第31話 『タッグバトル・トーナメント! ④』
時間を遡り、真・ファイナル試合が始まった頃。
ジュンがエルシュめがけて飛び出してゆくのを、レオンは視線で見送りながら、自身もキーファンスのところへ走りこんでいた。
おそらく自分1人でキーファンスに勝つことは、今現在の力ではできないだろう。それでも簡単に負けるわけにはいかなかった。
――俺は、ジュンのヤツが戻ってくるまでの間、何としてもキーファンス先生の足を止めておかねばならないのだから!
そう強く思うと、自然と力が漲り不思議な活力を与えてくれた。
ああ、負ける気がしないと気持ちだけは強く持つ。
前方でキーファンスの銃口が、ジュンを捉えるところが目に付く。
「もっと速くだ! Lightning・Move!」
電光石火を発動させ、体内へ電撃を流し込むことで自身のスピードを底上げする。
だがこんなに早くにこの技を使うと、色々とマズイこともあった。それは電光石火を何度か使ううちに分かったことだが、使用最大時間を過ぎると体内に流れる電流が使用者にも有害になるということだ。
その使用最大時間というものは、使い込むと徐々に伸びていったが、未だに2分ほどしかもたなかった。
――だが、それでもいい。今はキーファンス先生の注意を、俺だけに向けさせねば。
出し惜しみをしている場合ではない。全力でも敵わない相手なのだ。
「ふっ、そういうことか。弟子たちよっ!」
不敵に笑い、キーファンスはレオンへ向き直った。
――まぁ弟子たちの思惑に乗るのも、たまには悪くないだろう。
レオンの右手には黄金色の長剣が握られ、それがパチパチと音を響かせている。
それとは別にカンカンッと、高い音が6回鳴った。
キーファンスの二丁拳銃が火を噴き、6発の風の弾丸がレオンへ放たれたのだ。それをレオンは正確に見極め、全て長剣の絶妙な動きで防ぎきっていた。
いとも簡単に防がれたため、キーファンスは後ろへと間合いを取ろうとするも、彼よりも速いレオンが、確実に己との距離を縮めながら追走してくる。
「――むぅっ! レオン、前より早くなったか?」
しかしまだまだ余裕があるのか、キーファンスがレオンへ尋ねた。
「そうですか? ……ですが、今は自然と身体が軽い。それだけは確かですよ」
どこまでも不遜で不敵な表情をもって、レオン。
「なるほど……。お前らは絶好の好敵手であり、最高の相棒でもあるようだなっ!」
声と共に、先ほどよりも数段速い連射がレオンに襲い掛かる。引き金を引く指先が、あまりの速さで霞んでいるほどだ。
それでもレオンはそれら全てを、細かいサイドステップで避けきり、キーファンスの右脇へ回り込んで、自らの長剣を彼に突き刺した。
だがキーファンスも素早い身のこなしをもって、突きこみを造作なく躱し、再び距離を開かせていった。
そして体勢を直し、2つの銃口を天へ向け――。
「舞い散れぇ! Windblown・Snowflakes!」
念ずるは風花!
晴天より降り注ぐ、風に揺られし無数の粉雪!
