二蹴 千両と格子牢
千両勘吉
「千両先輩、これ返します」
「えー? 気にしなくていいのにー。ありがとな、格子牢」
「いえいえ」
千両は特に気にしていない、というより忘れていた様子で、格子牢からそれを受け取った。
「そういや、ウチのクラスにいるカセロスってお前の兄貴だろ?」
「あ、はい。兄が何か?」
「いや、俺アイツと同じサッカークラブだったんだけど、アイツすぐ辞めたんだよな。サッカー部に来ないかと誘ったんだが」
「はい」
「何か家庭の事情で無理だって。お前、家族だろ? 何か知ってんじゃねえか?」
「ああ、実は」
「成る程、そういう事情か。じゃあ尚更サッカー部に来て貰わねえとな。お前から17ゴール奪うような奴だぞ? 絶対欲しいじゃんか。なあ?」
「はい。自分も兄とサッカーしたいですが、事情が事情ゆえに」
「よし、俺も奴がつまんねえ事情すっ飛ばして、サッカー部に入りたくなるような旨味を作り出してやるぜ‼」
「ありがとうございます、千両先輩」
「いいって。ただアイツとサッカーしたいだけさ。それに」
「?」
「アイツとサッカーしたいのは、俺やお前だけじゃない。もっと前から口説いている人がいる」
と千両が視線を送った先にいたのは
「副キャプテン⁉」
そう、サカ神シノブだ。シノブは事あるごとに、カセロスにサッカー部への勧誘をしている。
枷格子牢