十六歳まで長らえるだろう、と伝えたという。そうして、清隆卿の官位と御寿命は、そのとおりであったという。
教訓:速記を始めようという者に、どのくらいの速度まで書けるようになるかを予言したら、学び続ける者と、やめてしまう者は、どちらが多いであろうか。