キーファンスのトリガーを握る指先が、まるで閃光のように煌き、一瞬にして無数の風弾を撃ち上げた。
数秒後、ビュゥーッと耳障りな音を響かせ、天から何かが降ってくる。レオンは鮮やかに澄み渡る空を見上げ、それに気が付いた。
降ってきたのは、先ほど撃ち上げられた風弾。それらが高速でこちらへ降り注いでいたのだ。
初撃を長剣で弾いてゆくが、どうにも量が多すぎる。剣で捌ききるのは無理だと判断したレオンは、横っ飛びをして転がり、何とか第一団を避ける。が、すぐさま次の軍団が降り注ぎ――。
少し掠った箇所から鮮血が滲み出て、真紅の筋を地に綴る。しかしこの程度ならば、Safety・Coreが発動することはない。
しかし――キリが無いな。
だからレオンは長剣を掲げ、
「俺はまだやられるわけにはいかなんだ! Thunder・Sword!」
思い描いた。
その思いに応え、晴天にも関わらず稲妻が迸り、長剣へ落ちる。
ズドンと大きな音などはしなかったが、上空に存在していた全ての風弾はあっけなく消し炭となった。
雷の剣。これは上空からレオンの剣へと稲妻を落とさせる思念技。
いうなれば、制空技であった。
これでひとまず危機は去ったが、レオンは油断無く構えを組んだ。
ドイツ剣術を研究していたレオンにとって、攻撃とは、構えと構えの間にあるもの。どういうことかというと、攻撃を終えた時には次の構えになっていなければならず、連続攻撃をするのが前提となっているということだ。
対するキーファンスは、まだまだ余裕の笑みを消していない。その笑みのままキーファンスは横へ走り出し、一陣の風となった。
これは魔装士だけの特性であるが、属性には少なからず、それぞれの特性に因んだ身体強化が図られる要素が存在している。
『火』のカイルや、『雷』であるレオンは「力」を。『地』であるレックスは肉体の「硬さ」を。『水』であるゼスは「柔軟さ」や「守り」を。本当に様々である。
その中でも『風』と『光』に付随する属性は、主に、「速さ」が強化される。
属性の影響で普段よりも強化された足元から砂塵が巻き上がり、続いて彼の銃が火を噴く。
レオンの構えは、剣と背を真っ直ぐに伸ばし、肘を張って裏刃を使えるようにするためのもの。その構えを崩さぬように、放たれた風弾を最小の動きで躱し、キーファンスへ追いすがる。
だが――もうじきライトニング・ムーブの限界時間、か。
それでも慌てることは全くない。きっと、アイツがそろそろやってくるはずだから。
レオンは構えから攻撃に転じ、斜め左上に切り上げ、それをキーファンスに躱されるも、そのまま下段の脇構えに直し。剣は体より前へやり、裏刃で切り上げるための刃は垂直方向に向かせ、水平に保った裏刃を使って斬りつけた。
しかしそれすらも、キーファンスに銃身で防がれてしまう。
だが、これで終わりではない! レオンはすぐに下段脇構えで剣を後ろへ引き、水平に保たれた長剣で彼を斬り上げた。
それでもキーファンスが、的確なカバーをもって、無駄なく対応してくる。
二合三合と斬り込む隙に、徐々に距離も取られてしまった。
(……これでも駄目か。…………ぐっ!)
どうやら使用限界が来たようだ。体内を駆け抜ける電撃が、己の使用者を焼き尽くさんと痛みを与えてきた。
レオンは思念技をすぐさま止めるように念じ、顔色には何も出さないようにキーファンスを睨む。
正直、大剣ほどではないにしろ、長剣と銃との相性は最悪だった。
まず長剣特有のカウンターが狙えないし。また相手は遠距離からでも攻撃可能だが、こちらは超至近距離まで行かねばならないし。
相手との間に障害物でもあれば話は違うが、生憎、闘技場にはそんなもの用意されていなくて。
――が。弱音を吐くな! まだ俺が倒れるわけにはいかないんだ!
自身が肩で息をしているのが分かった。
すでに周囲の騒音も、全く耳に届いていない。
やはり電光石火の欠点は、使用限界云々よりも、大幅に使用者の体力を削ってしまう事の方のようだ。
「ハァーッ……!」
それでもどうにか気合を高め、キーファンスへ斬りかかった。
しかし相手はそれすら軽やかに躱し、忘れた頃に銃弾を放ってくる。そんなキーファンスの姿は、どこか遊んでいるようで。何かを待っているかのようで……。
