同盟暦512年・三姉妹の拵え編5
「ほら!シャキッとしなさいよ!」
次の日の朝、ポーはだるさに億劫になるも、アーネストに起こされバシッと背中を叩かれた。
元気に目覚めたベアトリスとアーネストに比べて、ポー、レオリックス、クーリーは頭痛と戦いながら起きた。
「あたまいってぇ……」
「飲み過ぎよ」
「…………吐く」
「ここではだめですよ。クーさんほらこっちです」
ベアトリスはクーリーの背中をさすって世話をしていた。
「ベアトリス殿になにさせてんだよ…お前は…」
「これから里の偉い人に会うのに。もう。なにやってるのよ」
「ごめん……」
「はい、酔い覚ましの薬。飲んで。髪もボサボサ。梳いてあげるからしゃがんで。それと服は一番いいやつを着なきゃだめよ」
甲斐甲斐しくポーの世話をするアーネストを見て、レオリックスは確信をもって断言した。
「嫁さんだな」
「「違うから!」」
二人の息はぴったりである。
酔い覚ましの薬を飲み、何とか体調を整えると、クーリーに案内されて族長の屋敷へと向かった。
村の奥に縦長の巨大なロングハウス。
家の回りには無数の武器が散らばっており、クーリー曰く「敵の武器」だったものである。
戦場で倒した強敵を讃える祈りの場だ。
「母様!帰った!」
扉の前でクーリーは大声で叫ぶ。
「入りなさい」
落ち着いた柔和な女の声が扉の向こう側から聞こえた。
扉を開いて中に足を踏み入れた。
外の寒さを押し退ける熱風が肌に触れる。
巨体な暖炉があり、大熊の毛皮が床に敷かれている。
左右に歴戦の戦士らしい屈強な男たちがざしており、奥の一段高い床、族長が座る席に小柄な女性が座っていた。
「(?)」
それはどう見ても巨人と言える女性ではなかった。
身長は150センチ程度、カーリー・クー(女・39歳)微笑む姿はとても戦士には見えなかった。
レオリックスの言う巨躯とは程遠く、話を聞いていたポーやアーネスト、ベベアリトスは戸惑う。
何より一番困惑していたのはレオリックスであった。
レオリックスの記憶にあるカーリー・クーの姿とは似ても似つかなかった。
「え?だれ?あれ?」
「奥にいるのが族長様よね?」
「うん。母様だ」
「お話に聞いていた印象とずいぶん違いますね」
「でもあの顔は……どうなってんだ?」
ひそひそと話し合うポー達に、右側の奥に座る戦士、ドーリー・ドー(39歳・男)が膝を叩いて、
「歓迎するぞ!客人!」
と声をあげた。




