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第13話 みんなでご飯♪

※この物語はフィクションです。実在の人物や団体、法律などとは関係ありません。

 お弁当生活二日目――

 今回のお弁当のおかずは、昨日とは大きく違っていた。


 小分けにされたおにぎりが4つと、おかずはほうれん草のソテーに筑前煮。隣にはゴマがかかったきんぴらごぼうが煌びやかに輝いている。

 お弁当の他に小さいタッパーがあったので開けてみると、うさぎ型に切られたリンゴが姿を現した。


 とても可愛らしい。

 小学生の頃にお母さんが運動会のお弁当で作ってくれたなあ、と懐かしい思い出が蘇る。

 友達と一緒に食べるからいつもより張り切ってお弁当を作ってたっけ。

 運動会あるあるだろう。


 それにしても渡辺って手が込んでいるというか、これをあと3日も続けるのは大変だろう。恩返しということでお弁当を作ってもらってはいるが、タダでお昼ご飯を食わせてもらっているだけだから、少し申し訳ない気持ちになってくる。


 そんな罪悪感を抱きつつも俺の手は止まらない。

 おかず、白米と交互に口を運んでいく。


「美味しい?」


 期待に胸を膨らませた表情を浮かべる渡辺。


「めっちゃくちゃ美味い! 筑前煮は味が染みてて美味しいし、きんぴらはピリ辛でご飯が進むよ」

「でしょでしょ♪ 今回は全体的に味付けを濃くしてみたの」

 

 二人だけの楽しい雰囲気を楽しむ。

 それにしても……昨日より周囲の視線が痛くなってる気がするのは気のせいだろうか。

 特に親衛隊。獲物を狩るライオンのような目を向けている。

 渡辺と話すのは楽しい。が、こんな殺伐としたオーラが教室に漂ってる中でお昼ご飯を食べるのはよくない。それに、せっかく渡辺が作ってくれたのだ。できるなら周りの目を気にせず食べたい。

 そう思った俺は……。



お弁当生活三日目――


「粟井くん、私、邪魔じゃないかな?」

「大丈夫、周りの視線がエグくてな、しばらくの間助けてくれよ」


 周囲の圧力に圧倒された俺は、オタク同好会のやつらを誘うことにした。川辺は後で来るらしい。

 俺と渡辺のテーブルをくっつけて3人のお昼御飯が机の上に並ぶ。

 さすがに三人もいると少し窮屈だが、周りの視線に比べたらこれぐらいなんともない。


「あたしも全然大丈夫だよ! やっぱり、みんなと一緒にご飯食べたほうが美味しいもんね~♪ それに内海さんとはずっと前から話してみたいと思ってたの♪」

「そ、そう……?」


横で喋る渡辺を横目に見ながら弁当をつつく。


「そういえば、麻友ちゃん熱中症大丈夫だった?」


 球技大会のことを心配したんだろう。

 なんたって隣で人が倒れたんだ。びっくりしただろう。

 もちろん渡辺は内海が倒れた理由は『球技大会が白熱したから』だと思っているだろう。


 本当の理由を話したらどんな反応をするんだろうか……。

 寛大な渡辺のことだからBLオタクすら受け入れてしまうに違いない。


「大丈夫……です。えっと……あの時は……ありがとうございます」

「タメ口で大丈夫だよ。麻友ちゃん」

「あの、その呼び方なんだけど……」

「どうしたの?」

「あ、えっと……麻友ちゃんって呼び方……ちょっと恥ずかしい……かも」

「えー、どうして~、下の名前めっちゃ可愛いのに~」


 内海がオドオドしている。困ってはいるだろうが、内心は少し嬉しそうだ。

 頬が赤くなっている。


「渡辺さん……」

「さちかでいいよ♪」

「う、うん……さちか」


 もじもじする内海。

 なんかいつも俺たちと話すときのテンションと違う気がするのは気のせいだろうか。

 俺ら以外と話をしている内海の姿を見たことがないので、渡辺と話している光景を見て、少し新鮮だったりする。


「っていうか、そのグルグル眼鏡外してみてくれない?」

「こ、これは駄目!」

「えーどうしてー?」

「これがないと私、恥ずかしくて外も歩けないの……それに今は周りの目があるから、少し恥ずかしくて……」


そうだったのか……。


「分かった。それじゃあ今度二人きりの時に見せてね♪」

「わ、わかった」


 渡辺はコミュニケーションの達人だ、その明るい性格で人との距離を縮めるのが上手い。

 内海はまだ、渡辺の陽キャオーラにはまだ慣れていないようだが、ま、そのうち慣れるだろう。俺も最初は戸惑ったもんだ。

 ちなみに俺も内海の素顔は非常に気になる。


「さちかー」

「あっ! みやっちゃん~」


 少しして、宮本が購買で買ってきたであろう焼きそばパン、クリームパン、鮭おにぎり×2を袋に入れて現れた。


「ごめん、遅れた~。購買めっちゃ混んでて~」

「おつかれ~。早く食べよ~」


 買いすぎじゃね……。というツッコミをしようと思ったが、渡辺が何事もなかったかのように振る舞うのでやめることにした。どうやら宮本は大食いらしい。


 宮本も合流し女3男1という状況になる。


「あれ?」


 少し冷静になったところで、いま俺が置かれている状況がおかしいことに気づく……。

 周りの視線を解消するためにオタク同好会の奴らを呼んだのに、川辺のやつが一向に来ないではないか。


「内海、肝心の川辺だが、どこへ行ったんだ?」

「なんか先生から呼び出しがあったって言ってたよ」


 にしては遅すぎる。昼休みは残り15分しかない。

 川辺は強面なので、周りからはよく問題児と勘違いをされるが、決して先生から怒られるようなことは一切しない。意外と真面目な奴なのだ。


 あの野郎、俺がこの状況になることを見越してすっぽかしやがったか……。

 川辺のニヤケ面が目に浮かぶ。


 ふと、クラスの連中を見やる。


「あいつ見せびらかしてるだろ、しかも宮本も一緒だ」

「まじかよ! 狙ってたのに、あいつも栗井と?」

「なんか最近調子乗ってね?」

「俺らにモテますアピールしてないか?」


 ほらほら、クラスの男どもが噴火一歩手前だよ!

 傍から見たら、ハーレムにしか見えないのがなんとも……言い訳しづらい。


 タイミングよくお昼休みの終了を告げるチャイムが鳴り、それぞれの席に戻っていく。

 その後、川辺だけが遅れて教室に入っていくところを俺は見逃さなかった。

 あいつ、次会ったら覚悟しておけよ……。

第二章を読んでいただき誠にありがとうございます!

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