レオンが、もう駄目か……そう思った、その時――待ちに待った、アイツの声が聞こえてきた。
「レオン! 待たせたっ!」
――ああ、本当に。
お前は、いつも俺を待たせ過ぎる。
「遅いぞっ、ジュン!」
だが、この湧き上がる力は何であろうか。
今まで肩で息をしていたのが、全て嘘のようで。
まるで何も無い場所に、パッと力の泉が現れたようで。
「――再創造!」
これで何の気兼ねも無く使える。
最大の得物である、大剣を迷うことなく掴み取れる。
――ケンジが俺のために創ってくれた、最高の剣を。
「……やはりエルシュリアンでは話にならなかったか」
「エルシュリアン・エクサス――ここでリタイアだぜ!」
自らの弟子の声を聞きながら、闘技場の上部客席のところへ取り付けられた時計で、キーファンスは残りの時間を確認する。
しかし真・ファイナルは制限時間無制限。実践の授業時間目一杯だった。
だからこれは確認だ。後何分でランチタイムかの……。
ジュンはキーファンスの死角へ回り込むように走る。それをキーファンスが身体の向きは変えないで、視線だけで追う。
その隙に大剣を振り上げたレオンが、キーファンスとの距離を一気に縮め。
――横に一閃。先ほどまで体力の限界だった者が放つ斬りだとは、到底思えない。
しかし万全のレオンのことはキーファンスも了解していたようで、スッと身を屈ませ躱し、すぐさま動く。
「右!」
瞬間、短過ぎる指示が飛ぶ。
そこには“誰が”もなく、“何が”右なのかもわからない。分かるのは、発信者がジュンであるとういうことのみ。
しかし、全てを分かる者もいた。
全てを分かる者――レオンは、ものすごい勢いで薙がれていた大剣を豪力でピタッと止め、一切のものに目もくれず今度は右へ突き出した。
「……くっ!」
その切っ先には、初めてはっきりと苦悶の表情を浮かべたキーファンスが。彼は先ほどの剣閃を避けた後に、右方向へ回ろうとしていたのだ。
今しがたの指示はキーファンスの重心の移動から、彼が次に動く方向を先読みしたジュンのもの。
名前すら時間の無駄だということで、最小限に留めた物言いだったため、動作主のキーファンスですら、言われた瞬間には何を言っているのだか分からなかったほどに短いフレーズであった。
しかしレオンには、それだけで十分だったようで。
レオンは、言葉という波が鼓膜を刺激した直後、何も見もせずそのたった二音に従い、指示された方向へ大剣で鋭い突きを放っていた。
キーファンスは身体を無理に捻って、何とか突き込みの直撃を避けるも、肩口に少しだけ食い込む感じを覚え。
案の定、そこから鮮血が舞い落ちる。
だが、キーファンスもやられたままではない。
「全ての風は、俺の味方だ! Gale・Blast!」
身体強化技である疾風の飛翔を使用。これは『風』属性の魔装士――魔法使には使えず――、前に使った時はお遊びだったが、紛れも無く最上位ランクの思念技だ。
あらゆる風が使用者の味方をし、あらゆる風が敵を阻み、至近距離にいる相手を余波で吹き飛ばす。
追い詰められてこれを使うことになろうとは、正直思っていなかった技。
(それほどまでに良いコンビ……いや、信頼し合っている、か)
今更にキーファンスは、自らの教え子に一撃を入れられた事を悔やしんだりしていない。悔しいどころか、喜ばしくもさえあった。
――俺が育てた子が大きく成長し、やがては超えてゆく。
それを見るのが、キーファンスの夢だったから。
かつて為してもらいながら、かつて為せなかった事への、せめてもの贖罪。
自然と自嘲とも喜びともとれる笑みが浮かび、淡く儚い記憶の残滓が蘇りそうになるが、それを意志の力でねじ伏せ。
――肩越しに両の銃をぶっ放す。
「……マジかよっ!」
彼が放った風弾の向こうには、今にも斬りかかりそうな勢いで走りくるジュンの姿があった。
ひっくり返った声を上げるジュンだったが、彼の行動は冷静且つ迅速で。
素早く右の剣を振りきって、弾を霧散させ。
そして跳躍。
しなやかな体躯からの圧倒的な跳躍力で、上空にどんどん飛翔してゆくキーファンスを追撃した。それでもやはり飛ぶと跳ぶでは、やはり勝負になっておらず。
剣風でどうにかできる距離差でもなく――だが俺は、俺たちは墜ちたりしない!
なぜならば――。
「――乗れ!」
声と同時に、ジュンは蹴った。
地面から2メートルほどの地点に掲げられた、レオンの大剣の剣腹を。思いっきり蹴り飛ばした。
また、ジュンが蹴る瞬間を見透かしたように、レオンも刹那の力を込めて彼を打ち上げている。属性効果とパートナーとの相乗効果も相まって、ジュンはキーファンスに追いついた。
「お前ら二人揃うとマジでやべぇな、おいっ! 洒落になってねぇぜ、ったく」
「そりゃどうも師匠! だけどそんなにしゃべってると、舌噛みます、よっ!」
『よっ』のところで、ジュンは左の剣でキーファンスを斬り上げようとする。
目を細めたキーファンスは二つの銃口を目に見えぬような速さで、淡い光を放つ刀身に押し当て、至近距離にて連射することで距離を取り直し。
尚も、空を散歩するかのように滑空。
そこへ――。
「Thunder・Sword!」
レオンの思念技である、雷の剣が放たれた。
大剣の切っ先をキーファンスへ向け、その切っ先に向かって天より雷が降り注いだ。
「なんのっ!」
より強い風を吹かせ、スピードを上げるキーファンス。身体を前面の空間に滑り込ませるようにして稲妻を避けきるも、そこで疾風の飛翔の有効時間が経過する。
この思念技は非常に強力だが、如何せん有効時間が1分と短かった。
瞬時にキーファンスの身体から、風の加護が霧散した。
「Blind・Blade!」
突如宣言されたジュンの思念技によって、今まで光り輝いていた彼の双剣が、キーファンスの視界からパッと消える。
盲目なる刃とは、剣の周囲における光情報を弄る技で。その効果は、キーファンスの網膜へ透過するはずの光スペクトルを消去することだった。つまり相手から、剣という存在を認識させない。
しかしジュンとキーファンスの距離は、ゆうに15メートルほどある。
それでも、重力に従って地面へ落下するキーファンスへ。
ジュンは“彼には見ることのできない”左の剣を投げつけた。投げナイフの要領で、手首のスナップを効かせ、いつ放ったか分からないようなスローソード。ケンジの創った剣の軽さゆえに実現できる妙技。
「いっけぇー!」
しかし声を出すのは、これが練習試合だからだ。本気だったら声など出さず、密やかに遂行するつもりだ。といっても、声で相手の気を逸らせたらラッキーとは思っていた。
見えない刃の風を切る音だけが不気味に響き、キーファンスの耳朶を震わす。
キーファンスは集中し感覚を研ぎ澄まし――唱えた。
鋭利なる刃を。
「ホントにお前はいっつもえげつない攻撃してくんなっ! Storm・Bayonet!」
彼の持つ右の銃、その銃口からだけ烈風が吹き出し、風が刃のような形で固定された。
その嵐の銃剣をもってして、微かな空気の歪みを(投げ長剣)迎え撃ち。
弾いた際に剣の威力を抑えきれず、キーファンスは後ろへ吹き飛ばされるも、クルッと宙で回って、手を地面に衝いて無事に着地した。
「はぁっ!」
だがその瞬間を狙ったかのように、いつの間にか背後へ回りこんでいたレオンが袈裟斬りを叩き込む。
それでも対応しているキーファンスは、左の銃で迫り来るジュンを狙い撃って牽制し、レオンに対しては右の銃剣で防ぐが――。
「Sparking・Electrolysis!」
ジジ、ジジジィィィー!
大剣に埋め込まれた電気石が、青白く光った。
レオンの思念技が発動し、風を構成する粒子を伝い感電せし電気分解が成立。
銃剣を構築する風の粒子を分解し消去、尚且つキーファンスへ電撃を流し込んだ。
「……ぐぁっ!」
キーファンスは悲鳴を上げるも、すでにトリガーを引き絞っている――。
――バチッと音が鳴って、キーファンスとレオンの身体が正反対の方向へ反発した。ものすごい勢いで引き離され、二人とも地面に尻餅をつく。
「おおっと決まったぜぇ! 試合終了~!」
レックスの判定が下った。
キーファンスの魔装にはセイフティ・コアとう安全装置が付けられていないため、彼の魔装が縮小されることはなかったが、レオンのコアが反応したということそういうことなのだろう。
「優勝はードゥルドゥルドゥルーーパッ! 『ジューンバルト&レオン』ペアに決定だぜ!」
「「「「わぁー!」」」」
「すっげぇー! あのキーファンス先生に勝っちまった!」
「やっぱりジュン君ってつよーい!」
「何言ってんの! レオンさんの方が1人で先生を相手してたんだから!」
大歓声が巻き起こる中、キーファンスはゆっくりと立ち上がる。
「いい試合だった。俺の完敗だ」
そしてどこか澄み渡った顔で、レオンとジュンへ手を差し伸べた。
「ありしたっ!」
「ありがとうございました!」
二人はそれをしっかりと握った。
「……にしてもこの俺が負けるとはな」
しみじみと呟くキーファンスに、ジュンは悪戯っ子の笑みを浮かべる。
「年じゃないっすか?」
「……なっ! 何を言う弟子! 俺はまだまだぴっちぴちの37歳よぉ!」
力説するキーファンス。
肩まで使ってジェスチャーしてます。
「だからその言葉も古過ぎだって師匠!」
「がびーんッ!」
「……ふっ」
思わず、レオンが噴出した。
「ほら見てくださいよ。レオンなんか笑っちまってますよ」
「お、おい、ジュン!」
「ガーンッッッ……!」
あまりのショックで足元が覚束無いキーファンスは、そのままふらふらと闘技場から姿を消した。
それを見送ってから、ジュンはレオンへ尋ねる。
「なぁ、レオン。師匠ってさ……」
笑いが収まったレオンも、神妙な顔つきで頷く。
「ああ、おそらく本気ではなかったな」
「だよな~」
セイフティ・コアがないぶん、手加減は当たり前のこと。そして何よりも、気が明らかに足りていなかった。
4月初めの実力を測られた時に、キーファンスから放たれたヤバイ! と直感されるような気迫を、ジュンは感じられなかったのだ。何か思うところがあったのだろうか。
それにあのままセイフティ・コアが発動せず続けていたら。これを考えると、勝敗は分からなかっただろう。師匠はまだまだやれたように思う。
「でもまっ、勝ったし、いっか!」
「ふっ……そうだな。俺たちの勝ちだ」
レオンが『俺たち』と言ったことに、何やら妙にくすぐったさを覚えるジュン。彼が片手を掲げると、レオンはその手にパンとタッチした。ハイタッチだ。
そしてあの用意された表彰台みたいなの、見事に無駄になったな……と思っている時――。
「二人ともおめでとう!」
「よくやったわ!」
そう言ってフィーナとシャーリーが近づいてきた。
彼女らの手にはタオルが握られており、それをジュンとレオンに差し出す。
「サンキュ! フィーナ」
「うん。どういたしまして」
どちらがどちらへ差し出しているのかは分からなかったため、近場にいたフィーナからジュンはタオルを受け取ることにする。
すると――
「……むぅ」
と、小さな声でシャーリーが唸るが、それも一瞬のことで、すぐにレオンへタオルを差し出した。
「シャーリー、ありがとう」
微かな笑みを伴って、レオンはそれを受け取って。
でもその顔は少しだけ、寂しげで。
ジュンはかの青年の顔色を見て、馬鹿みたいに明るい声を出す。
「……さてと、師匠も消えちゃったし、ランチへ行くとしますか!」
「あ、今日はシャーリー作のハンバーグがメインなんだよ!」
すかさずフィーナが報告し。
「ちょ、フィーナ! こんなとこで大声で言わないでよぉ!」
シャーリーが涙声で言う。
さすがに大勢の人の前で言われると恥ずかしいのだろうか、お弁当を作ってきているなんて言われるのは。
「よし、行こう。すぐに行こう」
一瞬で元気になったレオン。
「おいおいレオン、そうがっつくなよ」
「う、うるさいぞっ、ジュン!」
「……へいへい」
しかし彼らは行けなかった。
クラスメイトたちに囲まれ、長時間に渡って色々と言われっぱなしだったのだ。主に、賞賛の類を。
そしてようやくいつものランチ場所へ行くも、すでにそこではケンジとリリアが楽しげにランチしていた。最近になってようやくリリアがケンジの説得に折れ、一緒に食べることになっていたのだ。
しかしそんなこと関係ねぇ! とばかりに、ジュンは平然と彼らの中へ入っていこうとする。それをフィーナとシャーリーの二人に、強引なまでの力で引き止められ。
結局、またまた入るのに間誤付いた4人であったとさ。
いやはや、高校は入試があったので5連休という素晴らしいものがありましたが、それだけに宿題も多く。←なんで学年末も終わったのに、やらねばならんのだっ!
と感じておりました。
小説のことですが、変なところがありましたら、教えてくだされば幸いです。流れるまま書いて、そのままぶち込んでますので><
それと最近、新しい案が浮かびそちらを書きなぐっていますので、更新が遅くなるかもしれませんが、今後ともよろしくお願いします。
ではでは~
なんで平日なのにディズニーランドは混んでいるのだろうと疑問に思うFranzより